むじな@金沢よろず批評ブログ

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「力覇」経営者一族横領・不正蓄財事件で、国民党系メディアも中国進出を批判

2007-01-17 21:48:36 | 台湾政治
1月に入ってからの台湾メディアの話題は、もっぱら馬英九の落ち込みと、財閥グループ「力覇」の財務危機に端を発した、経営者一族(総帥自身が国民党の中央常務委員を務める)の横領・不正蓄財・国外逃亡というスキャンダルだ。
グループ総帥の王又曽は、会社の金を横領したうえで、中国にばかり投資、さらに事件が発覚する前にまず中国、発覚してからは米国に逃亡、台湾には借金ばかり残していた。
これに対して、国民党系メディアもいっせいに、「台湾に借金だけ残して中国に金をつぎ込んだ」手法を批判的に報道しているのが、面白い。
もちろん、国民党系メディアには別の魂胆があるようだ。というのも、力覇グループは長年国民党系として有名だったが、民進党政権になってからは民進党にもゴマをすってきた。そして、民進党政権のおける金融改革の穴をついて、今回の事件が発生したから、今回の事件には民進党政権に責任がある、という方向にもっていこうとしているらしい。
しかし、これはどうみても無理がある議論だ。それ以前に、王又曽は国民党中央常務委員であり、昨年の中央常務委員改選のときにも高位で再選されている。国民党やその御用メディアが一生懸命現在の与党に責任転嫁しようとしても、実際にはほとんどすべての問題は国民党に起因している。
とはいえ、国民党系メディアが「台湾に借金を残して、中国に投資する」ことを批判的に取り上げたことは、一歩前進であるといえる。いや、それだけ台湾住民の間には、中国の歪な形での経済発展、台頭に対する警戒感、嫌悪感が広まっている証拠であろう。そうした流れにたとえ「統一志向」の一部反動派外省人といえども例外ではなくなっているということだろう。
前回韓国左派の間でも反中感情が強まっていることを指摘したが、力覇事件は図らずも台湾における「大中国派」にも現実の中華人民共和国に対する違和感や警戒感が存在していることを浮き彫りにした格好だ。そして、この傾向は着実に、国民党の中での馬英九に代表される「大中国派」の足元を弱めるものとなろう。
ともかく台湾は台湾あるいは中華民国という独立国家であって中華人民共和国のものではない、という台湾主体意識・本土意識は、もはや動かしがたい潮流だということだ。


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