むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

民進党主席のタイ、ベトナム訪問拒否は国情への配慮欠如の結果

2007-08-30 03:02:45 | 台湾政治
民進党の游錫〓主席が8月中旬、現地在住台湾人の帰国投票を呼びかけるため、フィリピン、タイ、ベトナムの東南アジア3カ国を訪問する計画だったが、結果的には9日から11日までフィリピン1国だけの訪問となったようだ。
これについて、民進党の中国語ウェブサイトの関連ニュースリリースには、「タイとベトナムは中国の圧力に屈してビザ発給を拒否したから、これは今後の両国からの労働者受け入れに関して考えなければならない」みたいな指摘があった。タイについては「中国の圧力に屈した」というのは的はずれとはいえないが、ベトナムに対しては失礼もいいところだ。
民進党指導部の国際感覚もまだまだであり、これは東南アジア蔑視というべきだ。

そもそもベトナムに民進党主席が入国を認められないのは、ベトナムが共産党一党独裁国家で言論の自由が制限されていることを考えれば、当たり前のことだろう。共産党とその御用組織以外の、まして外国の政党の政治活動があの国で認められるわけがない。だから最初ベトナムも予定に入っていたのは不思議だったのだが、断られたからといって、何でも「中国の圧力」のせいにして逆切れするのは、はっきりいって頭が悪い。国情を考えろといいたい。
大体、ベトナムが「中国の圧力」など気にするような国ではない。中国の圧力に対する抵抗能力という点では、中国、フランス、米国の侵略を撃退してきたベトナムの過去を考えれば、台湾よりもはるかに高く、勇敢だというべきだし、ベトナム人が一番嫌いなのは中国・中国人だということも認識しておくべきだろう。
そんなベトナムをつかまえて、中国に先制攻撃してでも独立戦争を勝ち取る勇気もないような台湾が「中国の圧力に屈した」などとは、中国との戦争に勝って、米国にももっと楯突いて独立を勝ち取ってから言うべきだろう。そんな意気地もないくせに、こんなこと言っているから、台湾外交まだまだは駄目なんだよ!

大体、ベトナムはその中華文化の深さを考えれば、「中国の圧力に屈した」ら、ベトナムは中国の一部になってしまう。だから、ベトナムに対して「中国の圧力に屈した」という言葉はまったくナンセンスである。もちろん、ベトナムは共産党独裁の兄弟国家としての中国との友誼から「ひとつの中国」論が公式政策だから、台湾と政治関係を高めるつもりではないことは事実だが、それは決して中国に気がねしているのではなく、共産党官僚主義の形式主義と頑迷さに起因するだけである。
そしてベトナムにとって最大の敵は中国なので、ベトナムはその官僚主義的公式論に抵触しない文化、経済、行政実務などの問題ではむしろ台湾とは実質関係の拡大を積極的に求めているのである。
共産党独裁のベトナムに、台湾が民進党の政治集会を企図したことがそもそも間違いなのであって、軍事や諜報関係も含めた総統府や行政院などの行政実務者の交流なら、ベトナムは喜んでOKするだろう。

ただし、タイについては、中国の圧力に屈した点は否めないし、タイはそうしたどうしょうもない無定見なところが私はあまり好きになれない。
とはいえ、「中国の圧力」だけが原因だという決め付けも間違っていると思う。というのも、現在のタイは民政移行前の軍事政権なのだから、政治集会は制限されている。民進党主席がのこのこ出かけて行って外国人が政治集会なんてできるわけがないのだ。これも国情の問題である。

台湾も民主化を勝ち取ったのは良いことだが、それが「他国も同じように民主主義であるべきだ」と考えているとしたら、傲慢というべきだろう。そういう傲慢さが台湾外交の発展を阻害しているのである。
いずれにしても、相手の国情に合わせて臨機応変な対応ができないで外交などできない。民主主義はそれ自体としては外交にとって有益な武器ではないのだから。


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