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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷6

2009年03月27日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
   6
 おそらく夕張で一番深田あかりさんに近かったのは、
ブスの樋口ナナでも農協の松島のオバサンでもなくガソ
リンスタンドの熊谷のタツヤ兄ちゃんだったのではない
かと思う。
それは、深田画伯がいつも重油と一緒に日用品や画材を
シューパロのアトリエまで運ぶのは、ガソリンスタンド
の熊谷のタツヤ兄ちゃんの役目だったからだ。
それもこれもガソリンスタンドの熊谷のおじさんが画伯
の飲み友達でもあったのがタツヤ兄ちゃんと深田家を結
びつけた大きな要因だった。
お嬢さんといつもあかりさんのことを呼んでまるで中世
の絵本に出てくるナイトみたいに配達途中に遠くから下
校を見守ったり、バイオリンの演奏会に行く駅までの送
り迎えに必ず一歩下がって距離をとるようにしてあかり
さんを車に乗せて運んでいた。
だから深田あかりさん一家が画伯の仕事の関係で二学期
がはじまってすぐに東京へ引き上げて行ってしまったと
きは、しばらくスタンドでお客さんのトラックや乗用車
に給油していても、藁が抜けた案山子のようにボーと突
っ立って給油口でガソリンを溢れさせて親父さんにこっ
酷く叱られたりした。
当然秀人もヨッチンも二学期の野村先生の授業では、生
気がなく休み時間でさえサッカーも教室での消しゴム飛
ばしゲームも参加せずに教室の窓に凭れて只々あかりさ
んが千歳空港からジャンボジェット機で飛んでいった秋
の青空を眺めているばかりだった。
北海道の秋は、ただでさえ速くて短いのにあの夏のキャ
ンプやハイキングに行った熱気や情熱が雨に濡れた絵日
記帳みたいに楽しかった山や川が跡形もなく流れ去って
絵の具の色だけが滲んでしまうようにぼくらの頭からそ
の熱を遠のかせて、肌寒く悲しい空気の色に夕張の街全
体を滲ませた。
ましてや深田あかりさんがいなくなった清水沢小学校全
体が突然性質の悪い魔法で太陽を永遠に隠されてしまっ
た魔女の厚い雨雲に包まれたように暗くなった。
夏前にパパが行方不明になったヨッチンのママが病院も
仕事がなくなったので広島に引っ越そうと言い出しても
ガンとして清水沢小学校を卒業するまで一人でもいると
泣いて頑張ったヨッチンが、あかりさんが九月にいなく
なったら、すんなりと十月にはママさんと一緒にトラッ
クでフェリーに乗って広島へ引っ越して行った。
僕は、11才にして初めて友情というものの地平線が果
てしないことを知った。

 幽霊屋敷は、とっぷりと夜の幕に囲われていた。
ぼんやりと床下の底に僕と秀人と転がっていたが、今
まで見えていた天井のシャンデリアや梁が闇の中で区
別がつかなくなっていた。
「ヤダ。ヤダ。だから帰ろうって言ったっしょ。駿ちゃ
ん。」
「重いよ。秀人お。」
秀人が僕の胸の上にベッドに長くなるみたいに被さって
いた。
「もう帰る。帰るよ。」
「わかった。わかったから。そこを退いて!」
僕は、全身の力で秀人を跳ね除けた。
しかし秀人は、相変わらず僕の腰のベルトにしがみつい
て蛙の親子みたいにくっ付いて離れない。
やっとの思いで床下から立ち上がろうと僕たちがしたと
き、階段を誰かが降りてくる音がした。
「オバケがいるぅ。」
秀人が震えながら僕の首に両手を巻きつけてきたので又
床下にストンと倒れた。
僕は、再び首が廊下の床から消える一瞬に階段を白い服
を着たひとがひらひらと降りてくる残像が瞼の中に焼き
ついた。
オバケーーー
僕と秀人は、又石灰臭い床下で抱き合った。
二階のどこかの窓がバタンと開いた音がして何か獣が二
階の床を何匹も駆け回るすさまじい足音がした。
そしてさっき階段を降りてきた白い服のオバケが僕らの
すぐ近くまでゆっくりと歩いて来て、パタと止まった。
僕は、耳に激しい痛みが走って次に頬から首にかけて濡
れているのを感じた。
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ガトーフェスタ・ハラダ~シーちゃんのおやつ手帖88

2009年03月27日 | 味わい探訪
本店は群馬県高崎市ですが、銀座松屋や
新宿京王百貨店のデパ地下でも購入出来ます。

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コメント (2)
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