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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-37-

2008年11月21日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者古海めぐみ
       37
ゴロンゴロンと穴の入口でコンクリートミキサーのモーター
音が春と健太の寄り添っている穴底まで響いてきた。 
そして魔界の滝のように途切れることなく灰色の生コンの蛇
がその音とともにまっすぐ落ちてきた。
二人が慌てて飛びのいた穴の中央に見る見るコンクリの、挑み
かかるコブラのような鍾乳洞の柱がニョッキリと立ち上がった。
それは、沈んだばかりの空に浮かんだ満月と懐中電灯との明り
が穴の上から差し込んで来て、スポットライトの中でくね
くねと蛇使いの笛で背筋を伸ばす灰色のコブラそのものと
しか見えず、まるで生きているみたいに大きくなっていった。
健太は、膝や太ももの痛さをすっかり忘れて、春の手をしっ
かりと握って土壁にへばり付いた。しかし格好は、どう見て
も春が倒れそうな健太を支えて励ましているようにしか見
えなかった。
薄闇の地上からは、陰気で擦れたシラネの口笛が聞こえてきた。
足首に生コンが溜まって来る度に踏ん張りが利かずに春に凭れ
てぶるぶる両足を震わせている健太の姿をあざ笑っているよう
に木霊した。
「なかなか最近の生コンは、速乾性のものが出てきてな。
夜明けにはキレイなお二人の記念の墓が出来るだろうね。」
そう顔を覗かせて囁くとシラネは、真一に早く練ったセメント
を調合パレットからミキサーに追加して入れるように厳しい
口調で指図した。
チェッと舌打ちして金払ってるのはこっちなのによ、とボヤ
きながらも真一はせっせとセメントの補給に専念した。
「お兄さん、いつでもやめてもいいんだぜ。オレと下の二人は
関係ねえんだから。人を生きたままコンクリ詰めにするなんて
本来オレの趣味じゃないしね。」
「わかったつうの。やるよ。やればいいんでしょ。」
とものすごい勢いで真一はセメントをスコップで運んだ。
唸るミキサーにセメントを追加する真一の、今までにこれ
ほど肉体を使ったことがないという証の大量の汗がぽっかり
と開いた穴の入口にクモの糸のように飛び散って、銀の雨と
なって生コンだらけの穴底まで落ちてきた。
春と健太の膝下まで灰色の重たい波が押し寄せてきた。
健太は固まらないように何回も足を抜いて移動しながら又
踏ん張って又抜いてを繰り返した。そのうち傷めた膝のため
にバタンと生コンの海に頭から倒れてしまった。
しっかり、と春が呼びかけて救い起こすと健太は灰色の
ゾンビみたいにヨロヨロとと立ち上がって照れ笑いをした。
さすがの春も薄気味悪く健太の手を一瞬離してしまって又
ザブンと地獄の海に倒れた。
ごめんなさい、と春は両手で抱え起こした。すると今度は、
その春の肩にバラバラと石粒が降りかかってきた。
シラネが口笛を吹きながら手押し車でジャリ石を穴に注ぎ
込んだのだった。
危ない、と健太がすかさず春を庇って隅の壁へ伏せた。
穴底の隅で倒れたまま健太と春は、降り注ぐコンクリと
ジャリの襲撃から身をかわして生唾を呑んだ。
私たち、もうダメ?
春は、尻餅をついたため胸の下まで生コンがせり上がった
状態で真っ暗になった、丸く切り取られた空を見上げて呟いた。
まだまだ・・・諦めるには早い。
健太は、負け惜しみでそう吐き捨てるとシャツの襟から
小さな竹笛を取り出して一口吹いた。
音は何も聞こえない。
でもその無音の響きは穴の筒を駆け上って星の瞬く夜空に
飛んでいった。
何?という春の顔に犬笛だ、何もしないよりマシだよ、
ともう一度無音の笛を吹いた。
しかし生コンとジャリはドカドカと落ち続けた。春と健太
は立ち上がったが灰色の海はもう腰まで来てほとんど身動
きできなくなった。
しばらく経って立った二人の胸まで埋もれた頃プスンと
ミキサーのエンジンが止まった。
「くそ。ゼネレーターのガソリンが切れた。いまガソリン
を入れなきゃ・・・」
と言ってシラネがタンクから注ぎもう一度ベルトを引いて
ゼネのエンジンをかけた。
ぶるるるん、ぶるるるん、となかなかうまくかからなかった。
すっかり疲れた春と健太は、うな垂れて押し黙ってその音
を聞いていた。
すると目の前のどろどろのセメントの海に一つの影が走った。
健太が見上げると、穴の真上に満月が出ていて、それを
黒い鳥がよぎった。
あああ!セイコちゃん!と健太は叫んで竹笛を再び吹いた。
そして次の瞬間オオカミの遠吠えがすぐ近くで聞こえた。
春も健太の頬に頬をつけて聞き耳を立てた。
確かにオオカミの叫び声がした。
 
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ヨハン~シーちゃんのおやつ手帖72

2008年11月21日 | 味わい探訪
おじいさん達が作るチーズケーキ屋さんとして、すっかり有名になったヨハン。
香料や着色料、保存料を全く使っていない4種類のチーズケーキは、
極めて素朴でシンプルな味。さっぱり&あっさりがお好きな方にお薦めです。
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