月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「パーフェクト ゲーム/究極の選択」--- (前編)

2008年09月28日 | ◆ハ行&バ・パ・ヴ行

   
   (犯人逮捕のため聞き込みに動き回る刑事役のステラン)

ステラン・スカルスガルド主演のサイコスリラー。というか、サスペンスフルな問題作です。
彼の主演する『宮廷画家ゴヤは見た』(2006年制作)はまだ見ていないのですが、アメリカ映画にありがちのサイコキラーの連続殺人を追う刑事主役のサスペンス(あるいはサイコスリラー)映画と違って、犯人は誰か!?という犯人逮捕に主眼が置かれているわけではなく、そういう意味では『羊たちの沈黙』的な要素の一つ、人間の「行為の理由」と「行為の意味」、「その行為によって変わる精神的な時間軸の変異」そして「なぜ」で導かれる「人間の不条理な存在理由」を問う要素が大きいともいえるでしょうか。

本作ではステラン・スカルスガルドの持ち味が全開となっていて、他のキャスティングも、作品をありきたりのもの、つまりは予定調和的な展開を裏切るに十分な意外性を担保していたように思いましたが、何と言ってもわくわくさせられたのは、フォルムの色調とカメラのアングルです。

この画像をご覧いただくとアメリカ映画の刑事者を見慣れた方は、「おや・・・」と思われるはず。一番明るい彩度の高いシーンでさえこんな感じでいかにもイギリス好みにはたまらない色調で統一されています。撮影監督が誰か知りたいのですが、まだチェックしていません。ごめんなさい。

さて、国際的に活躍しているスエーデンの個性派実力俳優ステラン・スカルスガルは、本作では猟奇的な連続殺人という事件を追う刑事です。

その相棒役の警官にはメリッサ・ジョージ。

ところが、このメリッサ・ジョージ、どうも従来の女刑事からはかなりイメージが外れています。そこでメリッサ・ジョージの別の画像をネットで探してみたところ、

ありました!メリッサ・ジョージといえば、一義的にはこんなイメージかなと。それが、長い髪を束ねて化粧ッ気なしの女性警官。父親のような年齢のキャリアのある男と相棒を組まされながら、軽口もたたかない無口さ。無愛想というよりはクールで、まっすぐな視線が印象的。犯人逮捕へのアプローチにおける直感も彼女の身上です。どうしてこの女優を起用したのかなァ・・・と思いながら観ていたのですが、映画『悪魔の棲む家』のイメージからかしらと思っていたのですが、観終えて「はっ」とさせられました。

彼女のそうした資質や姿は、まさに犯人と対極のものを象徴しているということに気づいたからです。

事件は、次々と起こります。こうした表現は不謹慎ですけれど、実に手際がよくと言ってもいいほどで、これほどの事件を次々と起していながら、犯人は自分の痕跡を残さない。
遺体に共通しているのは、

このW△Zという記号。(最初、WAZだと見違えました)何だか『ZODIAC』の冒頭みたいな設定ですが・・・・



凄まじく残虐な殺され方で亡くなったと思われるどの遺体にも、この謎の記号がナイフで刻まれている以外に手がかりはなく、捜査は難航します。

不可解なのは、惨殺された人間の最も身近な人間もまた死体で発見されていくこと。犯人は実に用意周到で、計画通りに犯行を行っている可能性が高いという可能盛大です。

ところが、さらに不可解なことに検死解剖の結果、遺体の損傷にも関わらず一方は自殺だということが判明。

捜査は身辺調査に力を入れることになり、殺された人間たちの交友関係を洗う聞き込みが展開されていきますが、ステラン・スカルスガルドの様子がどうもおかしい・・・・・



車から自分だけ降りて何やらこそこそと情報を収集するステラン・スカルスガルド。その情報を相棒のメリッサ・ジョージに話そうとはせず、一人で勝手にどんどん聞き込みに動いていきますが、どうも秘密主義濃厚・・・・・



アシュリー・ウォルターズ、映画に出演するラッパーは多いですが、彼もまたその一人ですね。名前を使い分けているのか、アシュリー・ウォルターズは俳優名。音楽の方ではアッシャーD。
本作では、他の犠牲者同様にステラン・スカルスガルドの周囲によく現れます。ラストでは、彼の姿に胸を打たれましたが、そこにたどり着けるよう話を進めますね。

捜査の突破口がなかなか開けぬまま、何かひっかかるものを感じるメリッサ。

まずは、唯一の手がかりであるW△Zが何を意味した記号か。
それを探らなければならない・・・・
台詞がほとんどないのですが、それがとてもいい。映画『悪魔の棲む家』のイメージがあるせいか、メリッサ・ジョージはホラー向きかもしれません。つまりは、台詞なしで表情や雰囲気、何より目で演技できる女優ということですが、こういう女優がラインの違う作品でどういう演技に開眼していくのか・・・楽しみでもあります。

さて、



ここでやっと、W△Zというのは数式で使われる記号だと判明したものの、この数式から何が導き出されるのか分からない。
そう思っていたら、それは、

      PROOF OF EQUATION

方程式の証明のための数式だということがわかります。つまり、
W△Zという記号は、ネットの絵文字などではなく方程式そのものの証明を意味する記号ということになる。
これが事件の鍵だというのなら、何と何が等式ということなのか。

一連の殺人と自殺が方程式で結ばれるのか。
あるいはその両方が何かと等しいというメッセージなのか。
だとすれば、何と等しいのか・・・・

もう少しでヒントがつかめるときに、
またしても手がかりがそこで潰えてしまう・・・

そうこうしているとき、またしても事件が発生します。

「この男、どこかで見たような・・・」と思うメリッサ・ジョージの脳裏に浮かんできたのは、ステラン・スカルスガルドと聞き込みで歩いたときに彼がこそこそ話をしていた連中の中の一人。「そう、あの顔だ」

犠牲者を見たステラン・スカルスガルドの表情には、思いつめた様子と疲労の色が濃厚になっていきます。一人で事件を追うステランですが、

訪ねていったアパートはも抜けの殻で、そこのテーブルに置いてあったものは一枚の図面でした。ステラン・スカルスガルドはある名を叫び形相を変えて飛び出していきます。


その頃、まるで、映画『SAW』のような場面が展開されようとしていました。どこかの工場跡か廃屋かそれともビルの地下室か。まさにステラン・スカルスガルドが目にした図面通りに向かい合った椅子に縛られている二人の人間・・・・・

いよいよ犯人登場です。



暗闇から現れたのは、一人の女性。


(やっと現れたのは、何とセレマ・ブレア)

彼女が犯人なのか?
少なくとも、こうした場面に登場してくる以上、ここにいるのは犯人かその関係者と言うことになります。彼女は一連の事件とどう関わっているのか。犯人だとしたら、なぜこんな事件を起したのか?
ひょっとしてサイコキラー?

ここで驚くのはまだ早い。拘束されている二人を見たら、もっと驚きます。この二人は、いったいどういう二人なのかと。





この画像でどのような想像が可能でしょうか。

その頃、聞き込みをしに行ったきり戻らないステラン・スカルスガルドに何か秘密があるに違いないと踏んだメリッサ・ジョージは、連続殺人および自殺死した人間とステラン・スカルスガルドとを繋ぐ糸を捜すべく、彼が過去に逮捕した相手のリストと調書を調べ始めます。そして、とうとうその糸を発見します。



そう、これまでの犠牲者は皆過去に彼に逮捕されたことがあり、しかも彼らと刑事との関係は現在も続いており、そこに秘匿されている何かがあるに違いない・・・・らしいという推理。

ドラマはここでやっと前段が終わり、登場人物が全部出揃ったところで、いよいよ後半に突入する本作は、あっという間にクライマックスに向けて疾走します。
その鍵を握るのは、このステラン・スカルスガルド。 

 

ラストの宗教的哲学的なテーマ性には思わず唸らされてしまいますが、続きは次回に。前のブログ『フェロン』と見比べるという試みもあって、今般も二部構成でブログを書かせていただいていますが、もともとホラー系やスリラーが大好きなので、本人が書きながら一番愉しませてもらっているかもしれませんね。


★ご参考までに。
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