1988年の洋楽ヒット曲を紹介するシリーズのPart34は、Tracy Chapmanの"Fast Car"。最高位は8月27日付の第6位、翌週7位に落ちましたが、再び上がって9月10日付でもう1回第6位を記録、年間チャートは76位。デビューシングルのこの曲が大ヒットになりました。
Tracy Chapmanですが、アメリカオレゴン出身のシンガーソングライター。1986年に音楽活動を開始し、1988年にデビューアルバム『Tracy Chapman』をリリース。そのアルバムからのファーストシングルがこの曲"Fast Car"です。
そのTracy Chapman、1988年6月に開催された反アパルトヘイト革命家ネルソンマンデラ氏の生誕70周年を記念したコンサートに参加していたのですが、ある大物ミュージシャンの出演でアクシデントが発生、ステージに穴が開きそうになった時、Tracy Chapmanはこの時既にステージを終えていたのですが、ピンチヒッターで再びステージに戻り生ギター一本で演奏、その曲、そのボーカルの素晴らしさに全世界から注目が集まり、そこから、"Fast Car"の突然の大ヒットにつながったそうです。
"Fast Car"の曲の作者はTracy Chapman自身。80年代には、アコースティックギターによる弾き語りのヒット曲はほとんどなかったと思いますが、地味ながらこの素晴らしい曲で、Top10内に入るヒット曲となりました。
デビューアルバム『Tracy Chapman』もチャートを上昇、地味なアルバムながら、アルバムチャートNo.1を記録、年間チャートでも1988年に21位、89年に41位の2年連続のアルバム年間チャートに入る大ヒットアルバムになりました。
この曲、レコードリリースから35年経った昨年の2023年、カントリー歌手Luke Combsがカバーして、カントリーチャートを上昇、No.1となり、続いてレギュラーチャートでもヒット、第2位を記録する大ヒットシングルなりました。そのカバー曲の大ヒットにより、オリジナルのTracy Chapmanバージョンの"Fast Car"も、再びチャートを上昇、レギュラーチャートで最高位42位を記録しました。
こちらが昨年大ヒットしたLuke Combsバージョンです。
なんで新人がこんなにへビーローションされるのか知りませんでしたが、そんな逸話があったとは。度胸も良いけどやっぱり歌が良かったんでしょうねえ。
この曲、地味でしたからねぇ。当時FENは結構聞いていましたが、この曲がそんなにかかっていたかどうか、うーん、覚えていないなぁ。
私はというと、10年どころか、最近になって、Luke Combsのカバーが大ヒットしてから、35年ぶりに聞くようになった曲でした。
もう少し上位にランクされたイメージがあったんですが、6位でしたか。
アルバムが№1になったのでそんなイメージなのかもしれません。
とは言え、88年デビューの女性アーティストでは一番だと思います。
アコースティックギターで弾き語りは10年以上前のR.L.Jonesを思い出しました。
この町や働かない父親の面倒を見る生活を飛び出していく夢を二人でみてたはずが、いつの間にか、彼も自分の父親のように仕事に着かず酒飲みに…。これからは一人で速い車でどこにでも行ってしまえばいい…。
もちろん日本でもあるこうした家庭や社会があると思いますが、この当時のアメリカの社会でも…共感できる沢山の人たちがいたんだよなあと思います。うーむ深い(-_-;)。
We gotta make a decision
We leave tonight or live and die this way
で「We(あたしたち)」と言っていたところが、ラストには、
You gotta make a decision
You leave tonight or live and die this way
「You(あなた)」に変化しているのが注目です…。
じっくり聞いていると良い曲ですよね。
アコースティックギターでの弾き語りのヒットは、70年代以降では、数は少ないと思います。リッキー・リージョーンズもいましたね。もうちょっとほかの楽器も使っていた覚えがありますが、それでもアコースティックギターが中心の女性ボーカル曲で、大ヒットでした。
歌詞拝見いたしました。じっくり聞かせる曲でしたので、どんな歌詞か、とても知りたかったのですが、創造以上に意味深い歌詞でした。
この曲、たった4分ちょっとの歌詞、でも、この曲の歌詞は、「小説」、「物語」と言っても良いです。歌詞、ボーカルとともに、まれにみる素晴らしい曲でした。
外見も歌声も中世的だし、おまけに名前に「マン」がついていますから思わず勘違いされたのでしょう。
実際、そのメイン・パーソナリティの方が「この人、女性ですよ」と指摘したら、そのパートナーをされていた女性の方も「えっ?!」って驚かれていました。
ただし実際、彼女は同性愛者だったようで、過去には作家のアリス・ウォーカーやグィネヴィア・ターナーとの噂話もあったようです。
男性と勘違いですか、言われてみれば、名前はともかく、Tracy Chapmanのボーカルは、中性的な声をしていますね。歌い方も、静雄仮名、男性といっていいような歌い方をしています。まさにそこもTracy Chapmanの魅力の一つでしょうか。
歌詞全体が物語になっている、まさに詩人ですね。
詩人が曲を作ると情景が浮かんできます。
その昔のD.Fogelbergもそうでしたね。
特に♪Same Old Lang Syne♪がそうでした。
歌詞がWeからYouに変わっている。
意味合いが違うかもしれませんが、♪Her Town Too♪も3番の歌詞が、♪Your town、my town too♪になっていました。
こちらも詩人の曲ですね。