世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

フラッシュバック-花詩集

2013-07-13 03:19:16 | 天使の小窓

かのじょの詩集の中で、最も悲しい詩集である。これほど人に馬鹿にされたものもない。
かのじょはわかっていたが、自分なりの、まことを、周囲の人間に尽くそうとすれば、これしかできなかった。

まことにむごいことだ。

この詩の中のことばが、今になったら、痛く響くことだろう。
「私があきらめたら この世界はもう終わりなのだ」
かのじょはわかっていた。自分が何をせねばならないのかを。

その使命のためには、とにかく自分の命をつながねばならなかった。それなのにかのじょは、アルバイト先のスーパーマーケットで、大変な目にあった。惨い目にあった。そしてその恐ろしい愚かな騒ぎを収めるため、彼女は馬鹿になってすべてを自分一人で背負うことにしたのである。愚かな。

使命のためには、体力精神力をあまり消耗するわけにいかなかった。それなのに人間は何もわからず、彼女に惨い荷を背負わせた。かのじょは必死だった。

疲れ果てた。だが、生きねばならなかった。疲労した彼女に、夫は清掃業の手伝いをさせた。チラシ配りをさせた。生きねばならなかった彼女は耐えた。

惨かった。あまりにも、惨かった。かのじょが、血を流しながら、あらゆることに笑って耐えていたのに気付いてくれた人間は、たったひとりだけだった。そしてそんなかのじょを助けてくれたのが、ほかならぬ、あのくすのきだったのである。

これらの、植物をタイトルにした詩群は、かわいらしくも悲しすぎる。後の人がこれを読むとき、こんなことがあってよいのかと、思うことだろう。


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