世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

2008-03-20 09:49:56 | 花や木

昨日から今日にかけて、春の嵐が吹きました。わたしのひきこもり部屋の窓の向こうにも、雨風の激しい音が聞こえました。冬はもう終わったな。

末っ子の幼稚園の卒園式が、昨日ありました。午前中の雨はまだやさしかった。雨に足元を汚されることもほとんどなく、和やかな笑いの中で、みな、こどもたちの人生の最初の、小さな別れを惜しんでいました。

わたしは、みながお世話になった先生と話したり写真を撮ったりしている間、人ごみを避けて前庭に降り、庭の花や木に、深くおじぎして挨拶しました。門の脇のコノテガシワは、少し悲しそうでした。わたしの、一番悲しかったときのことを、その木はもっともよく知っているからです。なにもかもがつらかったとき、その木はとてもよく助けてくれました。

幼稚園の主のソテツには、いちばん深くお辞儀をして挨拶しました。本当に大変なことを、してくれたからです。美しいことを、してくれたからです。みなが、ほぼ大過なく、楽しい年月を、無事に送ることができたのは、ここにこんな、大変に立派な木がいたからなのです。

花々も、みんな、助けてくれました。幼稚園の前の道沿いに並んだ、ヒイラギナンテン、サザンカ、近くの空き地のナズナ、名もない草、ケヤキ、あらゆる植物が、人間の知らないところで、たくさんのことをしてくれたのです。

この春の、花は、去年までの花と、どこか違うでしょう。見てみてください。近くにある花、何かが違う。なぜ違う? それは、人間が変わり始めたから。人間が、花や木の愛に、気づき始めたから。だから花や木も、人間のために、今までよりも、もっと大変なことを、してくれるようになったのです。

それがどんなことかは、きっといつか、人々にもわかるようになることでしょう。

美しいこのナズナ、去年までは、少し人間を馬鹿にして咲いていた。けれど今年は、見違えるほどに美しい。人間が、もっとも大切なことに、気づき始めたから。それで、世界がすべて変わろうとしている。

花や木もまた、新しい世界に行こうとしている。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« しらたまをくだきて | トップ | 贈り物 »
最新の画像もっと見る

花や木」カテゴリの最新記事