世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

神様の声

2015-03-17 06:53:34 | 瑠璃の小部屋

オルゴールのように
ぼくを開けてごらん
ほら 小さな声が聞こえるだろう
まるで静かな音楽のような
これはね ぼくが
一度だけ聞いたことのある
神様の声なんだよ
ほんとうさ

神様の声は
つげの木のささやきに似ていて
からまつの林の静けさに似ていて
爪よりも小さな白い小人のように
ぼくの耳から入ってきて
ぼくの心に小さな穴を掘って
うさぎのように すみついてしまった

神様の声は なんて言っていると思う?
ぼくはそれを 一生懸命に書いてみたんだ
知っている限りの言葉を使って
使える限りの技術を使って
直喩に使える魚や鳥を探して
隠喩に使える絹や毛織の絨毯を探して
そうやって 神様の言葉を全部
やっと書けたと思ったら
ぼくはいつしか 小さな青い小鳥を作っていた

小鳥はちるると鳴いて
そのまま僕の手から飛んで行って
あれきり帰ってこない
どこへ行ったのか わからない
でも ぼくはもう一度 神様の声を書いてみた
そうしたらぼくはいつしか
とてもきれいな銀色の蛾を作ってしまって
それもまた 夜のしじまの向こうに
すぐに飛んで行ってしまった

おかげでぼくは 神様がなんて言ったのか
いまだにわからない
でもあの声は いつでも聴くことができる
この胸の中で ぼくの心臓と一緒に生きているから

いつかきっと ぼくには
神様が 本当は何を言いたいのか
わかる時が来る
そうしたらみなに 教えてあげよう
ああ ぼくはそのとき それはたくさんの
薔薇を 世界中にまくように
幸せなことだろう



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