セバスチャン・ブードン
イスラエル人アムラムとヨケベドの子モーセは、生まれて間もなくパピルスの籠に入れられてナイル川に流された。ヘブライ人がエジプトで増えることを懸念したファラオが、ヘブライ人の男児をすべて殺すように命じたからである。赤子モーセを入れた籠は川を流れていき、たまたま水浴びをしにきたエジプトの王女に拾われ、王子として育てられることになった。長じて彼は神の声を聞き、虐げられていたイスラエル人を導いてエジプトから脱出させた。
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川に流されて王女の手に届くなどという人はよほどの強運の持ち主です。普通はありえません。子供を川に流すということは、大昔はありました。事情があって育てられない子どもを、親が川に流すなどということはあったのです。この話はおそらくその発展形でしょう。流された子供はみな死にました。生き残った子供などはいません。大昔は、親に捨てられるということは即、死を意味したのです。どんな理由があろうとも、子供を捨てることはいけないことです。すべてとはいかなくても、子供が十分に生きていけるようになるまで、親は子供を育てねばなりません。