川での漁をすることも、ヤルスベ族との交渉なしではできなかった。たびたび、川ではヤルスベ族との争いが起こった。そのたびに、カシワナ族の族長は川に来てけんかの仲裁をした。お互いに仲良く川の魚を分け合えるように、決まりを作って、ヤルスベの族長と何度も話し合った。
わけのわからないやつらだが、かたきにしてはだめだ。おれたちにはないいいものも、やつらはもっているのだ。
アシメックは常にそう考えていた。難しい相手でも、カシワナ族のためには必要なのだ。部族のためにやらねばならないことは、族長がやらねばならない。アシメックはそう思いながら、川への道を歩いていた。
川の岸辺に来ると、もう何人かの男が漁をしているのが見えた。小さな舟を川面に出し、枝を編んで作った大きな罠を引き上げて確かめている。魚がたくさんかかっているらしく、男たちは嬉しそうに騒いでいた。アシメックは目を細めて彼らを見ていた。
男たちは罠籠を持って舟をこぎ、岸に戻ってきた。そして岸に茣蓙をしき、籠をひっくり返して、とれた魚を出した。三つの罠籠から、三十匹ほどの魚が落ちて、さっそく男たちはそれをより分け始めた。銀色の細長い魚は食うものだ。だが、緑色の模様のある小さい魚は食わない。それは身をそいで、骨から魚骨ビーズをつくるのだ。