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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

背景の反乱

2014-04-27 06:12:18 | 詩集・試練の天使

車と家が
人々から去ってゆく

広い庭から
庭木が裸足になって逃げだす

こんなものは馬鹿みたいだと
放っておいたものが
いつの間にか消えている
必要だと思ったときに
それはない

ブランド物のバッグが
溶けて消えてゆく
かっこいいブーツが
足から逃げて行く

アニメ塗りのような
ファンデーションが
とれない
自分の本当の顔が
馬鹿になる

空が落ちてくる
海が反乱する
風が棒のように硬くなる

花は凍る 森は拒否する
水は飲もうとすると
馬鹿かという

何もかもは だれかが許してくれていたから
あったものだったのに
それは当然 自分のものだと思っていた
そういうものが
一斉に
人間から去って行く

背景の反乱だ
ネガとポジの反転だ
人間よ
おまえたちはもう
主役ではない

舞台の隅に退き
カーテンのほころびでも
つくろっているがいい



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カーニバル

2014-04-01 03:54:41 | 詩集・試練の天使

天使は人間を救った
ひとりもこぼすまいと
一生懸命がんばって
人間を救った
ぼろぼろになって死ぬまで
やった

人間は天使に
ラップとスリッパをやった
それはスーパーの新装開店の
記念品だった
天使はいってしまった

カーニバルが
始まるというのに
人間はまだ
相談をしている

一室に集まって
馬鹿な顔を突き合わせて
愚にもならぬことを相談しあっている
交通整理は誰がするのか
駐車場はどこに確保するのか
子供たちの安全はどうなのか

カーニバルの日は
過ぎたというのに
まだ人間は相談をしている

道路の穴はいつ治すのか
だれも川に落ちないよう囲いを造らなければ
髪の毛一本も落としてはならない
いやなことになったら誰が責任をとるのか

カーニバルはもう
過ぎたというのに



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2014-02-01 04:10:46 | 詩集・試練の天使

世界に君臨する
巨大な芝居の書き割りがあった
それはそれは
甘やかな夢が虹色に描いてあるのだが
それにはすでに
太い十字の釘が打たれてあり
書き割りはもう命を失っていた
だが人間たちはまだ
その前で生きていた

わたしが書き割りの前を過ぎると
三本の川があった
槍の流れている川と
石つぶての流れている川と
糞尿の流れている川だった
どれも湯のように煮え立ち
嵐のように激しくごうごうと流れていた

天使の群れが
はるか上からその川を見ていた
彼らは青ざめていたが
その顔にはもう決意があった

神を信じてゆくしかない

そういって
天使たちは
次々に
川の中に飛び込んで行ったのだ



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眠りの中で

2014-01-26 03:40:12 | 詩集・試練の天使


(ああ
 ものごとは
 思い通りにはならないものだと
 知ってはいたけれど
 まさか こういうことになるとは
 思わなかった)

(わたしはいつも
 正しいことを信じて
 ひたすらまっすぐにやるのだが
 結果はいつも
 思いがけない現実となって
 やってくる)

(それはきっと
 わたしの中の
 ものごとの暗黒面というものに関する経験が
 少なすぎるからだろう)

(わかってはいるのだけれど
 自分というものはどうしようもない)

(だからわたしは
 みなをふかく愛するのだ)

(わたしがいちばん
 わたしが馬鹿なことを知っているから)

(だれよりも
 だれかの愛を必要とする
 不完全なものであることを
 知っているから)

(わたしは
 どんなに年をとっても
 子供だ
 悪いことが できない
 どうしても)

(きっとこのまま
 永遠に
 子供なのだろう)



 
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雪軍

2014-01-25 03:13:51 | 詩集・試練の天使

雪は降る降る 雪は降る
雲が空をおおい 日を隠す
氷雪の嵐の 予感がする

鴻毛が 空を埋め尽くしたのかと
思ったら
それは天使の群れだった

蛆虫の甲兵よ
尻尾をまいて逃げよ

真実の天使を
殺したのはおまえか

雪軍のごとき天使を率いて
試練の天使がやってくる



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なしの実

2014-01-21 03:40:07 | 詩集・試練の天使

ひねもす
乱れ思ひて
なだれ落つる 魂の悩みを
野に広げ 日にさらし
傀儡のごとき うつろなる身を
打ち落としぬ

願はくは きよめたまへ
あれこれと よこしまをゑがきて
碁に打ちし 愛の仕打ちに
世をはづかしめし 者の罪を

我を 傀儡に落とし
脱ぎ去りし 肉のごとく
日にかはかし
砂にくだき
むちうち むちうち
燃やしつくし
水に流し
無にとかし
ゆ る し た ま へ   と
さけぶは たれぞ

たれぞ

たれぞ

ならくに
黒き血を吐き
つひに あらはれぬる
つみの おほきなる
なしの 実を

その すがたよ


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花軍

2014-01-18 04:49:14 | 詩集・試練の天使

森の木々は黙し
金と真鍮の彫像となって
後退する
それは謎の氷の結晶のようだ

コスモスは花軍を指揮し
あらゆる暴虐の悪魔に
対峙する
それは大地に翻る炎のようだ

紫水晶は雄弁に歌い
世界を浄めあげる
それは沈黙の空を打つ
紫の轟音のようだ

月は空からしたたり
真珠の津波となって
氾濫する
それは爆発する砂漠の光のようだ

ジーザス・クライストが
空に現れ
太陽のようにほほ笑む
それは天なる神の旗印のようだ

白き桜は目を閉じ
翡翠の記憶の中に
溶けてゆく
それは幻の愛の約束のようだ

紅き薔薇は
鉄の檻から解放され
全ての虚偽を暴く
それは水晶の棘の雨のようだ

あらゆるものが
人類の敵となる
それは世界の復讐だ
たったひとつぶの真珠の胎児を殺したがために
おまえたちはすべてに
復讐されるのだ



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月の岩戸は

2014-01-15 03:17:31 | 詩集・試練の天使

天の岩戸は 開けども
月の岩戸は 開かぬぞ
たはぶれに噛む 人の世の
牙にくづるる たわやめの

十重の朝鳥 歌へども
玉の鏡を 磨けども
よろづつはもの 集へども
月の岩戸は 開かぬぞ

かしこき長の 心さへ
氷と落つる 長き夜に
千代の歌楽を 編まふとも
月の岩戸は 開かぬぞ

かなしき夜半の かたすみに
白き盥を うちふせて
ももちのをとめ 踊れども
月の岩戸は 開かぬぞ

闇より深き 新月の
石より硬き 金剛の
とはのねぶりに 散る夜の
かなたに去ねる 面影の

御簾のをかげの 小机に
ひじをたてつつ 思ひては
後の語りを 書かむとぞ
筆を持つ手も こごり落つ

二章目はなき 物語
よもつひらさか 巌ふたぎ
もだしたまへる 神の目の
月の岩戸は 開かぬぞ



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奈落

2014-01-06 03:29:33 | 詩集・試練の天使

暗い 暗い 暗い
痛い 痛い 痛い
馬鹿だ これは

あほなんだ みんな
ぜったいに
いやなんだ

あほう
このおんな
びじんだ
やってしまえ

このおんな
びじんだ
やってしまえ

ばかだこんなの
あほだ
ばかは
いたいから
ぜんぶ
やってしまえ
あほだ
こんなおんな

ばかなおとこはぜんぶ
こんなやつばっかりさ
あほなんだよ
ぜんぶ
ばかなんだよ
いたい
いたい
いたあああああいいい……

しんじつの てんしいい……



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出ていけ

2013-12-23 04:46:08 | 詩集・試練の天使

さあもう
出て行きたまえ
そこは
君たちが入ってはいけない部屋だ

そこに入っていいのは
その部屋の正当な持ち主だけだ
人から盗もうとして
影に隠れて勝手に侵入する
盗っ人のものではない

君たちはもう
許すことをしてくれる
愛を消費しつくしたのだよ
もうだれも
馬鹿なことをする君たちを
許してはくれないのだ

君たちは
君たちのためにみなが用意してくれていた
全ての愛を
消費しつくした
その上で まだ愛が必要なので
ほかのところから愛を貸してもらって
それもまた消費しつくした
まだ足りないというので
特別に許してもらって
高いところから愛を下ろしてきて
それでなんとかした
だがその愛も消費した
もう愛は少しもないのに
まだ愛がいるというので
無理に無理を重ねて
愛の星をばらばらにして
内臓を食らいつくしそれが完全に消え去るまで
愛を消費しつくした

もうこれ以上
貸し付けることはできない
君たちは
愛の借金をはらわねばならないのだ

払わねばならないのに
まだ君たちは
いてはいけない部屋を占領して
早く愛を出せと
要求している
だがもはや
二度と愛を求めることはできない

もう許すことはできないのだ
それなのに まだ
大人の知恵を使いながら
子どもの特権を振りかざして
愛してくれというのなら
愛はみな 君たちを切る

もうそんなことになるまで
君たちは
愛をむさぼりつくしたのだよ



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