「新生丸」で存分に飲み食いし、もう思い残すことはないといってもよい状況です。その一方で、九時台に早々と切り上げるのももったいないように思われたとでも申しましょうか。往生際の悪さを発揮し、今回も電車に揺られて静岡にやってきました。しかしこれが一筋縄では行きません。
その時点で目当てにしていたのは、前回満席で振られた「昇菊」でした。しかしこの店との相性がどうもよろしくありません。カウンターが空いているのが店先から見え、喜び勇んで乗り込むと、今し方大人数の予約が入ったというまさかの返答が。見事なまでの返り討ちです。
この時間から入れる店の心当たりもなく、またも徒手空拳のまま清水へ戻るかという状況ではあります。しかし、既に散々飲み食いしているにもかかわらず、切り上げるにはまだ早いという心情が今夜はなぜか勝りました。手近な場所を探した結果、「車」なる一軒の店へ飛び込むという顛末です。
同じ店に何度も通うと、注文する品が固定化されてくるという現象が往々にして起こります。この傾向は呑み屋選びにおいても妥当し、最初の頃は試行錯誤しつつ様々な店を訪ね歩く一方、同じ街に何度も足を運ぶにつれて、訪ねる店が固定化されていく傾向があります。そのような事情もあり、静岡では久しく新規開拓をしておらず、呑み屋街の現況も把握していなかったのが実情です。要は何の事前情報もなく、当たるも八卦、当たらぬも八卦と割り切って飛び込んだわけなのですが、結果として自分の嗅覚に狂いはありませんでした。
暖簾をくぐってまず目に入ったのは年季の入った白木のカウンター、次いで年配の店主、女将とおばちゃんの三人組です。それだけでも古い店なのは一目瞭然ですが、聞けば店を開いて45年になるそうです。古い店には間違いがないという教祖の教えに照らせば、少なくとも悪い店ではないと言い切ってよいでしょう。
品書きは横長の紙に綴られカウンターの頭上に張り出されており、あとは日替わりの黒板という組み合わせです。ただし細かな品書きではなく、お客の注文に応じて臨機応変に対応しているのが実態なのでしょう。品書きと店内の雰囲気からしても、純然たる居酒屋というよりは、それより一枚上手の仕事をこなす店と見受けられます。皆にこやかで社交的な三人組が醸し出す居心地を含め、中洲の「一富」がTVの影響で一変する前の、古きよき時代をどことなく彷彿させる雰囲気です。思いがけない発見は、まさしく怪我の功名ということになります。
苦肉の策で飛び込んだ結果とはいえ、静岡での選択肢がもう一つ増えたのは収穫です。店主も女将もかなりの年配、なおかつ跡取りがいそうな雰囲気もないだけに、いつまで店が続くのかは未知数ながら、矍鑠とした様子からして、まだまだ現役を続けるのでしょう。次回またもや「昇菊」に振られたときには、もう一度この店の暖簾をくぐってみるつもりです。
★車
静岡市葵区両替町2-7-1
054-252-8646
大七
突き出し(チャーシュー和え物)
カツオ
あさり汁
その時点で目当てにしていたのは、前回満席で振られた「昇菊」でした。しかしこの店との相性がどうもよろしくありません。カウンターが空いているのが店先から見え、喜び勇んで乗り込むと、今し方大人数の予約が入ったというまさかの返答が。見事なまでの返り討ちです。
この時間から入れる店の心当たりもなく、またも徒手空拳のまま清水へ戻るかという状況ではあります。しかし、既に散々飲み食いしているにもかかわらず、切り上げるにはまだ早いという心情が今夜はなぜか勝りました。手近な場所を探した結果、「車」なる一軒の店へ飛び込むという顛末です。
同じ店に何度も通うと、注文する品が固定化されてくるという現象が往々にして起こります。この傾向は呑み屋選びにおいても妥当し、最初の頃は試行錯誤しつつ様々な店を訪ね歩く一方、同じ街に何度も足を運ぶにつれて、訪ねる店が固定化されていく傾向があります。そのような事情もあり、静岡では久しく新規開拓をしておらず、呑み屋街の現況も把握していなかったのが実情です。要は何の事前情報もなく、当たるも八卦、当たらぬも八卦と割り切って飛び込んだわけなのですが、結果として自分の嗅覚に狂いはありませんでした。
暖簾をくぐってまず目に入ったのは年季の入った白木のカウンター、次いで年配の店主、女将とおばちゃんの三人組です。それだけでも古い店なのは一目瞭然ですが、聞けば店を開いて45年になるそうです。古い店には間違いがないという教祖の教えに照らせば、少なくとも悪い店ではないと言い切ってよいでしょう。
品書きは横長の紙に綴られカウンターの頭上に張り出されており、あとは日替わりの黒板という組み合わせです。ただし細かな品書きではなく、お客の注文に応じて臨機応変に対応しているのが実態なのでしょう。品書きと店内の雰囲気からしても、純然たる居酒屋というよりは、それより一枚上手の仕事をこなす店と見受けられます。皆にこやかで社交的な三人組が醸し出す居心地を含め、中洲の「一富」がTVの影響で一変する前の、古きよき時代をどことなく彷彿させる雰囲気です。思いがけない発見は、まさしく怪我の功名ということになります。
苦肉の策で飛び込んだ結果とはいえ、静岡での選択肢がもう一つ増えたのは収穫です。店主も女将もかなりの年配、なおかつ跡取りがいそうな雰囲気もないだけに、いつまで店が続くのかは未知数ながら、矍鑠とした様子からして、まだまだ現役を続けるのでしょう。次回またもや「昇菊」に振られたときには、もう一度この店の暖簾をくぐってみるつもりです。
★車
静岡市葵区両替町2-7-1
054-252-8646
大七
突き出し(チャーシュー和え物)
カツオ
あさり汁