本日の晩酌 - 山形正宗

山形正宗といえばこのblogでも度々絶賛してきた「秋あがり」ですが、それに少し遅れて蔵出しされる限定品が、自社栽培の米で造った「稲造」です。
今季模様替えした「秋あがり」については、最大の特徴である柑橘系の吟醸香が形を潜めたという変化について書き留めましたが、結論からいうとあれは開封が早すぎたということのようで、二月ほど置いたところ本来の香りが立ってきました。それに対してこの「稲造」では、開封した瞬間から同じく柑橘系の吟醸香が切れ味鋭く立ち上がってきます。しかし人間というのは勝手なもので、あれほどこだわっていたはずの吟醸香が、今度は過剰なようにも感じられてきました。甘味、酸味、旨味が渾然一体となった中から、吟醸香がさりげなく立ち上がってきた「秋あがり」に対し、こちらの吟醸香はあまりに直截で、全体としては一本調子に感じられるとでも申しましょうか。酒としての総合評価では、やはり「秋あがり」に軍配が上がるものの、蔵の個性が見事なまでに体現されている点においては、こちらもあながち悪くはないといったところです。

★山形正宗 純米吟醸「稲造」
水戸部酒造(山形県天童市)
原料米 美山錦
精米歩合 55%
アルコール分 16度
東京都港区 鈴木三河屋にて購入