日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2016 - 庄内食堂

2016-09-29 20:08:50 | 居酒屋
南稚内の呑み屋街にズバリこれだといえる店はないと申してきました。しかし、仮にもう一晩機会があるならここがいいと思っていた店があります。図らずもその機会が巡ってきた今夜、迷わず飛び込んだのは「庄内食堂」です。

ささやかな呑み屋街とはいえ、その中では最も賑わう一角におでん、ラーメンの看板を掲げた店です。おでんにラーメンなど全国どこへ行ってもあるわけで、本来ならば最果ての地に来てまで訪ねる必然性はありません。しかし、地元客が呑んだ後に決まって立ち寄りそうな店構えには、看過できないものがありました。一泊限りならともかく、三泊目なら思い切って飛び込むのもよかろうと思い至った次第です。
暖簾をくぐるやいなや目についたのは、カウンターの中央で湯気を立てるおでん舟です。玄関を入って左側に、おでん舟が鎮座するカウンターが6席、右側にテーブルが2卓あって、突き当たりに小上がり2卓を配した直線基調のこざっぱりした店内は、おでん舟さえなければ呑み屋というより食堂然としています。小上がりと他の区画の仕切壁には行灯式の品書きが。酒、ご飯物、麺類、おでんというのがその内容で、手元の品書きはありません。このことからしても二軒目、三軒目向けなのは明らかですが、今夜の目的は地元客御用達の店で軽く一杯引っかけることにあり、そのような目的に照らせばむしろ好都合です。
まず酒を、次いでおでんを三品注文。徳利が空いたところでラーメンをいただけば一丁上がりという寸法です。注文したチャーシューメンは、鳳凰を描いた丼に透き通ったスープと細い縮れ麺を組み合わせ、中央に2枚乗った円い蒲鉾を要に、6枚のチャーシューを扇形に並べ、左右に輪切りの卵を、下半分には細切りのメンマとネギを乗せた、左右対称の美しい出で立ちをしています。毎日でもいただけそうなほど飽きの来ない完成された味わいは、呑んだ後にはお誂え向きでした。
年配の女将が一人で仕切る店か、後継者はいないのかと思っていたところ、八時を少し回ったところで手伝いの青年が入ってきました。話しぶりからしてお身内なのでしょうか。この店が次世代へと受け継がれていくのであれば幸いに思います。

優勝決定から一夜が明け、本日の日ハムは休養日です。店内では野球中継に代わって往年の歌謡曲を題材にした番組を放映中。やがて流れてきたのは襟裳岬でした。「何もない」と歌われた襟裳岬を再訪しようと企てながら、時間切れで果たせないという経験を何度も繰り返し、今年の花見でも返り討ちに遭いました。ようやく訪ねた六年前は濃霧の中を強風が吹き荒れる凄まじい状況で、再訪を実感することもできないまま終わりました。そして今回の滞在でも、襟裳岬の方には近付くことすらないまま終わろうとしています。今度こそはと念じつつ席を立ちました。

庄内食堂
稚内市大黒2-8-5
0162-23-3073
1600PM-300AM
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晩秋の大地を行く 2016 - 三連泊

2016-09-29 19:31:55 | 北海道
予想通りの結果だったでしょうか。200kmを走破し稚内に舞い戻りました。一昨日の到着時に19度あった気温が昨夜は13度に下がり、今夜は9度となっています。終盤にきて俄然晩秋の趣です。

稚内までもう一度走りたくなったというより、留萌まで走るのが厳しくなったというのが直接の理由です。天塩から留萌までは100kmを大きく超え、北海道の道路事情を考えても二時間は下らない距離があります。しかるに、残照が次第に弱まり、そろそろ潮時かと思ったのが六時前でした。その時点から移動を開始し、途中で風呂と買い出しを済ませ、さらには現地で設営する時間も含めると、全てが片付くのはどう考えても九時過ぎでしょう。これでは最終列車の通過を見届けるのがせいぜいになってしまい、長距離移動の疲労が残るだけの結果になりかねません。加えて昨日にもまして気温が下がり、キャンプには少々厳しい条件でもあります。天塩から留萌までは初めて自走する区間であり、それがほぼ全区間暗くなってからの走行になるのもいただけませんでした。ならばもう一度稚内まで走り、明日明るくなってから出直した方がよかろうと思い至った次第です。
見事な夕景で有終の美を飾るつもりが、結局時間が足りなくなって、性懲りもなく稚内に舞い戻る結果となりました。しかし、決して蛇足ではなかったと言い切れるほど、稚内までの車窓は最高でした。昨日に比べ通った時間が若干遅かったため、残照も相当弱まってはいたものの、その代わり遠景が鮮明で、利尻島、礼文島の海岸線沿いに連なる明かりが見えたのです。明かりが集まった場所とまばらな場所の違いで、あれが町かと見分けられるほどでした。この車窓を眺めることができただけでも、引き返した甲斐があったというものです。結果としてはこれでよかったのではないでしょうか。

そのようなわけで、今夜も「みどり湯」の世話になります。南稚内にズバリこれだといえる呑み屋が見当たらない以上、三泊目は稚内の駅前に宿をとることも考えられなかったわけではありません。一泊目と違って宿泊事情が逼迫しているわけでもありませんでした。あえてそうしなかったのは、宿代を惜しんだというより、最後の晩だけ違う宿に泊まるのが画竜点睛を欠くように思えたからです。それだけこの宿の居心地がよかったということでもあります。先ほど電話を入れたとき、女将にはまだいたのかと笑われましたが、幸いにして快諾を得ることができました。今夜もこの宿に泊まれるのを幸いに思います。
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晩秋の大地を行く 2016 - 鏡沼海浜公園

2016-09-29 17:42:10 | 北海道
秋の日は釣瓶落としという通り、この時期にもなると一日二分の割合で日の入りが早まっていきます。今日の夕日もたちまち沈み、天塩の町に着いたときには今にも夕日が沈もうとするところでした。このまま留萌方面の国道に入れば、しばらくは微妙に内陸側を走る線形となります。夕景を眺めるなら道道106号線に入るしかありません。そう判断して国道との交差点を通過し、海岸に突き当たったところで北に進路を変えると、今まさに水平線の彼方へ夕日が沈もうとしていました。もうここで止まるしかないという状況で海岸に出ると、そこがたまたま公園でした。その鏡沼海浜公園で日没を見届け、只今茜色に染まった空を眺めています。

最後まで雲が出ていた昨日から一転、今日は時間が経てば経つほど西の空が晴れて、ついには雲一つなくなりました。彼方には山頂まで一点の曇りもない利尻富士の影が浮かび、西の空はこれぞ北海道の真骨頂というべき鮮やかな夕焼けに染まっています。
こうなるとにわかに聞こえてくるのが、このまま道道を稚内まで走りたいという悪魔のささやきです。この夕焼けと利尻富士を眺めつつ走れる機会が、残りの人生で何度訪れるかと考えると、それをむざむざ見送るのはあまりに惜しいものがあります。彼方に連なる沿道の風車が、こちらへ走ってこいとでもいっているかのようです。
もっとも、雲こそ多かったとはいえ、昨日走って雰囲気だけは分かったという実感もあります。一昨日も暗い中とはいえ走っており、既に同じ道を一往復半しているわけです。さらにもう一往復して、明日以降の日程がますます詰まっていくよりも、この夕景を花道にして去るのが有終の美のようにも思われ、何とも決めがたいところではあります。こうして迷っているうちに暗くなれば、もはや稚内に戻る理由はなくなるわけです。戻るなら即決しなければなりません。それができなければ未練を残して去ることになります。結果やいかに…
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晩秋の大地を行く 2016 - 雄信内再訪

2016-09-29 16:35:34 | 北海道
往路では残念ながら日が陰ってしまった雄信内駅に、幸いにも復路で再訪を果たすことができました。木造駅舎が西日を浴びた印象的な姿を記録し、宗谷本線の駅めぐりはこれにて完結です。
ここから一昨日と同じ経路で海沿いに抜けると、留萌までは100km少々の距離となります。北海道の交通の流れなら二時間強あれば走り通せる距離です。ただし、夕景を眺めたり風呂に入ったりする時間も考えると、実際の到着時間はかなり遅くなることも予想されます。キャンプ場から留萌本線の列車を眺められるのは、今回が正真正銘の最後だけに、是非とも訪ねておきたいのはやまやまながら、終列車が出てから行っても仕方がありません。沿道にはキャンプ場が多数あるため、時間切れになった場合は手近なところに飛び込みます。
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晩秋の大地を行く 2016 - 安牛駅

2016-09-29 16:05:45 | 北海道
最後に残った安牛駅を訪ねます。これにより、宗谷本線全駅を曲がりなりにも訪ねたことになります。
例によって塗装がひび割れた貨車駅舎ですが、こちらはひび割れを通り越してはがれ落ちており、駅前側の駅名表示は完全に読み取れなくなっています。待合室の中も荒れ果てている様子こそないものの、駅ノートが置かれているだけとやや殺風景です。昨日訪ねた駅の多くが、駅前にささやかながらも市街があったり、広々した牧草地が広がっていたりしており、さらには駅舎も色とりどりの花壇で飾られるなど明るい雰囲気だったのに対し、本日訪ねた駅のうち、幌延以外は総じてうらぶれた雰囲気でした。

名寄を出て北上を開始したのが月曜、日進から稚内まで32駅を訪ねるのに四日を費やしました。一昔と少し前、活動仲間と駅を巡っていた頃には、一時間におよそ五駅の割合で粛々と訪ねていたものです。それが今では一日平均10駅にも満たないということは、一駅あたりの滞在時間が格段に長くなっていることを示しています。
かつては数を稼ぐことに汲々として、無味乾燥な貨車駅舎など見向きもしないところでしたが、そのような駅舎が小ぎれいに手入れされている様子などは見ていて好ましく、駅前の雰囲気も千差万別であることに気付いてきました。ひたすら数ばかりを追い求めていたかつてよりも、活動としては今の方が面白いというのが実感です。今回道北に深入りしすぎたことにより、同じく存続問題が浮上している道東については手つかずで終わりそうですが、次の機会はそちらを中心に旅してみたいと考えています。
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晩秋の大地を行く 2016 - 南幌延駅

2016-09-29 15:48:00 | 北海道
続いて訪ねるのは南幌延駅です。朝礼台のホームに安普請の、しかし味のある待合室という、三日ほど前までよく見かけていた光景がここで復活。しかしここの待合室は味わい深いというより怪しげです。朝礼台とは道路を挟んで反対側に置かれた待合室は、壁一面を白塗りの鉄板で覆われており、正面にも側面にも窓もなければ駅名の表記も何もなく、一見すると民家の物置か何かのようにしか思えません。しかし、半信半疑になりながらもドアを開けると、反対側に窓があり、ベニヤ板の壁にある時刻表と運賃表で、ここが待合室だとようやく得心できました。駅前には地区の集会所と農家が一軒、右の彼方に鎮座する利尻富士が印象的です。
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晩秋の大地を行く 2016 - 上幌延駅

2016-09-29 15:33:33 | 北海道
幌延から先は再び40号線から離れた駅が続きます。次に訪ねるのは上幌延駅です。塗装がひび割れた貨車駅舎が西日を浴びてぽつんと佇んでおり、駅前に民家が一軒、少し離れたところにもう一軒。周囲には荒れ地が目立ち淋しげな雰囲気です。前後の道道の規制速度が40km/hであることからすると、かつてはここにもそれなりの市街があったのでしょう。しかし今では行き交う車もまばらで、静まりかえった駅前で秋の虫が鳴いています。
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晩秋の大地を行く 2016 - 幌延駅

2016-09-29 15:09:19 | 北海道
かつての羽幌線の分岐駅、幌延駅を訪ねます。豊富駅と同様の広い前室を持つ駅舎は、沿線の改装された貨車駅舎のごとく、近年外壁を張り替えたようです。
折しも羽幌線を引き継いだ留萌十字街行の沿岸バスが到着し、しばし停車の後に発車していきました。初めて北海道に渡った二昔と少し前、このバスに終点まで延々乗車したことがあります。若かりし頃を懐かしく振り返っていると、今度は通運業者のトラックが。広い駅前の片隅にはJRコンテナが積まれています。このコンテナがはるばる旭川まで運ばれた後、貨物列車で全国各地へ旅立っていくのでしょう。羽幌線も貨物列車もとうに姿を消しましたが、形を変えて密かに健在なのはせめてもの救いです。
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晩秋の大地を行く 2016 - 南下沼駅

2016-09-29 14:49:42 | 北海道
あと四駅と申しましたが、それ以外にも駅の跡地があります。40号線を進み、線路と立体交差する手前を左斜めにそれて少し進むと、南下沼駅の跡へと下る短い砂利道が残っていました。
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晩秋の大地を行く 2016 - パンケ沼再訪

2016-09-29 14:33:35 | 北海道
名山台、下沼駅、パンケ沼の順で昨日訪ねた場所を再訪します。逆の経路をたどっている以上、順番も逆にするのが望ましいところではありますが、昨日ほどではないにしても雲が多く、日の陰る時間がそこそこ長いのです。パンケ沼でしばらく天気待ちをしたものの一向に晴れず、あきらめて名山台まで移動するやいなや晴れだしたため、急遽舞い戻ってくるという経過です。
このような状況だけに、今日も時間が押してきました。これから幌延へ急行し、宗谷本線の残り四駅を訪ねて、できれば雄信内も再訪します。あとは再び日本海側に出て、ひたすら南下することになるでしょう。
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晩秋の大地を行く 2016 - 幌延ビジターセンター

2016-09-29 13:34:43 | 北海道
北緯45度線を通過して昨日も走った下沼までの道道に入り、幌延ビジターセンターにやってきました。サロベツ原野の湿原に、パンケ沼へと続く長大な木道が延び、展望台へ登ればその湿原の彼方に利尻富士を一望できます。
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晩秋の大地を行く 2016 - 終盤戦

2016-09-29 12:13:26 | 北海道
さらに進むと車窓の左手に原野が広がり、線形も平坦になってきました。それとともに利尻富士が右後方へ去って行くという、昨日とは逆の展開になっています。いつまでもこちらを見送るように佇む姿は、鹿児島を出るときの桜島、津軽を出るときの岩木山を彷彿とさせ、こうなると俄然去りがたくなってくるのが人情というものです。あとは最大四日かけて少しずつ南下していくことになります。長旅は終盤戦に入りました。
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晩秋の大地を行く 2016 - こうほねの家

2016-09-29 11:36:29 | 北海道
道道106号線に合流して少し走ると現れるのが、こうほねの家と名付けられた駐車公園です。コウホネ沼なる一周400mほどの小さな沼のほとりに展望台があり、そこに上れば利尻島は先ほどの漁港よりも近くに迫り、右下から左上へ向かって続く湿地との取り合わせが絵になっています。
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晩秋の大地を行く 2016 - 西稚内漁港

2016-09-29 10:55:42 | 北海道
野寒布岬から海沿いの道道を南下し、小さな漁港にやってきました。岸壁の正面に利尻島が鎮座する眺めは、鹿児島の港から眺める桜島を彷彿とさせます。
山頂付近は相変わらず雲に覆われてはいるものの、中腹以上が完全に雲をかぶっていた朝方と違い、時折山頂も見えるようになってきました。完全に晴れることは当分なさそうですが、そこそこ絵になる眺めになってきたのは幸いです。
それにしても眺めがよすぎて先に進みません。無停車で走れば天塩まで実質一時間足らずの距離とはいえ、かなりの時間を消費しそうです。留萌は遠くなりつつあります。

ちなみに、出発以来映像を記録してきた16GBのメモリカードを間もなく使い切ろうとしています。こちらはあと32GBあるためよいとして、気がかりなのはフィルムの方です。只今一本撮り切って残りが六本になりました。これまでに撮った本数を数えると11本あります。上陸以来六日と少しで11本ということは、一日二本近く消費しているわけです。滞在が今日を入れて最大あと四日あることを考えると、この勢いで消費すれば足りなくなる可能性も出てきました。
北海道ではこのようなことが起こりがちであり、今回も十分多めに持って出たはずが、それをも上回る消費量となったのは、取りも直さず連日好天に恵まれていることを示しています。内地であればキタムラという駆け込み寺があるのに対し、何分最果ての地だけに補給手段がありません。明日以降もう一度旭川に寄ることができれば、そのときに押さえておいた方がよさそうです。
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晩秋の大地を行く 2016 - 樺太食堂

2016-09-29 10:03:25 | B級グルメ
移動の前に腹ごしらえです。以前も世話になった「樺太食堂」を再訪します。
ウニを売り物にした当店ですが、常々申している通りウニには全く興味がありません。最盛期ならまだしも、季節外れの今になって高額なウニ丼をいただくつもりはなく、カニ、イカ、いくら、とびっこ、ホタテの五色丼を選びました。ご予算は2160円也。宿代が千円のところ、朝食に倍以上かけるのは明らかに均衡を失していますが、大盛りのご飯にネタを山盛りにした豪快さが北海道ならではです。滞在中に一度だけならこれもよいでしょう。

樺太食堂
稚内市ノシャップ2-2-6
0162-24-3451
五色丼2160円
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