日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

他山の石

2016-09-14 23:51:25 | 旅日記
近年にわかに蔓延しだした風習といえば、節分の恵方巻に10月のハロウィンですが、それらと並んで自分が眉を顰めているものに「オクトーバーフェスト」があります。馬鹿騒ぎと看過したいのはやまやまながら、職場の近くに例年会場となる公園があり、否が応でも目に入ってしまうのが厄介です。

まず、都心の一等地の公園を、営利目的の催し物が大々的に占拠するのはいかがなものかという疑問があります。全国で延べ10会場、会期がそれぞれ10日以上ということは、主要都市の公園を実質三ヶ月以上にもわたってこの催しが占拠しているわけです。地方都市が町おこしの目的で一日、二日に限って開くというならまだしも、少なくとも現在会場とされている場所ではそのような大義名分が成り立つとは思えません。博多の屋台でさえ、方々から槍玉に挙げられて年々衰退しているご時世に、この催しだけが大手を振って罷り通っている現実は理解に苦しみます。縁もゆかりもない欧米発祥の行事のために舞鶴公園を貸すよりも、屋台という文化を守っていくことの方がはるかに大切だと思うのですが。
何より嘆かわしいのは、酒には興味などなさそうな一般大衆が、主催者の思う壺にはまっているのが明らかなことです。屋外の仮設の会場という条件を考えれば、酒も肴も千円以上という価格設定はいかにも割高であり、同じ予算で飲み食いできる本格的なビアバーが都内にはいくらでもあります。しかるにそれらの店には目もくれず、割高な酒と肴を有難がるのは、お祭り騒ぎを楽しむことに目的があり、酒と肴は二の次だからなのでしょう。実際のところ、花見に行ってもキャンプをしても、ビールを呑んでいる人々をほとんど見かけたことがありません。大多数の人々が呑んでいるのは発泡酒、酎ハイなどの安酒であり、酒など酔えればそれでよいという人々がいかに多いかがよく分かります。
そのような人々の間にも、本場ドイツの文化を広めたいという志があっての取り組みだとすれば、酒呑みとしても歓迎すべきことではあります。しかし、少なくとも自分の目には、そのような志は希薄に映り、むしろ一般大衆の無知と欧米文化に対する漠然とした憧れにつけ込んで、一儲けしてやろうという魂胆が感じられてなりません。そもそも、都心の公園を百日単位で占拠するなどという芸当が、単なる有志の団体にできるでしょうか。「実行委員会」を名乗る主催者の背後には、おそらく魑魅魍魎が跋扈しているのでしょう。恵方巻、ハロウィンと同様の胡散臭さを感じるのはそのためです。

ハロウィンに関していえば、数年来の過熱ぶりが一段落し、人々が「踊らされている」ことに気付き始めたのはよいことです。空疎なお祭り騒ぎを他山の石にして、我が国に健全な酒文化が広まっていくことを願っています。
コメント