日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2016 - るぱん

2016-09-28 20:07:34 | 居酒屋
稚内に連泊するという貴重な機会が訪れました。昨日は南稚内の呑み屋街へ行った以上、今日は稚内駅の方まで足を延ばしたくなるのが人情です。宿代はただ同然だけに、片道だけならタクシーに乗るという手段もあります。しかし、九時までには宿に戻らなければならないという時間的な制約が壁になり、結局今夜も南稚内の呑み屋街にやってきました。第二夜に訪ねるのは「るぱん」です。

こちらは「酒場放浪記」で紹介された店です。昨晩呑み屋街を一通り歩いた結果、ズバリこれだといえる店はないのが分かっています。それだけに、昨日も今日も手堅く先人の情報に頼った次第です。
「酒場放浪記」に出る店も玉石混淆ではありますが、常連で賑わう店内だけはどこも共通しています。それだけに、七時台では混み合っている可能性もあろうと予想しました。ところが、暖簾をくぐると先客皆無というまさかの状況です。がらんとした店内に意表を突かれながらも、ともかくカウンターのやや左寄りに着席しました。
入った瞬間は安普請にも見えた店内ですが、腰を据えて眺めるとあながち悪くはありません。カウンターは一枚板で、壁、天井を含め木目に見える場所には全て天然木が使われています。中でもとりわけよいのが天井です。古材を使った梁が等間隔で並び、頭上には梁と直交、カウンターと並行する形で、何mもの櫂が二本渡されていました。

自分よりやや上の年代かと思しきTシャツ姿の店主が一人でカウンターに立ちます。番組で知ったことを有り体に話すと、以前は一本裏手の呑み屋街に店があり、番組に出たのもその頃だと教えられました。店内が新しく見えるのはそのせいで、店自体はそれなりの年季を重ねてきたわけです。
そのような年の功を感じたのが品書きです。A4横長二段組みの品書きは酒が一枚、肴が裏表合わせて一枚という構成。ただし裏面はうどん、そば、ラーメン、ご飯ものと定食になっており、肴は実質表のみです。焼物を中心にした品々は簡明直裁、しかも代表的なものは頭上の経木に、その日のおすすめはホワイトボードにも書かれるため、最初に一通り眺めれば自ずと頭に入り、あとはいちいち品書きを眺める必要がありません。このあたりは昨日の「和がや」に比べて一日の長が感じられます。肴はどれも安くて量も十分、中でもお通しで出たカジカの味噌和えは、青森のアンコウ友和えに似た肴にも箸休めにも好適な一品で、この店の実力が窺われました。

店内のTVでは、優勝まであと1勝に迫った日ハム戦を放映中。これまでの道中も野球中継といえばことごとく日ハム戦で、道内での関心の高さが窺われました。1点リードで9回表の攻撃も既に二死、その裏を抑えれば優勝決定です。このまま見届けたいのはやまやまながら、間もなく宿へ戻らなければなりません。場合によっては歩いている間に決まる可能性もありそうです。勝敗の帰趨を気にかけつつ席を立ちました。

るぱん
稚内市大黒2-2-6
0162-22-2275
1700PM-2330PM
日曜定休

男山二合
お通し
ぶり刺身
さんま
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晩秋の大地を行く 2016 - みどり湯再訪

2016-09-28 19:41:42 | 北海道
引き続き道道106号線を走り、今夜の宿となる「みどり湯」に戻ってきました。本日は約150kmという道内での平均的な走行距離でした。
風が弱まる一方、気温はさらに下がって11度となっています。エアコンを切り窓を開け放って走ったこれまでから一転、海沿いに出てからは窓を閉め切り、暖房を入れて走りました。市街に無料のキャンプ場もあるとはいえ、これからさらに冷えることを考えると、やはりキャンプは厳しいものがあります。今夜は屋内で休めることの価値がキャンプに勝りました。熱い風呂にも入って生き返った気分です。

本日の先客は九州、東海からの旅人を含め四名。おそらく皆ライダーでしょう。後からお客が来るとも思えず、今夜は自分を含め五名となりそうです。そしてこの五名が一つの基準になると聞きました。
実は、昨晩同宿したお姉さんの話によると、九時を過ぎると宿泊者一同でカラオケ大会をするのがこのライダーハウスの伝統なのだそうです。九時というのは門限ではなくそのための集合時間だったことになります。ところが昨夜は宿泊者が少なかったため開催されず、お姉さんとしてはそれを残念に思っているようでした。そのとき聞いたのが「五人」という人数です。五人以下ならやらないということであれば今夜は開催されず、五人以上ならやるということであれば逆の結果となります。
自分としては、同年代の連中同士ならともかく、昨日のお姉さんほど歳の離れた若者と肩を組んで歌うというのも小恥ずかしく、開催に至らなければその方がありがたいというのが本音です。それを見通したかのように、ここに泊まったことのある活動仲間からも、状況を見極めてから決めてはどうかという忠告が入りました。ただ、自分としては先客の状況にかかわらず今夜も世話になるつもりでした。盛大に歌うのがこのライダーハウス本来の姿なのだとすれば、それを体験するのも一興と思ったからです。果たしてどちらに転ぶでしょうか。とりあえず、今から呑み屋で一杯やってきます。
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晩秋の大地を行く 2016 - 抜海港

2016-09-28 18:10:24 | 北海道
延々50km近くを無停車で快走し抜海港に着きました。日没から一時間近くが経とうとする時刻ながら、西の空にはまだ残照があります。それを一望する岸壁から投稿しているところです。

道道106号線というと、滑走路のような一直線の道が印象的ですが、今日ある程度明るいうちに走って思ったのは、それが表面的な理解に過ぎないということです。
今日走った北方向についていうと、たしかに最初はどこまでも平坦で一直線な道が続きます。しかし、利尻島の影が近付くにつれて右手にある原野も次第に狭まり、視野が次第に狭まっていきます。やがて利尻島の右側に礼文島の影が現れ、さらに走っていよいよ利尻島が真横になろうとする頃、右にあった原野が完全に尽きます。そこからは海岸段丘に沿った起伏のある線形に変わり、さらに進むと今度は左の前方に抜海から野寒布岬へ続く明かりが見えてくるという展開です。車窓にも線形にも起承転結があり、一瞬たりとも退屈することはありませんでした。日中に逆方向へ走れば、当然全く違う眺めになるでしょう。明日の走行も楽しみです。

現在の気温は14度、結局今日は一度も20度に達しませんでした。風もあるため体感温度は数字以上に低く、日中は長袖、日が暮れてからはさらに雨合羽を羽織っています。無風ならともかく、この条件でキャンプをするのは相当厳しいでしょう。幸い昨日世話になったライダーハウスに再び泊まれることになったため、これから市街へ向かいます。
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晩秋の大地を行く 2016 - 道道106号線再び

2016-09-28 17:22:51 | 北海道
結局今日は9駅しか訪ねることができず、幌延から先の4駅を残してしまいました。それでいながら先を急ぐこともしなかったのは、あえて残した方が得策と考えたからです。結論から申しますと、今夜は稚内に連泊します。
稚内での連泊を決めた理由の一つが、昨日も走った道道106号線です。只今下沼から西へ走って再び沿岸に出ました。まずはここから日本海の夕景を眺めつつ稚内まで走ろうという算段です。しかも、今夜稚内に泊まると、明日はこの道を南下して、残った駅を幌延または雄信内から拾っていき、あとは再び日本海沿いを南下するという形で行程が流れていきます。手近なところでは幌延にもキャンプ場はあるものの、この道をあと二回走れるのは非常に大きく、早い段階から腹は決まっていた次第です。
昨日に続いて雲が多く、残照の鮮やかさについては望むべくもありません。しかし、左を向けば残照が、前の方を向けば利尻富士の裾野があって、右を向けば広大な原野が広がる眺めは最高です。昨日より時間帯も早いため、最後まで車窓を楽しむことができそうです。
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晩秋の大地を行く 2016 - パンケ沼

2016-09-28 17:05:57 | 北海道
同じく駅の案内で見たパンケ沼を訪ねます。沼を中心に湿地帯が広がるところは、花見のときに訪ねた津軽の平滝沼と同様ですが、こちらは北海道だけにとにかく広大です。駐車場の案内板に従いまっすぐ歩くと、夕日が立見台の真正面に沈もうとするところでした。曇りがちだった上空がいつの間にやら晴れた一方で、低い空にはまだ厚い雲が出ており、その雲に間もなく隠れようかとする状況です。結局最後まで晴れそうで晴れない一日ではありましたが、仮に雲一つない快晴だったとすればただ眩しいだけだったでしょう。晴れるべき状況では晴れ、雲があった方がよい状況で雲が出たという点で、見事なまでに噛み合った今日の空模様でした。
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晩秋の大地を行く 2016 - 名山台

2016-09-28 16:39:14 | 北海道
下沼駅の観光案内を見て知ったのは、駅から歩ける距離に利尻富士が見える展望台があるということです。ツーリングマップルRをよくよく見ると、先ほど通った国道沿いの駐車公園が展望台になっているようです。来た道を引き返し、その名山台にやってきました。
駐車場からそれほど高くはない階段を上がって振り返ると、眼下に広大な牧草地が広がっており、左にある大きな沼が夕日を映して、右の彼方に利尻富士が見えました。何分雲が多いため、裾野しか見分けられないのが惜しまれますが、広い空に巨大な雲が無数に浮かんだ光景も悪くはありません。まさに道北ならではの大眺望です。
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晩秋の大地を行く 2016 - 下沼駅

2016-09-28 16:05:03 | 北海道
思ったほどには回復しない本日の天候ですが、要所で晴れてくれるのは助かります。西向きの下沼駅に着いたところで再び日が射してきました。
国道とは防雪林と線路を挟んだ反対側の立地も、ひび割れた塗装が痛々しい貨車駅舎もすっかり見慣れた光景となってきました。駅前には牧草地が広がっていて、農家が何軒か散らばってはいるものの、その農家の人々が利用することは基本的になさそうです。
このようにいうといわゆる秘境駅のようですが、駅舎の正面とホーム側、さらには駅名標の前に花壇があります。牧場、農家の多い土地柄にちなんで、駅舎の正面には牛の絵をあしらった扁額が掲げられ、さらにはカボチャの置物が鎮座。待合室には箒、ちりとり、ブラシにじょうろなど一通りの用具が整然と並んでおり、塵一つなく掃き清められているのはもちろんです。木製の長いベンチには手製の座布団が並べられて、中央には小学校のお下がりであろう小さな机があって、そこに駅ノートが置かれていました。背後には鉄道華やかなりし頃、利尻富士を背景にしてこの駅を俯瞰した写真の額が飾られ、さらには周辺の観光案内、青春18きっぷの古いポスターが掲げられ、季節外れのクリスマスの装飾もあります。一見忘れ去られたかのような駅が続く沿線ですが、どこへ行っても地元の人々により大切にされているのは喜ばしいことです。
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晩秋の大地を行く 2016 - 豊富駅

2016-09-28 15:31:59 | 北海道
郵便局があればその時点で市街、Aコープがあればさらに大きな市街という沿線を訪ね歩くと、セイコーマートのある町が都会のように思えてきます。続いて訪ねるのは豊富駅です。
駅舎は石狩月形の駅舎を一回り大きくしたような出で立ちをしており、屋根から二本突き出た煙突が北海道ならではです。駅名の行灯を掲げた大きな前室は特急停車駅にふさわしいものがあります。
回復する一方かに見えた天候は足踏みしており、兜沼、徳満とこの駅では曇ってしまいました。しかし、いずれの駅でも晴れれば逆光になる時間帯であり、中でもここでは全く撮影にならないところでした。結果としてはこれでよかったのかもしれません。
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晩秋の大地を行く 2016 - 徳満駅

2016-09-28 15:05:33 | 北海道
宗谷本線というと40号線と並行しているように思われがちですが、そのような区間は意外なほど少なく、昨日も佐久から先の区間の大部分は道道をたどりました。駅の入口が40号線に直結している駅となるとさらに少なく、芦川なき今は徳満が南稚内以来の駅となります。
その徳満駅ですが、先代駅舎を火災で焼失し、今はスーパーハウスの待合室に成り下がっています。しかし、正面に掲げられた扁額は先代駅舎から受け継いだものと思われ、入口のドアの脇にはご丁寧にも建物財産標まで取り付けられています。窓にはレースのカーテン、ベンチには座布団があって、片隅には箒とちりとりが。たとえ安普請でも、大切にされていることには変わりがないようです。
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晩秋の大地を行く 2016 - 芦川駅

2016-09-28 14:41:25 | 北海道
存続問題が表面化する以前から、宗谷本線の駅は櫛の歯が欠けるように次々廃止されていきました。その中には跡形もなく消え失せたものも多々ありますが、一昨日訪ねた智東とともに明確な痕跡が残っているのが芦川駅です。
40号線から折れてまっすぐ進み、公民館と小さな鳥居を過ぎて突き当たった場所がかつての駅です。いわゆる朝礼台のホームは撤去されてしまえば影も形もなくなるのに対し、かつては交換可能な駅だったことでこのような立地となり、今なお痕跡を見ることができるわけです。
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晩秋の大地を行く 2016 - サロベツ館

2016-09-28 14:26:45 | 北海道
農業倉庫と郵便局のある小さな市街は勇知も兜沼も同じですが、勇知にあったAコープとホクレンがこちらにはなく、さらには廃屋や傾いだ建物も目立つなど、ややうらぶれた雰囲気です。しかしこちらにしかないものもあります。サロベツ館と名付けられた立派な建物です。
窓回りに凝った装飾を施し、ハーフティンバーのファサードに紋章をあしらった平屋の洋館を手前に、入母屋総二階の和風建築を右奥に置いて棟続きにした建物は、厳しい風雪にさらされながら痛んだ様子も傾いだ様子もなく矍鑠としています。土日に限り郷土資料館として開放されるとのことではありますが、外観だけでも一見の価値がある名建築です。
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晩秋の大地を行く 2016 - 兜沼駅

2016-09-28 13:53:01 | 北海道
続いては兜沼駅を訪ねます。JR初期に改築された駅舎は一見すると安普請で無味乾燥ながらも、玄関のある右側を高く、左側を低くした片流れの屋根の両端を急角度で落とし込み、さらに玄関の直上の部分を左右対称に張り出させることにより、マンサード屋根のようなファサードを作り出すという凝った造りになっています。駅前には花壇こそないものの、ここでもベンチには手製の座布団が。ホームの向こうには駅名の由来となった沼も見え、こちらも雰囲気は上々です。
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晩秋の大地を行く 2016 - 勇知駅

2016-09-28 13:18:37 | 北海道
続いて訪ねるのは勇知駅です。改装された貨車駅舎、駅前の農業倉庫、郵便局のあるささやかな市街という光景は、道中何度も見てきました。しかしこの駅で特筆すべきは、駅舎の脇に色鮮やかな花壇と鉢植えが並んでいることです。鉢植えは駅舎の正面と裏側、さらには駅名標の前にもあります。今日はまだよいとしても、風が強い日にはこの鉢植えをどこかに避難させるのでしょう。駅舎内のベンチには座布団に加えて「ゆうち」と刺繍した背もたれのカバーが掛けられています。特急停車駅以外は今や一日三往復の普通列車が発着するだけとなり、路線もろとも存続問題に直面する中、この駅が大切に守られているという事実には感銘を受けました。
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晩秋の大地を行く 2016 - 抜海駅

2016-09-28 12:49:31 | 北海道
再び宗谷本線の駅を巡ります。立ち寄るのは南稚内の隣の抜海駅です。
古い木造駅舎が残るのは昨日訪ねた天塩中川、雄信内の両駅と同様ですが、こちらの駅舎で惜しまれるのは、正面が安っぽい建材で改修されてしまっていることです。この駅舎のよさはむしろホーム側にあります。庇の下が完全に囲われて前室となっているのです。最果ての厳しい冬を物語る無骨な造りは好ましいものがあります。
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晩秋の大地を行く 2016 - 寒風

2016-09-28 11:58:17 | 北海道
稚内に午前いっぱい滞在したところでようやく移動開始です。現在の気温は16.5度、昨日に続き風が吹いています。しかし特筆すべきは風の強さよりも冷たさです。日が射せば暑くなるかと思いきやそうでもなく、結局長袖シャツに着替えました。やはり昨夜の雨で空気が変わったのでしょう。都内では熱中症に注意などと呼びかけられている中、まさに別世界の寒風です。
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