日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 22:23:01 | 居酒屋
本日の一軒目は中洲の人形小路へ繰り出しました。なぜ人形小路かといえば、それはもちろん古い呑み屋街の情緒に浸りたかったからで、長旅の最後の夜に一人しみじみ盃を傾けるならなおさらです。当てにしていた「一富」が臨時休業という誤算に見舞われても、もう一つ備えがあるため慌てる必要はありません。同じく教祖おすすめの「浅草」へ飛び込みます。
斜めの玄関を入ると8席ばかりの黒塗りカウンターが一本延び、右手には小上がりが三つほど、二階には座敷もあるという店内は、広々しているわけではないものの、だからといって狭苦しいわけでもなく、むしろ長屋の情緒がにじみ出ています。年季は入りながらも店内は明るく清潔、カウンター背後の食器棚には気のきいた器が整然と並べられ、その上の黒板には流れるような文字で品書きがしたためられて、雰囲気は居酒屋というより明らかに割烹寄りです。だからといって背筋を正すほどのかしこまった店でもなく、居酒屋使いもできる大衆割烹と表現するのがよさそうで、自分にとっては願ったり叶ったりです。
南九州から北部九州へ戻り、本日いただくのは久方ぶりの清酒となります。瓢箪型の白磁の徳利が上品で、酢味噌から立ち上るかぼすの香りが九州ならではです。気さくで腰の低い店主夫妻の人柄もよく、最後の夜を飾るにふさわしい一軒でした。

★浅草
福岡市博多区中洲4-1-19
092-291-2040
1800PM-2330PM(LO)

酒二合
海老と茄子の揚げ出し
鰹刺し
芋茎酢味噌
あらかぶ煮
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 22:15:44 | 九州
おおむね想定内の時間で福岡に着きました。気温は20度、今夜も暑からず寒からずほどよい気候です。大都会へ来たこともあるのか、あるいは三連休の初日だからなのか、街の賑わいが半端ではありません。天文館とて地方のうらぶれた呑み屋街に比べればかなりの賑わいだったとはいえ、福岡の賑やかさはそれをも上回っていました。それとともに気付くのは、熊本以北で言葉が全く変わったということです。関東人にとっては想像もつかない独特の抑揚をもった南九州の言葉に対して、こちらで耳にするのは想像する通りの「九州弁」です。300kmも移動すれば言葉も文化も変わるのは当たり前なのですが、昨日まで鹿児島にいたのが嘘のように思える唐突さを感じます。鹿児島に五日間腰を据え、それから一日半で一気に移動してきたのがその理由なのかもしれません。
図らずも一夜限りとなってしまった北部九州ですが、鹿児島と同様博多の夜は長く、その気になれば屋台が閉まる三時頃まで呑み歩くことも可能です。明日に備えてほどほどで切り上げるか、最後の夜を存分に満喫するかは腹具合と相談して決めたいと思います。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 20:01:09 | 九州
風呂から上がったところで若干の予定変更があります。本日は佐賀を飛ばして福岡へ直行します。理由はただ佐賀へ行くには時間的に厳しくなったというだけのことです。温泉をあきらめれば問題ないということは分かっていました。ただ、熊本へ来て温泉に入らないという選択は自分にとってあり得ないものだったため、こればかりは仕方がないと納得しています。
自分にとって佐賀へ行くとは駅前の酒屋へ立ち寄ることにほぼ集約され、それなら温泉を少し早めに上がって高速道を全力で飛ばせば間に合いはしたのです。しかし、閉店間際に飛び込んで酒を買い、その足で福岡へ直行してしまっては、こちらもあまりにおざなりといわざるを得ません。わざわざマイカーで九州へ来たからには、明るいうちに佐賀の道を走り、佐賀とはこんなところかと体感した方がよかろうと思い至りました。佐賀までの移動時間は完全なロスタイムになるとはいえ、熊本から出るよりはかなり短縮できます。明日の朝なるべく早めに出発して、できれば午前中で切り上げて北九州まで移動します。
今から出れば、福岡に着くのが九時過ぎで、投宿しても十時台には一軒目の酒場に入れるでしょう。今回はなじみの店だけを訪ねるつもりでいます。場所も営業時間も全て頭に入っているため、その時間から始めても時間的には必要にして十分です。九州最後の夜は、一人しみじみ名残の盃を傾けたいと思っています。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 19:23:01 | 温泉
熊本へ来たならMOSよりも何よりも先に立ち寄りたかった場所があります。植木の「宝田温泉」です。マイカーで二度目に九州を訪ねた一昨年に出会って感銘を受け、昨年も訪ねたこの温泉、やや温めのなめらかな源泉は当然ながら健在でした。何より賞賛に値するのは、このお湯が大きな浴槽に滔々と掛け流されるばかりか洗い場にまで使われて、200円というただ同然の入浴料だということです。九州道にも3号線にも近く、朝の五時から開いているという便利さもありがたく、多少時間が押しても立ち寄らない手はありません。もちろん近辺は温泉の宝庫ですから、探せば他にもよい温泉はあるのでしょう。しかし、年に一度の機会なら、この温泉を差し置いて他の温泉を探す必要性は感じられません。熊本へ行くことはこの温泉に寄ることだといっても過言ではない名湯です。

★宝田温泉 宝の湯
熊本市北区植木町宝田1641
096-273-5558
530AM-2200PM
入浴料200円
泉質 ナトリウム-炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)
泉温 42.6度
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 17:27:26 | MOS
市街の中心を南から北へと走り抜け、熊本まで足を運んだ大義名分となる赤看板のMOSまでたどり着きました。訪ねるのは熊本飛田バイパス店です。駅舎のような背の高い切妻屋根の建物はてらいがないように見え、三角屋根が店内では吹き抜けになっているだろうということもある程度想像できます。しかし、いざ店内に入ると、通常はレジ回りのホールだけにとどまる吹き抜けが、店舗全体にわたっていて、道路側に造られた半円形の明かり取り窓と、床から立ち上がる縦長の窓が特徴的です。ニス塗りのテーブルは年代相応にくたびれてはいるものの、最近の店舗にありがちな合板の安いテーブルにはない使い込まれた味わいをもっています。突出した特徴はないながらも、その年代の店舗の設えを随所に備えた古きよきMOSの一つです。

モスバーガー熊本飛田バイパス店
熊本市北区鶴羽田1-14-18
096-215-6880
1000AM-200AM
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 16:14:13 | 九州
小林から高速に乗り、只今松橋で下りました。午前は時折晴れ間ものぞいていた天候が、午後からはどんより曇ってしまい、初日二日目と五十歩百歩の状況で、宮崎を出てからは淡々と移動するしかありませんでしたorz
さて、結論から申しますと、残念ながら熊本は素通りということになりそうです。理由は最後の夜を福岡にしたいからというより、むしろ佐賀に寄ることを考えた上でのことです。明日は再び天候が回復すると予想されているため、今日のような無味乾燥な移動は極力抑えて実質的な活動に回したいという考えがあり、なおかつ遅くとも日没時にはフェリーの出る新門司周辺にいなければならないという制約があります。そのことからすると、明日熊本を出て佐賀に寄り、そこからさらに北九州へ移動するということになった場合、午前ばかりか午後の一部も移動にとられ、最後を飾るには少々慌ただしい一日になってしまうのです。福岡から出発できるなら事情は全く違うため、今日は多少の無理をしてでも先乗りしてしまおうと判断しました。
この後は3号線を北上して熊本市街を通過し、MOSに一軒立ち寄って、温泉で一風呂浴びたらその足で佐賀へ向かう予定です。そこまで急ぐにもかかわらず、熊本から20km以上も手前で高速を下りたのは、いわばせめてもの罪滅ぼしとでも申しましょうか。最寄りのICで下り、熊本に立ち寄ったという体裁だけ繕ってすぐ佐賀へ向かうというのでは、あまりにもおざなりになってしまいます。あえて一般道路で市街の前後を走り、熊本の雰囲気を少しでも体感したいという意図があっての行動です。その結果時間が押して佐賀と福岡へ行く時間がなくなったとしても、ただ足跡を付けるために旅をしているわけではないのですから、それはそれで仕方がないと割り切ります。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 13:40:42 | 九州
悠長にMOSなどを回るうちに、午前いっぱいどころか午後の一部まで注ぎ込んでしまいました。とはいえ、それだけの価値はある名店揃いだったので問題はありません。幸か不幸か、天候は平凡な曇り空で撮影、見物には中途半端です。これで宮崎に滞在する理由はなくなったため、熊本方面へ向かって距離を稼ぎます。
まずはえびのスカイラインを西へ進み、適当なところで高速に乗ります。適当なところというのは、どこからどこまで高速に乗るかが全くの気分次第だということです。先を急ぐなら高原から熊本まで乗り、市街の外れをかすめるように走って、申し訳程度に温泉で一風呂浴びて先を目指すことになるでしょう。ただそれではあまりに味気ないのは事実で、えびの、人吉、八代と時間の許す限り一般道で走るのも捨てがたいものがあります。そうすると熊本へ着く頃には必然的に暗くなり、そのときに浮上するのが、このまま泊まるか福岡へ行くかという選択です。
実は、過去三回マイカーで九州を訪ねた時も、最後の夜は全て同じ選択を迫られており、今回も期せずして同じ展開になってしまいました。初回と二回目は熊本で泊まり、三回目は後ろ髪を引かれながらも福岡まで足を延ばしました。仮に福岡を目指すとすると、熊本は本当に申し訳程度の滞在に終わってしまうため、それでよいと割り切れるかどうかが分かれ目になります。これが佐賀との二者択一ならば間違いなく福岡を選ぶところ、熊本との二者択一はそれなりに難しい問題です。熊本へ近づくにつれて方向性が定まってくるのではないかと思います。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 13:22:26 | MOS
宮崎で最後に立ち寄るMOSは市内最北端となる宮崎新名爪店です。マルショクの一角に入居した店舗は典型的なスーパー内のMOSとは少し違っており、テーブルも椅子もこの店独自のもので、カウンター回りをそっくり取り替えて他のチェーンのものにしてしまえば、これがMOSだったとはおそらく気付かないでしょう。つまり、色褪せた赤看板を除けば、十年一日のごとく変わらない古きよきMOSかというと必ずしもそうではありません。この店が何より秀逸なのは、思わずほほえましくなるような店内の造りです。二階建てのスーパーがMOSの区画だけ吹き抜けになり、その二階部分には様々な動物や鳥のイラストが描かれて、背丈よりはるかに高い縦長の大きな窓は、時節柄ハロウィンの飾り付けに彩られています。

モスバーガー 宮崎新名爪店
宮崎市大字新名爪字二月田1838
0985-37-1123
1000AM-2200PM
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 11:51:57 | 九州
渡りに船の山形屋ストアがあったためここで土産を買います。思えば鹿児島では昼も夜も忙しすぎて、スーパーに寄る時間など一切ありませんでした。それがここへ来て買い物などをし始めたのは、今日の天気が冴えず、特にどこを見て回ろうという気分でもないのが一つ、そして旅の終わりが近づいてきたというのが一つです。鹿児島を出てからというもの、少しずつ時間を気にしながらの活動になって行くのが、なんともいえず切ないところではあります。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 11:11:18 | MOS
少し北上して宮崎ピースタウン店を訪ねます。こちらは店舗番号176という宮崎大塚店以上の老舗で、色褪せた赤看板は宮崎大塚店と同じながら、白抜きのMマークと"MOS BURGER"のロゴを一列に並べた横長の省スペース型となっています。山形屋ストアの一角という立地からして店内の構造にもこれといった特徴はないものの、十年一日のごとく変わらない店内には、長く大事に使われたものだけがもつ味わいがあります。高い天井からは盃を裏返したような形のランプシェードが下がり、それに水玉模様の包装紙が一本巻かれて、あたかも帽子のように見えるという遊び心が秀逸です。

モスバーガー宮崎ピースタウン店
宮崎市下北方町平田903-3
0985-28-0441
900AM-200AM
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 09:56:15 | MOS
続いて訪ねるのは、宮崎の古きよきMOSの中でもとりわけ心惹かれる名店、宮崎大塚店です。店舗番号は439で、開業26年となる山形桜田店の店舗番号が446ということは、少なくともそれ以上の歴史を持つ古株ということになります。同年代の店舗のうちどれだけが今なお盛業中なのかは未知数ながら、出店1000号までのキリ番にあたる10店のうち、今も健在なのは400号店である山形桜田店と1000号店の江古田旭丘店しかないということからして、おそらく同程度の割合しか残っていないのでしょう。それほどまでに貴重な店舗だということです。
色褪せた赤看板を掲げた小さい箱形の店舗はともすれば味気なくも見えながら、道路側に沿って大きな窓を隙間なく並べた店内は思いの外開放感があり、細長い空間にこれほどの客席を詰め込むという設計の妙に感心させられます。そして何より秀逸なのが、片や「生まれた時からモスバーガー」、片や「大人になってもモスバーガー」と緑地に白抜きで書かれた、全国でもここにしかないであろう店先の行灯です。前回訪ねた二年前には、併設されていたマルショクが閉店してもぬけの殻になっており、この店も遅かれ早かれ運命をともにするのではないかと少々懸念したものですが、今回訪ねてみると跡地にはディスカウントストアが居抜きで出店していました。これでこの店もしばらくは安泰なのでしょう。その健在ぶりを見届けられただけでも、はるはる宮崎まで足を運んだ甲斐があったというものです。

モスバーガー宮崎大塚店
宮崎市大塚町京園3121
0985-53-2438
900AM-300AM
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 08:49:43 | MOS
宿の近くのMOSで朝食をいただきます。訪ねるのは宮崎橘通店で、白木の腰板とクリーム色の壁紙、それに横方向のストライプでアクセントを加えるという最近よく見かける市街地型店舗の典型です。市街中心の交差点の角地という立地ともども、鹿児島で訪ねたいづろ通のMOSに似通っています。
それより特筆すべきなのは、このMOSが県下随一の目抜き通りである橘通りと、宮崎駅からの高千穂通りとの交差点にあるということです。都内でいうなら、銀座四丁目の交差点にMOSがあるようなものだと思ってもらえばよいでしょう。これほどの超一等地にあるMOSというのはかなり貴重な存在です。

モスバーガー宮崎橘通店
宮崎市橘通東4-1-1
0985-35-7711
800AM-2400PM
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 08:14:16 | 九州
出発します。昨晩世話になったのはアパホテルで、県内でも一番地価が高いと思われる橘通の中心に建ち繁華街は至近距離、それでいながら昨日は3200円という破格の料金でした。しかしここが最安値だったわけではなく、同等かそれ以下の宿もいくつかありました。宿泊事情に関しては、九州で一番恵まれているのがこの宮崎かもしれません。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 07:53:19 | 九州
さて、本日の行動についてなのですが、結論としては本日中に福岡まで移動し、そこで九州最後の夜を過ごしたいと思っています。元々の予定では熊本、長崎、福岡と渡り歩くつもりが、鹿児島に時間を使いすぎた結果として、これらのうち一つしか選べないというのが今の状況です。それではどれを選ぶかと考えた場合、昨日述べた優先順位からして一歩譲るのが熊本で、実質的に長崎か福岡かの選択になります。この点、今しか行けない場所はどこかといわれれば当然ながら長崎です。しかし一つだけ問題があります。海を渡ってはるばる足を運んでも、夜着いて居酒屋で呑むというのがほぼ全てになってしまうということです。翌日は佐賀を通って新門司からフェリーに乗るため、遅くとも昼頃には長崎の街を出なければならず、これでは稲佐山にでも登るのがせいぜいで、それも今年の三月に行っています。結局、移動に労力を使った割には長崎の街で呑めるという以外の成果が期待できず、それなら福岡で呑んでも大差はないだろうという結論に達した次第です。
ただし、その間の行動というのが流動的になっています。本日は曇りがちという前提で一気に距離を稼ぐつもりだったところが、今のところ宮崎市街は雲が多いながらも時折青空ものぞき、高速道路で無味乾燥な移動をするのが少々もったいなく思えるような天候なのです。これならとりあえず朝食代わりにMOSを訪ねて、大淀川の河原で列車撮影などをしてから動くことになりそうで、これだけでも午前一杯を消費する可能性は十分あります。そんな調子で寄り道しつつ熊本方面へ進めば、短い秋の日はたちまち傾き、さらに熊本市街に立ち寄ってなどということになると、今日はこのまま泊まるかという気分に変わるかもしれません。熊本まで走ってしまえばそこから福岡までは100km少々で、宮崎から熊本への移動に比べればどうということはなく、加えて福岡の夜は長いため、多少遅くなっても時間にはまだ余裕があります。ただし、熊本にもよい酒場はあり、結果として熊本止まりになったとしてもそれはそれでよしとします。

それにしても、昨日は鹿児島で名残を惜しんだのと、都城の街に立ち寄った以外は、移動中心で見所の少ない一日でした。その土地の空気を満喫していては一向に先へ進まず、だからといって距離を稼ごうとすれば無味乾燥に終わってしまうという悩ましさを実感させられます。今日は昨日にもまして移動中心になるでしょう。連日の快晴とともに果てしなく続くかに思われた今回の旅にも、終わりの時が少しずつ近づいてきたようです。
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色づく秋の九州へ 八日目

2012-10-06 07:24:29 | 九州
おはようございます。昨晩はあの後店を出てから日付が変わる頃まで繁華街をくまなく歩き回ったにもかかわらず、結局呑み屋には行かずに餃子の店へ飛び込みました。そこであらかた腹が満ちて、宿に戻ったところで力尽き、余力があれば行こうと思っていたラーメン屋には、前夜に続いて行けずじまいでした。
宮崎で呑む三年ぶりの機会だったにもかかわらず、このような中途半端な選択に至った理由は、直接的にはこれはと思う酒場がなかったということです。より正確には、片手程度の目星をつけてはいたものの、それらがどれも惜しいところで決め手に欠けたとでも申しましょうか。すぐさま飛び込もうというよりは、他の店も見てからにしようという考えが頭をもたげてしまうのです。こうして繁華街を一周して戻ると、その店が既に看板だったり、あるいはまだ開いていてもあと一歩のところで迷いが出たりして、結局時間だけが過ぎていきました。そのうちに居酒屋のことは関心から去り、ラーメンか餃子という考えに変わっていた次第です。
思うに、自分にとって宮崎の居酒屋は仙台に通じるものがあります。自分にとって仙台といえば牛タンであり、なおかつ牛タンは専門店でいただくもので、その専門店は食事をする場所であって酒を呑む場所ではありません。つまり、牛タンの定食で腹が満ちてしまうため、居酒屋は最後に軽く一杯引っかけるという程度の位置づけに過ぎず、探せばよい呑み屋がいくつもあるだろうと思いながらも、仙台で腰を据えて呑んだ経験が訪問回数に比して極端に少ないという実態があります。これを宮崎に置き換えると、宮崎といえばもも焼き、もも焼きは「丸万」でいただくのが一番で、その「丸万」はもも焼きだけをいただくための場所、居酒屋はもも焼きであらかた満ちた腹を最後に満たす場所ということになり、よい居酒屋があったとしても、そこで一から呑み直す気分がなかなか起きないということなのでしょう。よい店がなかったわけではなく、意を決して飛び込めば、どれもおそらく一定以上満足できる店ではあったのです。しかしそれ以前の問題として、居酒屋で呑みたいという気分が不思議なことに昨晩だけは起きませんでした。これが今回限りのことなのか、宮崎ではいつもそうなのかについては、二度三度と足を運ばなければ判断できそうにありません。次の機会はいつになるのでしょうか…
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