期間限定の功罪

最近MOSの店先でやたら目につくのが「とびきりハンバーグサンド」の宣伝です。中でも、期間限定として前面に押し出されている「厚切りベーコン」なる品が気になります。これは別に興味があるということではなく、「期間限定」と称して消費者の目先を変える安直な手法がやけに引っかかるということです。
かつては全国一律のメニューを提供していた飲食チェーンが、限定メニューと称して大々的なキャンペーンを打つようになったのはそれほど古いことではなく、チェーンによっては一昔以上も前からそうであったと記憶しています。しかし、今しか買えないという消費者の心理をあおるこの安直な手法が横行する中でも、一線を画していたのがMOSのキャンペーンです。店先に大きなタペストリをぶら下げるのは他のチェーンと同じでも、そこで推されるのはその場しのぎの限定メニューなどではなく、モスバーガーであったり、テリヤキバーガーであったり、ホットドッグであったりと、MOSが長年売り続けてきた定番でした。滅多なことでは安売りやセット販売はしない、しかし心血注いで作った品を、自信を持って提供するという気概が、その頃のMOSにはあったものです。それがいつの間に、「お前もか」というべき現状に陥ったかと思うと、なにやら嘆かわしいことのように思えてならないのです。
折しもTV番組の「ハンバーガー総選挙」なる企画でMOSが上位を独占したとかで、MOSの公式サイトでもそのことが高々と喧伝されています。しかしそこに並んだ品といえば、モスバーガー、モスチキンにコーヒーシェイクなど、それこそ二十年来変わることなく売られてきた品ばかりで、「何年前に出た期間限定のXXバーガー」などというものは当然ながら入ってはこないのです。思うに、飲食チェーンの真髄とは、時々無性に食べたくなるという中毒性にあるといっても過言ではありません。そうだとすれば、一年後には忘れ去られる限定メニューに宣伝費を注ぎ込むよりも、心血注いだ自信作を堂々と売り込む方がはるかに大切なことだと思うのですが。
まあ、これはプロ野球の「クライマックスシリーズ」と同じで、集客のための姑息なシステムに興ざめさせられながらも、今更後戻りはできないのだろうとあきらめてはいます。要は、自分が安直なキャンペーンに乗せられなければよいのです。「とびきりハンバーグサンド」自体が嫌いなわけではなく、むしろ好きなメニューの一つなのですが、少なくともこのキャンペーンが終わるまで、注文するのは控えたいと思います。