腹ごなしを経て、三軒目は「源氏」を再訪します。正統派の大衆酒場であった中央酒場と銀次に対して、こちらの店はかなり怪しげです。戦後間もなく建ったと思しき古びた建物がそのまま残っているのは銀次と同じながら、塵一つなく磨き抜かれた銀次の建物に対して、琺瑯看板を掲げた木造平屋の建物には寄る年波がありありと感じられ、大地震に見舞われればひとたまりもなさそうに見えます。しかも特筆すべきなのは、そんな建物が横須賀中央駅のロータリーという超一等地にあることです。再開発の名の下に取り払われてもおかしくなさそうなこの建物が、今日の今日まで残ったということにまず驚かずにはいられません。
店構えに負けず劣らず店内も怪しげで、カウンターのみの薄暗い店内はかなり散らかって、お世辞にも清潔とはいえません。L字のカウンターの半分ほどは、がらくたといってもよい雑多なものどもで埋め尽くされて、実質的な収容力は十人あるかどうかといったところでしょうか。年配の店主が一人で店を差配しており、あと五年、十年すればこの店はどうなるのかと余計なことを考えてしまいます。
しかし、ただ怪しいだけならここまで年季を重ねられるはずもなく、当然ながら今回再訪することもなかったでしょう。酒は菊正宗、沢の鶴とありふれているように見えながら、たとえば菊正宗は定番の上撰ではなく特撰で、徳利は常温のまま手渡され、背後に置かれた小さな燗付け器で、自ら好みの具合に湯煎するというのが当店流です。店主自ら考案したというあんこうの肝刺しは、いわゆる「あん肝」ではなく、生の肝を塩漬けにした、いわば塩辛、酒盗の部類に属する一品で、これだけでも酒が二合は呑めます。この品を含め、黒板に達筆でしたためられた品々はどれも酒肴にはもってこいで価格も良心的。正統派の名酒場がひしめく横須賀にあって、ひときわ異彩を放つこの店に、横須賀の酒文化の奥深さが表れているようです。
★源氏
横須賀市若松町2-5
046-823-2104
1800PM-2400PM
菊正宗・沢の鶴
お通し(穴子湯引き)
あんこう肝刺し
店構えに負けず劣らず店内も怪しげで、カウンターのみの薄暗い店内はかなり散らかって、お世辞にも清潔とはいえません。L字のカウンターの半分ほどは、がらくたといってもよい雑多なものどもで埋め尽くされて、実質的な収容力は十人あるかどうかといったところでしょうか。年配の店主が一人で店を差配しており、あと五年、十年すればこの店はどうなるのかと余計なことを考えてしまいます。
しかし、ただ怪しいだけならここまで年季を重ねられるはずもなく、当然ながら今回再訪することもなかったでしょう。酒は菊正宗、沢の鶴とありふれているように見えながら、たとえば菊正宗は定番の上撰ではなく特撰で、徳利は常温のまま手渡され、背後に置かれた小さな燗付け器で、自ら好みの具合に湯煎するというのが当店流です。店主自ら考案したというあんこうの肝刺しは、いわゆる「あん肝」ではなく、生の肝を塩漬けにした、いわば塩辛、酒盗の部類に属する一品で、これだけでも酒が二合は呑めます。この品を含め、黒板に達筆でしたためられた品々はどれも酒肴にはもってこいで価格も良心的。正統派の名酒場がひしめく横須賀にあって、ひときわ異彩を放つこの店に、横須賀の酒文化の奥深さが表れているようです。
★源氏
横須賀市若松町2-5
046-823-2104
1800PM-2400PM
菊正宗・沢の鶴
お通し(穴子湯引き)
あんこう肝刺し