とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

なんとまぁ無理な訴訟を

2012-07-04 00:28:00 | 指定なし

 不安感をあおられ、献金や「献身」と称する労働をさせられたとして、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の元信者の女性(37)が3日、統一教会と国を相手取り、約4300万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。原告側は、国についても「是正措置を講じる義務があったのに放置した」と主張しているとのこと。


 


 気持ちは分からないでもないが,この訴訟はどうみても無理スジ。政教分離の原則上,国は,宗教団体や,宗教法人の教義や宗教活動自体には踏み込めない。


 


 可能なのは,宗教団体に属する個人の行動が犯罪行為に当たる場合に,その個人の犯罪行為について,その個人の処罰を求めることに限られる。宗教団体に直接介入できるのは,かつてオウム真理教に対してなされた破壊活動防止法による解散命令とか,団体規制法による観察処分くらい。


 


 これらは,内乱とか騒乱とか大量殺人とか,そういった公共の安全に関わる場合に限られている。


 


 他人に詐欺を働くといった財産犯罪は,団体規制の対象に含まれないし,個人が奴隷的拘束を受けるというのも,対象には含まれていない。その背景には,財産犯そのものは,公共の安全には直接関係しないし,個人の拘束というのも,未成年者ならともかく,大人が自らの判断で加入した団体の拘束を受けることは,何らかの犯罪にでも当たらない限り国家が介入することではなく,その場合でも,刑法犯として介入すれば足りるというような立法判断があったものと思われる。


 


 そうすると,この訴訟で,上記のような既存の法律による規制権限不行使による国家賠償を求めるのは,およそ不可能なことと思える。


 


 そうすると,後は立法不作為責任ということになろうけれども,これは,規制権限不行使よりも,さらにハードルが高いことになる。


 


 立法するかしないかは,基本的に政治的判断,あるいは行政的判断であり,司法において判断すべきことではないというのが,司法の基本的姿勢であろう。


 


 まあ,今は,司法万能の時代でもあるから,裁判所がどのような判断を下すかは,予断を許さないところがあろうけれども,この訴訟が,相当に無理な訴訟というのは,仕方のないことと思える。


 



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