つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

上海にて-「1949年以来的上海」シンポジウムを終えて

2012-12-19 01:08:02 | 日記
2日間の上海社会科学院歴史研究所主催の「1949年以来的上海」国際シンポジウムが終わった。
たいへん楽しく充実した学会だった。
私は以前、長く上海史を専門にしていたので歴史研究所をはじめ多くの上海史研究者の友人がいるが、この数年は研究の中心を農村に移したので会う機会が減っていた。今回は久しぶりで歴史研究所を訪れて、以前の研究所の建物が付属のホテル兼院生宿舎になっていることに驚き、新しい弁公楼でのシンポジウムに臨んだ。
日中関係緊張の中で、とにかく直接交流を、と少し気負ったものもあったが、旧知の研究者たちの顔を見るとすぐにうち解けた。会議の場で「国家間の関係がどうであるかに関わらず、我々は研究者どおしの交流を発展させよう」と表明したことには一定の意義があったと思うが、そんなことは当然という雰囲気で、古くからの友人たちとふだんは飲まない白酒(パイチュウ)まで飲んで、酔ってしまった。
シンポでの報告には、これまで触れられることの少なかった反右派闘争や大飢饉など人民共和国史の影の部分を史料に基づいて明らかにするものがあり、歴史の実像を解明する熱意を感じた。一党独裁下でのタブーは、このような研究者の会議ではもはや感じられない。上海の研究者は、人民共和国になって中央のコントロールの下で多元的な上海社会の活力がそがれてしまったと考えており、そのことを正面から論じているのは、現在の中国社会にそれを取り戻さなくてはという思いがあってのことだろう。
また、日本のODAが上海の近代化に如何に貢献したかを数字で示す研究は、現在の日中関係に静かに反省を促している。
しっかりした力量を感じさせる若い研究者の報告もたくさんあって、上海史研究の充実ぶりがよくわかる、楽しい二日間だった。

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