つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

日韓・日中関係と慰安婦問題

2012-08-16 10:59:15 | 日記
終戦の日の8月15日前後に、日中関係・日韓関係が緊張するという憂慮すべき事態が起きている。日中関係については、尖閣諸島に香港の活動家が上陸して日本官憲がこれを逮捕した。日韓関係に関しては、李明博韓国大統領が、「天皇は訪韓するなら、植民地支配に真摯に謝罪する必要がある」と言ったという。
韓国大統領の発言の背景には、いわゆる慰安婦問題に関して、日本政府が誠意ある対応をしないことに対するいら立ちがあるとも報道されている。
「慰安婦」をめぐる当時の状況については、1990年代に飛躍的に研究が進み、それまでわかっていなかった史実がたくさん明らかになった。
植民地朝鮮や中国など日本軍占領地出身の「慰安婦」の多くは本人の意に反して「慰安婦」とされた女性(ないしは少女)で、その性的サービスの実態は自由な商行為にはほど遠い強制や監禁の下でのことがほとんどで、戦後生き残った女性たちも、多くは心身の後遺症や社会的偏見の中で辛い日を送ってきた。(日本人慰安婦には、相対的に、本人が承知して性的サービスの商行為を行っていた人が多い。しかし「慰安婦」の圧倒的多数は他のアジア地域の出身者である)こうした状況を明らかにできるようになった背景には、冷戦の終了による国際関係の変化と女性の人権がより重視されるようになった社会の変化がある。
このような新たに明らかになった史実は、韓国や中国をはじめとする国外では広く知られており、それまで「民族の恥」だとさげすまれていた元「慰安婦」のお婆さん達を、日本の植民地支配や侵略の犠牲者として再認識し、尊厳を回復する試みがなされている。
しかし大きな問題だと思われることは、日本社会ではこうした史実があまり知られていないことだ。そのため、当時の日本政府・軍の責任に対する認識が乏しく、現在にいたる日本政府の対応の不充分さが韓国などから批判され、不信感を持たれるに至っている。
日本において「慰安婦」(実態に鑑みるなら日本軍性奴隷と呼ぶのが適当だろう)問題についての認識が不十分なことには、我々歴史研究者の責任も大きい。社会的な、あるいは国際的な今日の対応を議論する前提として、明らかにされた史実を社会に発信することは(それが日本軍にとって不名誉な部分を含むとしても)、歴史家の社会的責任である。対アジア関係が前向きに進展するためには、とりわけアジア近現代史の専門家は、明らかにされた史実を積極的に伝えていく必要があろう。
(小浜正子「中国史の歴史認識とジェンダー」『歴史評論』748号、2012年8月号、にはここで述べた内容に関連した議論があります)

戦後史の正体

2012-08-02 09:00:52 | 日記
上海からの帰りの飛行機で、刊行されたばかりの孫崎享著『戦後史の正体1945-2012』を読み始め、深夜までかかって一気に読了。戦後の日本政治が、いかに強いアメリカの支配下にあったかを具体的に明らかにする。私も知らなかった事実がたくさん述べられていて、これまで思っていた以上に、日本が米国の意向に逆らえないような仕掛けがたくさん作られていたことに驚く。
孫崎さんの本を読むようになったのは、中国研究者として、日本にとって中国の存在が重要になるにつれて逆に世間の反中感情が強くなっていくのは、どう考えても意図的なネガティブキャンペーンがなされているとしか思えない、と感じていたからだ。2番と3番の日中が反目している方が1番のアメリカにとって安心なのでそのように工作してきた、という著者の意見は説得的だ(これは前著『日本の国境問題』『不愉快な現実』に詳しい)。アメリカの頭越しに日中国交回復を実現した田中角栄がロッキード事件でつぶされ、いままた親中の小沢一郎が叩かれているのも、そもそも検察という組織がアメリカに奉仕するために作られたことを知ればよくわかる、という。
著者は元外務省国際情報局長。「高校生にも読める」を唄っているだけあって、内容は濃いがとても読みやすい。この本の内容については、いろいろな意見が出るだろうが、まずはすべての日本人必読の書だろう。