かーちゃんはつらいよ

施設入所した18歳そうちゃん(自閉症、最重度知的障害、強度行動障害、てんかん)のかーちゃんが書く雑記。

歯学部付属病院

2012年11月22日 21時03分10秒 | みゆみゆとの生活
歯学部付属病院に行きました。
そうちゃんが、朝、家で怪我をして。

 あああー
 大変だった!!
 (とりあえず叫ばせてくれぃ!)

朝、出掛けのバタバタしている時に、ソファに立ち上がっていたそうちゃん。
大きな音がして、振り返った時には、床に転がっていました。
慌てて立ち上がり、
「いたかったよぉー」と私の方に飛びついてきたので、どうしたの?と見てみると、口の中から血が。

よく見ようとしたけど、私にティッシュで顔を拭かれるのが嫌だったらしく、すぐに玄関へ向かって行ったので、そのまま一緒に登校しました。
鼻血が少し出ていたことの方が気になって、あとは唇が少し切れたくらいだろうと思っていました。

ところが、登校途中、拭いても拭いてもみるみる前歯が血に染まり…
もしや前歯の歯ぐき?と思い、見てみると。
あちゃー。歯の付け根が半分めくれて見えてる。

そうちゃんがいくら何事もなかったかのように笑顔でも、さすがに学校に置いて仕事には行けず、まずは保健室の先生に相談。

「歯医者さんに行っておいた方がよさそうですね。」ということになり、慌てて私は職場に電話。
急なお休みは、どんな理由でも申し訳なく思います。
職場の方にごめんなさいを言って、仕事を代わってもらいました。

さて、歯医者さんといっても、どこへ行く。
近所の歯医者さんは、行ったことありません。
木曜午前にやっていて、そうちゃんが暴れても怒らない、若くて仕事の早い先生がいる歯医者、ないですか??
と学校の先生方に聞いたりしました。

まずは、私が以前行ったことのある歯医者さんに電話。
「予約が一杯で急患はその合間に入れるので、どのくらい待たせることになるかわからない」と言われ、そこはやめる。
そうちゃんにとって、「初めての狭いところで、どのくらい待つかわからない」ことは試練が大きすぎます。

やはり、そうちゃんの障害特性をわかってくれるところでないと。
いつもそうちゃんのかかってる、こども病院に電話。
今日はあいにく歯科の診察がないとのことでしたが、大学病院を紹介してくれました。

車で迷いながら高速を30分とばしてやっとたどり着いた、大学病院。
それにしても、病院のロビーってなんて静かなんだ;
不安一杯で、叫びつづけるそうちゃんの声は、きれいな待合ロビーに響き渡り。
この中には体調の悪い人もいることだろうと思うと、ほんとにいたたまれなかった。
トイレにこもってみたり、そうちゃんにいろいろ言い聞かせたりしながら、必死で受付に呼ばれるのを待ちました。

何かご褒美がないと頑張れないだろうと、「終わったらジュースね」を約束したら、そこから大声で「コーラのむよぉ!」が止まらず…。 
歯医者で「コーラ」はやめてほしかった; かなりしつけが悪い感じに見えるから…。

カルテができて総合受付で説明を聞き、小児科・障害者歯科外来へ。
ここにきて、いよいよ怖くなってきたらしいそうちゃんが、もうほとんどパニック状態。
大声で寝転んで叫びだしてしまいました。
私も必死で、少しでも人気のないところを探して物陰でそうちゃんを抱え込みました。
そのうちに、なんだか絶望的な気持ちになってきました。

そこへ通り掛かった、救世主。
「お、どうしたんだ。はじめて来たのか?泣かなくても大丈夫だよ。おじちゃん抱っこしてやろう。」
そうちゃん、びっくりした様子ですぐに泣き止んで、その白衣の先生に抱かれました。
私が簡単に経緯を話すと、「ああ、さっき連絡あった子か。」と、そうちゃんを抱いたまま診察室へ消えていき、すぐに他の先生をつかまえて、診察を始められるようにしてくれたのでした。

ホッとして、涙が出ました。
人は、必死で頑張ってるときに、人から優しい言葉をかけられると、涙の堰が切れてあふれます。
張り詰めていた時ほど、それは顕著です。

診察・レントゲンの結果、先生方が何人か集まって話し合いをされました。

「(前歯の)ぐらつきはそれほどでもないけど、できれば固定したほうがいい。」
「それより、こっちの傷はナートしないと。外科呼んで。」

えーっ!
心の中で絶叫。
ナート、とは、「縫合」という意味です。
そうちゃんが、口の中を縫うだなんて。大変だー。

先生の説明によると、前歯の上の歯茎がめくれ、唇との間のところがかなり深く切れているらしく、縫ったほうが早く治る、とのことでした。
表皮だけでなく、真皮まで切れていると。

バタバタと外科の先生が呼び出され、スタッフがかき集められました。
大学病院なので、歯医者さんや歯医者さんの卵、それから歯科衛生士さんや実習生さんが、大量にいます。
どの人が何の仕事からわからないけど、ともかくそうちゃんはベッドに寝かされて大人に囲まれました。

手係1名、足係1名(馬乗り)、顔係1名、唇係1名、肩係2名、器械出し1名、外回り2名、そして口腔外科医1名。
計10名!プラス、やじ馬、いや、勉強のために覗き込む先生方。
特に肩を抑える係の人と顔の係が大変で、手がプルプル震えだし、途中で交代したりしました。
その人たちも、ほとんどみんな歯医者さんのようで、必死にやってくださる姿をほんとにありがたく思いました。

処置にかかった時間は40分近く。
その間、そうちゃんは動こうとし続け、「やだよー!!」と叫び続けました。
なぜか時々「ミニストップ!」と言ってたのが謎だった。
やめて=ストップ、となんて深い意味はないとは思うけど。
私には「ミニストップ」と聞こえたけど、先生方には「水飲みたい」と聞こえたらしく、「そうだよねー。頑張ってるもんね。お水飲みたいね。」と声を掛けて下さいました。
「いえ、先生、『ミニストップ』って言ってます」と訂正したりはしない。大人だから

ともかくみんな、汗だく。
そうちゃんが動いてしまうので、声を掛けあってチームプレーでやってくれました。
さすが歯学部付属大学病院。
プロフェッショナルを随所に感じました。

思ったより傷が深く、10針以上は縫ったようです。
「しばらくは食べ物や水がしみるかもしれない。
しょうゆなど塩分の濃い物は嫌がると思う。やわらかい食べ物にしてあげて下さい。」と言われたけど…。
帰りにそうちゃんは、「カッパずし行きたい!」と言い続けまして。
頑張ったご褒美にカッパずしに行き、
「おしょうゆかけてください!」「まぐろたべたいです!」
というそうちゃんの要求に従ってみたら、
驚くほどの勢いで、バクバク食べました。
さすがそうちゃん。
ま、食べられるならいいか、ということで。

帰宅後、そのまま午後から学校に行かせ、いつも通りの木曜日メニューをこなさせました。
もちろん、私は仕事に行きました。

「こんな日くらい、休ませて家でゆっくり過ごせばいいのに」とおっしゃる方は、自閉症がわかっていません。
そうちゃんは、「予定通り、いつも通りに過ごす」ことが一番安定し、身体も安静にできます。
もしもこれで私が仕事を休み、そうちゃんと3時に家に帰ってきていたら、たぶん夕方には大パニックだったことでしょう。
もちろん、それでも家にいなければいけない病気もあるとは思うけど。
今回の場合は口だけで、全身状態は至って健康だからね。

はああー、それにしても疲れた。
なんて一日なんだ!

明日は早起きしてお弁当を作り、学校公開。
今日は早く寝て、明日に備えようっと。

そうちゃん、明日、口が腫れてるんだろな。かわいそうに。
しばらくは、歯医者さんに消毒などで通うことになりそうです。
がんばろ。