雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ガンバレ なでしこジャパン

2023-08-05 18:35:19 | 日々これ好日

     『 ガンバレ なでしこジャパン 』

    女子サッカー ワールドカップ
    決勝トーナメント 第一回戦
    対ノルウェー戦は 目下 2-1でリード
    残り時間は あと15分ほど
    ガンバレ ガンバレ なでしこジャパン!!

                  ☆☆☆ 

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雪の中の御葬送 ・ 望月の宴 ( 86 )

2023-08-05 08:01:49 | 望月の宴 ③

     『 雪の中の御葬送 ・ 望月の宴 ( 86 ) 』


鳥辺野(トリベノ)の南方、二町ほど離れて、霊屋(タマヤ・正式に埋葬する前に亡骸を納めておく所。)というものを造って、築地(ツイジ・土塀)などを築いて、ここに御亡骸をお納めなさろうと進められる。
万事、重々しくご立派な身分でいらっしゃるので、御葬送の事も自ずから格別の御盛儀にとお取り決めになった。
こうした事を、幼い宮たちは何ともお分かりにならぬ御有様なども、人々はたいそう悲しい気持ちで見守られている。亡き皇后宮(定子)は、今年二十五歳におなりであったのだ。

御葬送の夜になったので、黄金造りの御糸毛の御車で、御亡骸をお運び申し上げる。
帥殿(伊周。定子の兄。)をはじめ、ご縁故の殿方は皆お供なさる。
今宵は、折しも雪がたいそう降って、御霊屋もみな雪に埋もれていた。ご到着になって、雪をお払いになり、屋内の御装飾など必要な物を設置なさる。そして、御車の轅(ナガエ・牛を繋ぐための二本の棒。)を下ろさせて、そのまま安置申し上げた。
今はこれで退出なさろうと殿方や明順、道順(アキノブ、ミチノブ・定子の母方の叔父たち。)などという人々も、激しく泣きくずれる。

折しも雪は、しばらくの間に御霊屋の在処も見えぬほどに積もるので、
帥殿は、
 『 誰もみな 消えのこるべき 身ならねど ゆき隠れぬる 君ぞ悲しき 』
 ( 誰も皆 消えることなくこの世に留まれる 身ではないが このように雪に隠れてしまう ( あの世に行ってしまう )  あなたのことが悲しい )
中納言(定子の弟、隆家)は、
 『 白雪の 降りつむ野辺は 跡絶えて いづくをはかと 君をたづねむ 』
 ( 白雪が 降り積もった野辺は 足跡も消えてしまって どこを目当てにして あなたを探せばよいのか )
僧都の君(定子の弟、隆円)は、
 『 故里に ゆきも帰らで 君ともに 同じ野辺にて やがて消えなむ 』
 ( 私はもう故里へ 行くことも帰ることもしないで あなたと共に この同じ野辺で すぐに消えてしまいたい )
などとおっしゃるのも、たいそう悲しい。
今宵のことは、絵に描かせて人にも見せたいほどに、しみじみと哀れな情景であった。

帝におかれては、御葬送は今宵なのだと思われて、よもすがらお寝みにもならずお明かしになり、御袖を濡らして凍る御涙が御袖に満ちる思いで、通例の火葬でお納めであれば、立ち上る煙で霞む野辺を眺めることも出来ましょうに、どうすることも出来ないと思われて、
 『 野辺までに 心ばかりは 通へども わが行幸(ミユキ)とも 知らずやあるらむ 』
 ( 鳥辺野まで 私の心は宮(定子)を偲んで 送って行くが この深い雪の中の行幸とは 宮はお気づきにならないのだろう )
などとお思いになって、夜をお明かしになった。

暁に人々は皆お帰りになって、宮(定子)の御邸では、お仕えしている人々がお待ちしてお迎えになられたが、その打ちひしがれた様子は、いかにも無理からぬことと思われた。
御霊屋は、雪がなお盛んに降っていて、後ろを振り返り振り返りしては、こちらへ帰っていらっしゃった人々のお心の内は、察するに余りあるほど悲しく思われる。

     ☆   ☆   ☆


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