ハーゼンクレーヴァー「感傷的な娘」
今日は時間がありますので、絵画の表現について書きます。若い頃、ロマン派の絵画展を観ました。ひととおり観た後に、どうしても気になる作品がありました。それがこの作品です。絵描きなら一度は夢見る「少女のポーズ」が、そこにあるのです。これに近いイメージで絵を描きたいと思ったことが、私にも一時期ありました。月を眺めるなら窓越しに、斜め後ろのポーズで物思いにふける少女。それは映画のワンシーンのように共通している場面です。だからこそ、絵にしたときに通俗的になるのです。絵描きの危うさがいつもそこにあるのです。何をどのように描いてもいいのですが、描いてる本人の意識がそれを拒否するのです。何故だと思います。たしかに一枚の絵と、時間の経過の中で表現する映画とは自ずと違うのですが、それだけではないのです。造形上の課題がそこにはあるのです。難しくはありません、この絵を見ればわかるのです。月を見ている娘の後ろに、あなたが居ることが、絵画の目的ではないのです。若き頃、何故か私はこの絵の写真を買いました。そして今も、大切に持っている。