「第2回宮本三郎記念デッサン大賞展」を観る
金沢市には、美術館や画廊が多く、どこかで必ず展覧会をしている。わたしには、歩いて楽しい街のひとつですし、何より「青春期」を過ごした場所でもあり、想い出も多い。
比べて、小松市にはそういった施設が少ない。想い出と言えば、高校生の頃に「掟」を破って映画館に行ってたことぐらいです、その映画館も今はありません。今年の7月、わたしたちの新店舗を小松駅前に設置してから、できるだけ駅周辺をコンパス軸に歩いてみたのです。歩いても歩いても、わたしの好奇心が満たされることはありません。街には文化施設だけでなく、人々がそれとなく時間を過ごせるような場が必要です。小松駅周辺には、お寺が多く、古い街並みも残っています。しかしながら、街を歩いて楽しくならないのは、道のり(見た目)の変化にやや欠けることにあるのかも知れません。
どこでもそうですが、小松市役所や地域商店街も様々な取り組みをしています。週末のイベントにも、そう言った姿が見られます。何らかの「成果」があるのかもしれませんが、わたしにはわかりません。
「第2回宮本三郎記念デッサン大賞展」を観に行きました、市役所の近くに宮本三郎美術館があります。この辺りは、公園を中心に学校や図書館などがあり、小松市の文教地域になっています。宮本三郎さんの絵を集めた美術館ですから、規模としてはあまり大きくありません。戦後、石川県の多くの画家たちは、日展系(光風会・一水会)と在野系(二科会・二紀会)の4団体のいずれかに所属していました。宮本三郎さんは、二紀会の創設メンバーでした。画壇の重鎮というだけでなく、その描写力と華麗な色彩は比べようがないほどに群を抜いていたように思います。
絵描きにとって、「デッサン」という言葉には、明確な響きときわめて不明瞭な領域の、両面があります。美術系の大学に入る、あるいは入ってからの課題が明確なそれであり、イメージを作品にするためのスケッチやメモ(構想)までを指す(不明瞭な)場合もあります。いずれにしても、古今東西のすべての完成された作品には、そういった「デッサン力」の差違が少なからず見られます。多くの場合、優れた作品には、画家の要素としての「デッサン力」の優位性が確認できるのです。優れた作品が、誰にも好かれるとは限りません。この「デッサン大賞展」の審査員、横尾忠則さんの絵も山本容子さんの絵もわたしは好きです。わたしの古書店「月映書房」には、この二人の本が多い、文章もいいのです。しかしながらこの二人、「デッサン力」に優れているかというと・・・これは本人も認めていると思いますよ。わたしは、この会場では柴田高志さんの作品が最も好きでした。みなさんも観に来てください、歩いて楽しい街にするのは・・・わたしたちの心持ち次第ですから。