先日、金沢美術工芸大・卒業制作展を訪れました。
若い人の試みや感覚に接するのは、心地よいことです。想った以上に軽やかな雰囲気が、会場に漂っています。個人的な関心分野のアニメーション(映像表現)にしても、デザインにしても『軽やかさ」がここ数年の特徴ですね。
油画の卒業生で、映像表現していたのには驚きました。それがなかなかいいのです、ここ(油)は昔から自由な雰囲気がありましたからね。
彫金で目を惹いたのが、長尾佳奈さんの繊細で美しいな装飾です。時間を超えて増殖する宇宙を感じさせます。
視覚デザインで目を惹いたのが、坂川南さんの写真作品『誰が姿』です。パソコン処理をしたのかと思ったのですが、ほとんどが実写であることを知り、その完璧な仕事に驚いたのです。

それから、芸術学の五十嵐美里さんの『ドン・キホーテと死んだ騾馬についての一考察』、オノレ・ドーミエについて書かれた論文です。フランスの風刺画家として活躍していたオノレ・ドーミエの心情と、よく知られた物語「ドン・キホーテ」の一場面(イメージ)を重ね合わせて論じています。放置されて干涸らびた騾馬の骸には訳があるのです、山中に住む騎士の悲しい物語が隠されています。「ドン・キホーテ」の底流に流れる人間に悲哀にしても、オノレ・ドーミエの眼差しの先にある現実にしても、時代を超えて変わらないのです。