随分 以前に
講座を受けてくれた人が
親の介護をするようになっていました。
その人は二人姉妹の次女で
結婚をしていて子供もいます。
お父さんが癌で亡くなった数年後に
孤独になった お母さんが認知症に成り始めてしまいました。
今では認知症の
お母さんの介護を自宅でしています。
施設には入れずに自分で世話をしたいと
彼女は一生懸命に努力をして頑張っていました。
それが当然とでも言うように お母さんを看ていたのです。
その お母さんが
最近めっきりと元気が無くなってしまったそうです。
食欲が無くなり 何も口にしようとはしなくなり
話しもしなくなり閉じこもり気味になってしまい
認知症の方も かなり進んでしまっているようだと
嘆いていました。
このままでは時間の問題で
亡くなってしまうかも知れないと
心配で仕方が無いと言って連絡をしてくれました。
かかりつけの
お医者さんに診て貰った所
異常は見つからなかったので
今度は総合病院で検査をして貰ったけれど
矢張り ここでも異常は見当たらないと言われ
年齢からくる 衰弱ではないかと説明されたそうです。
電話で話しをしている内に
気になる事が有ったので幾つか聞かせてもらいました。
忙しさのあまり 毎日の
お母さんの世話が知らず知らずの内に
単なる作業になってしまっていたのです。
そして 以前にも
ここに書いた事がある
私の父との関わり方の中の
もっとも大切なことを伝えました。
お母さんと触れ合う時には
頭の中にある 他の事を一切どかして
お母さんの事だけを考えて接する事を
心がけてみると言う事です。
何かをしながら
お母さんに接する事をやめて
ちゃんと お母さんの顔を見て
お母さんの表情を見つめて接するだけで
お母さんが少しづつ静かになり
落ち着きを取り戻し始めてくれると
それを１日に ５分間だけでいいから
やってみると きっと元気になるよと伝えたのです。
何かをしながらでは
お母さんは一日中 誰とも関わってなどいない状態に
近いのだと言うことに彼女は やっと気づいてくれました。
それに１日に５分ならば 自分にも
出来ない事はないと思ってくれたのです。
そして少しばかり
ショックな事実も話しました。
”それは 今 世の中に
真剣に お母さんの事を考え
真剣に お母さんに生きていて欲しいと
願う人は残念なことに一人も居ないんだよ。
あなたも同じで
年をとり老人になり 子供も自立し
結婚をしていた相手も亡くなり
年老いて何一つ出来なくなってしまった自分に
誰一人として真剣に向き合ってくれる人など
居なくなってしまうのだ。
忙しい世の中で有れば有るほど
余計にそうなってしまうのだ。
そして亡くなった後に
初めて その事実に気づき 悲しむのだ。
だからこそ
たったの５分でいいから
お母さんを あなたが幼い頃に
見つめ慕っていた お母さんの事を思い出して
何も出来ない 素の あなたのままで良いから
ただ ただ 向き合おうとする それだけで良いんだ ”
ちゃんと向き合う事が出来ると
あなたの中から お母さんの中に向かって
何かが流れ込んでいくのが解かるようになる。
その何かが お母さんを元気にしてくれるんだ。
これは何もお母さんだけではなくて
子供にも 御主人にも 一日に５分で良いから
ただ その相手と向き合う時間を作ってごらん
それだけで誰もが変わり始めてしまうから
勿論 そうする あなたにだって相手から
何かが流れ込み始めて来る事が解かるようになる。
それから暫くして 彼女の家から
３０キロもの 新米が届けられて来ました。
彼女の結婚した相手は農家の次男坊だったのです。
お母さんが すっかり元気を取り戻して
食欲も出て 認知症も進行せずに
落ち着きを取り戻してくれたとの報告の手紙が入っていました。
お母さんを死なせずに済んだと
感謝の言葉が書き綴られていました。
今では １日に５分の時間を
とても大切な時間にしているのだそうです。
その時間は 自分にとっても
ホッとして 心の和む
楽しい時間になってしまったのだそうです。
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