◇ 人間物語 の メール講座 NO30 ◇
彼は
愛する人に
去られたくないと言う
幼ない頃に 体験した恐怖から
身を守る為に
彼の 奥さんが
死んでしまった時の
未来のことまで考える始末だった・・・。
その
未来で
いかに自分が 傷つかない様に
なるかと いった事まで
考えているから
勿論 無意識にだよ。
だから 奥さんを 心底から
愛せなかった。
もしも 心底 愛してしまったら
彼女が 絶対に死なないなんて
誰が 言い切れる。
遅かれ 早やかれ
死は 必らずやってくる。
もしも
そうなってしまったら
彼女が 死んだ時に
あの
遠い過去にした
悲しく辛い思いが
甦がえってしまうと
考えていたからだ・・・。
そんな思いを
二度としない為には
心底から 彼女を愛さなければ
彼女が 居なくなっても
耐えられるという思いを 基にして
生きてきてしまっていた・・・。
何も
これは奥さんにだけじゃない。
今までに出逢った
女性達にも 同様に
別れでいかに
自分だけが
傷つかない様に
苦しさ 辛さに 耐える事が
出来るか という思いの基に
愛していた。
だが
そんな事をすれば
決して 満たされない。
彼は 満たされたいのに
人が満たしてくる事を 許さない。
そんな彼が
次から次に
相手を変えて行ったのは
自然な結果だ。
これはなにも
彼だけの事でなく
世の多くの人に起っている。
世の多くの
人の愛は 彼同様
自分を 守るという所から出発している。
自分だけは
傷つきたくないと言う思いが
必らず 心の奥底にある。
それを持ったまま
愛の中へ 関係の中へと
入って行く。
あなたも
同じだ
彼と どこも変わらない。
今や
世の中から
愛は 消え去ってしまった・・・。
私は
その愛を 復活させたい。
それも まずはあなた自身の中に・・・。
彼の一番の
恐怖であった
愛する人に去られた時の
悲しさ 苦しさが
どうして 生み出され続けてしまうのかを
更に解かり易く
説明すると
それはこうなる
彼は
自分を守りながら
愛の中へ入って行った為に
誰も 愛してはいなかった。
彼は
自分を 守れているつもりでいても
心底で
誰も愛さないままに
共に暮した奥さんが
もしも死んでしまったら
彼は
自分を守れるか?
傷つかなくて 済むか? といったら
そうじゃない
彼は 泣く・・・彼は傷つく。
その時になって
始めて気づく
「 今日まで 自分は妻を一度も
愛していなかった 」と
いう事に気づく。
そして 悔いる。
それだけじゃない
その悔いを 一生持ったままで生きる・・・。
何故 泣きわめくのか?
何故 悔いるのか?
それは
今日まで
彼は 自分を守るがあまり
一度として
その守りを といたことが 無かったからだ
その守りを とく事こそ
愛なのに・・・。
彼は それを知らない・・・。
彼は 愛と言うのは
もっと別な 何かだと
勘違いした観念を 持ってしまっている為に
彼に愛は 起こらない。
もしも
その守りを といていたら
100%守りなど とけていたら
彼は 悔いやしない。
自分の守りが 全面的に とけていたら
彼は “ここ”に居られる。
“今”に “現在”に 居続けられる。
先の事など 考えない。
今に
現在に
全面的に溶けさって
それと
ひとつに
そのものに 成っている状態の時
そこに
未来も '過去も
入り込めない。
そんな
実体の無いものなど
入り込めようがない。
それは
あなたを 守った時に
入り込んでくるものだ・・・。
守りの 全面解放こそ
すべてを かけた愛だ!
もしも
彼の愛が
ここまでの ものであったら
悔いる必要はない。
なんら
悔いずに「さようなら」を言ってあげられる。
だが
世の多くの人達はそうじゃない。
だから
人の死が あんなにまで
冷たく 暗く 悲しい 雰囲気を持っている。
それは いかに 生前
皆が その人の事を
愛していなかったかを 物語っている。
そこで
泣いたり
悔んだり
悲しさを 押し殺している人だって勿論の事。
そんな人達は
いかに その人の事を
日常の中で 愛して いなかったかに気づき
それに なげいている
それに 悔いている
そのなげきは
死んだ人の 身近かな人であれば
あるほど 大きい。
だって
そんなに 身近かな人ですら
自分は 愛していなかったと言う事に
気づかされてしまう。
当然
もっと こうすれば 良かった
あの時 こうしていれば 良かったが
次から 次に生まれ出てくる
その事に対しての嘆きだ
自分の いたらなさに
対しての 嘆きだ。
自分の為に
泣いている
だが
本当に愛しきった人は 違う
常に 今ここに在り続けた人は 違う。
その 死んだ妻が
満ちたりて 去った事を
知っているからだ。
彼は
静かに満たされた気持で
その妻を 送ってあげられる。
そして
そんな人なら
彼女は 彼女自身が
何十年か前に 出てきた所に
再び 帰って行っただけだと
いう事まで知っている。
それは
悲しい事じゃない
嬉しいことでもない。
それは
大した事じゃない
元に戻っただけだ。
だって
元々は
彼女だけじゃない
あなただって 居なかったんだよ。
それに
本当は 今だって誰も
いた事なんて 無いんだよ・・・。
そして
これは 男女の恋愛関係の
別離の場合も 同じだし
夫婦の
離婚の際も
子供が 成長して
親から離れて行く場合にも
同じ事が言える。
すべてが
終ってしまっているのに
あなたの中で
あらゆる物事を
生かし続けているが為に
あなたは 愛せない。
それが
今のあなただ。
彼は
そのあと全ての事が 終って
もう 今は無くなっている事に気づき
その すべてに対して
「ありがとう」と
そして 「さよなら」を言った。
その “ありがとう” は
彼の あらゆる苦しさ
辛さに対してのものだ。
何故なら
その すべてがあったから
彼は 悩み 苦しみ
その結果
此処に辿り着けた。
彼自身が
ここまで歩んで来たんじゃない
あらゆる苦しみが あらゆる悩みが
彼をここまで 連れて来てくれた。
もはや 悩みや苦しみは
敵じゃない。
むしろ
それは友達だ。
それは ここに至る 素敵な
乗り物だった。
だがもう
その乗り物も
後にする時が来ている。
彼が“さよなら”を言ったのは
それら すべてが
もう終ってしまって
今は 無くなっているものだと言う事を
理解したからだった。
この何十年の間
無いものを
必死で生かしていた彼は
無いものを
ちゃんと 無くさせて上げた。
それが
“さよなら”の意味だ。
今迄の彼は
ここまでの事を
理解したと同時に
消え去ってしまっていた。
彼は”空”の領域へと旅立っていった。
彼は”空”の領域へと入っていったからだ。
「空っぽ」「一枚の真白な紙」
「純粋な空間」に
彼は 達してしまっていた。
その中に
溶け去ってしまった。
それでは
明日の人間物語のメール講座を どうぞお楽しみに