夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『被ばく牛と生きる』

2018年01月18日 | 映画(は行)
『被ばく牛と生きる』
監督:松原保

ナナゲイで3本ハシゴの2本目。
1本目でじゅうぶんに睡眠を摂って(^^;、お目目パッチリの2本目。

2011年3月11日に起きた東日本大震災
東京電力の福島第一原子力発電所では放射性物質の放出をともう原子力事故が発生。
政府は20km圏内のすべての家畜の殺処分を決定しました。
大部分の畜産農家はそれに従い、住めなくなった町を離れて出て行きましたが、
政府の方針をどうしても受け入れることができない畜産農家もあります。

ペットは連れて行くことが認められたけれど、
自分たちが手塩にかけて育てた家畜は殺処分。
殺処分を受け入れなかったところで、食肉として流通させることもできません。
いわば何の役にも立たない牛や豚。でも殺すことなんてできない。

原発事故後、住民がしばらく避難している間、
繋がれたままだった牛は、そのまま身動きが取れずに餓死。
なんとか逃げ出した牛たちは野良に。
いなくなった牛を1頭でも多く見つけようと、名前を呼びながら探す農家の人も。
何十頭もいる牛すべてに名前をつけ、見分けられるというのだから驚きます。

上映終了後に監督の舞台挨拶がありました。
専門家でもない、どうしたらいいかわかるわけでもない、
でもこの現状を少しでも多くの人に観てもらえたらとおっしゃっていました。

もう生き物は飼えない。そうつぶやく農家の人の声が寂しいです。

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『J:ビヨンド・フラメンコ』

2018年01月17日 | 映画(は行)
『J:ビヨンド・フラメンコ』(原題:Jota de Saura)
監督:カルロス・サウラ

12月30日、昨年の映画観おさめの日。
豊中で忘年会の前に、十三・第七藝術劇場で3本ハシゴ。

「J」って何のことだろうと思ったら“JOTA(ホタ)”なのですね。

監督の生まれ故郷、スペインのアラゴン地方が発祥とされる民族舞踊“ホタ”。
“ホタ”はフラメンコのルーツだそうな。
そんな“ホタ”を題材に、国民的フラメンコダンサーのパフォーマンスを通し、魅力に迫るというもの。
出演者のなかには世界的に活躍するギタリストバグパイプ奏者もいます。
フラメンコのルーツがこんなにも多彩であることを初めて知りました。

しかし如何せん、フラメンコへの興味がイマイチ。
素晴らしい作品であることはわかるけれど、
よほど興味がなければ睡魔に襲われてしまいます。
どうせ観るならやはり生の舞台がいいでしょう。
知らない間に夢心地。すみません。

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『エンドレス 繰り返される悪夢』

2018年01月16日 | 映画(あ行)
『エンドレス 繰り返される悪夢』(英題:A Day)
監督:チョ・ソンホ
出演:キム・ミョンミン,ピョン・ヨハン,ユ・ジェミョン,シン・ヘソン,チョ・ウニョン他

4本ハシゴはしんどくて、
前述の『Mr. Long/ミスター・ロン』までの3本にしておくつもりでしたが、
口コミを調べたら、これもなんだか面白そう。
ええい、4本観てしまえと勢いで突入したシネマート心斎橋の4本目。
この日の4本では『Mr. Long』がいちばんよかったけれど、これもなかなか。

海外から韓国へ飛行機で帰国した著名な胸部外科医ジュンヨン。
愛娘ウンジョンはパパのことが大好きだが、
世界中を飛び回るパパはなかなかかまってくれないとスネ気味。
今日こそ日頃の穴埋めをと、ジュンヨンはウンジョンに連絡。
ウンジョンとの待ち合わせ場所に空港から直行する。

その道中、交差点で交通事故現場に遭遇。
事故車両のタクシー運転手を医者として放置しておけず、応急処置をしようと降りる。
ところがそのタクシーが撥ねたのはウンジョン。
すぐ前の横断歩道で横たわる我が娘はすでに息を引き取っていた。

と、その瞬間、ジュンヨンは飛行機の中で目を覚ます。
どうなっているのか、今はあの事故の前らしい。
上手くいけばウンジョンを失わずに済むのではないか。
そう考えたジュンヨンは、事故を阻止しようと必死に行動する。
しかし失敗、そしてまたもや気がつけば飛行機の中。

何度戻っても、ウンジョンのことは助けられないままで、
悪夢の一日が繰り返される。
すると、何度目かの折りに見知らぬ若い男に掴みかかられる。
その男ミンチョルは、事故を起こしたタクシーの乗客の夫だった。
妻を失ったミンチョルもどうやら悪夢の一日を繰り返しているようで……。

幾度も繰り返される悪夢をどうすれば終えられるのか。
タクシーの運転手が事故を起こす前に殺せばいいと考えるミンチョル。
それに対してジュンヨンは、この悪夢が起きる理由があるはずだと考えます。
ただ意味なく悪夢が起きているわけではなく、
悪夢を起こしたい人がいて、起こしたい理由がある。

過去の罪と向き合い、心底つぐないたいと思うとき。
『フラットライナーズ』ではそのつぐないの気持ちを上っ面だけのものに感じましたが、
こちらは気持ちのともなう真摯なもの。
出色のタイムループものと言えます。

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『Mr. Long/ミスター・ロン』

2018年01月15日 | 映画(ま行)
『Mr. Long/ミスター・ロン』(原題:Mr. Long)
監督:SABU
出演:チャン・チェン,青柳翔,イレブン・ヤオ,バイ・ルンイン,有福正志,諏訪太朗,
   大草理乙子,歌川椎子,真下有紀,山崎直樹,瀬口寛之,水澤紳吾,福地祐介他

年末にシネマート心斎橋で4本ハシゴの3本目。

なんだかんだ言って心斎橋は家からそんなに近くない。
右脚は腫れたままだから、相変わらず出かけるときもナマアシのままだし、
寒いなぁ、面倒くさいなぁと思いつつも心斎橋まで行ったのは、
本作を観たい気持ちが勝ったからです。

大好きなSABU監督が、台湾の人気スター、チャン・チェンを主演に起用するという。
日本/香港/台湾/ドイツ作品。
ナマアシで寒くても観に行ってよかった。
昨年劇場で観た作品のベストにしてもいいほど好きでした。

凄腕の殺し屋ロン(チャン・チェン)は台湾でひとつ仕事を片付けたあと、
次の仕事の依頼を受けて東京へ。
ところがその仕事に失敗、ヤクザに拉致されておしまいかと思われたとき、
「俺の女を返してくれ」と叫びながら賢次という男(青柳翔)が飛び込んでくる。
ヤクザと賢次が揉めている間にロンはなんとか脱出。

重傷を負ったロンが逃げ込んだのは、北関東の田舎町。
ひと気のない路地に横たわっていると、少年ジュン(バイ・ルンイン)が現れて、
消毒薬やら包帯やらどこかの畑からくすねてきた野菜やらを置いていく。

ロンの台湾での表の姿は料理人
廃屋で調理器具を調達すると、軒先で料理を始める。
鍋の匂いに釣られてやってきたジュンは、驚いたことにロンの話に中国語で答える。
「おまえ、中国語がわかるのか」と聞くと、「ママが台湾人だから」。

ジュンの家を訪ねてみると、そこにはジュンの母親リリー(イレブン・ヤオ)が。
シャブ中のリリーをロンは縛り上げ、家から出られないようにする。
禁断症状に苦しむ母親の姿に胸を痛めながら、これはママのためだと耐えるジュン。
そんなジュンとリリーの面倒をみるロン。

一方、軒先を通りかかった近所の住民は、ロンの料理の腕前に驚く。
住民の集まりで料理をつくるはめになったロンに、みな大騒ぎ。
日本語をまったく話せない謎の男前料理人にお節介の嵐を浴びせる。

廃屋に次々と家具を運び込むばかりか、生活費も要るだろうと、
神社の境内で牛肉麺の屋台を出せるように手配。
ロンの屋台はその美味しさでたちまち評判となるのだが……。

ロンとリリーとジュン。
3人がどうかこのまま幸せでいられますようにと祈りながら観ました。
でもSABU監督のことだから、きっとこのままでは終わらない。
そうしたらやはり予感的中で、絶望の淵に落とされました。

なのに。このラスト。号泣。
もうほんと、こんなラストを持ってくるとは、憎たらしいなぁSABU監督。

いったん吸いついたら離れない「すっぽん村」の人々。
日本語はしゃべれないという設定なので、ほとんど台詞なしのロンが最後に見せる表情。
たまらんぐらい良い作品でした。

SABU監督、サイコー!

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『オレの獲物はビンラディン』

2018年01月14日 | 映画(あ行)
『オレの獲物はビンラディン』(原題:Army of One)
監督:ラリー・チャールズ
出演:ニコラス・ケイジ,ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ,ラッセル・ブランド,
   アドリアン・マルティネス,マシュー・モディーン,デニス・オヘア他

年末にシネマート心斎橋で4本ハシゴの2本目。

どうです、この邦題。思いついた人はスゴイ。
しかも主演はニコラス・ケイジ。いったい何をしておるんだ(笑)。

愛国心が強すぎて、なかなかオサマ・ビンラディンを捕まえられない米軍にやきもき。
居ても立ってもいられずに、ビンラディンをパキスタンまで探しに行ったというオッサンの話。
実話が基だというのですからワラけます。いや、笑っていいのか!?

お人好しの変人ゲイリー・フォークナー。
ビンラディンの行方がわからないというニュースに苛立っていたある日、
「パキスタンに行って、オサマ・ビンラディンを捕まえよ」との神の啓示を受ける。
使命感に燃えるゲイリーは、さっそく金を工面してヨットを購入。
武器として日本刀を調達すると、パキスタンへと旅立つのだが……。

腎臓を患っているゲイリーは、定期的に透析を受けなければなりません。
仕事もまともにできない身だから、旅の金をどうやって用意するのかと思えば、
彼の周囲には面倒見のいい人ばかり。ヨット代は主治医から借ります。
さすがのゲイリーも、旅の目的を正直に言っても貸してもらえないことはわかっていて、
適当に嘘をつく。「嘘ですけどね」と書いてあるような顔をしながら(笑)。

友人も交際相手も、こんな変人を馬鹿にしたりしない。
ゲイリーの行動よりも、むしろそっちのほうに驚きました。
みんなどうしてこんなにいい人なのか。
もちろんゲイリーの人間性がそうさせるのでしょうね。

変なオッサンが突然やってきて日本刀を振り回すものだから、
パキスタンで調査中のCIAはたまったものではありません。
いっそのことあのオッサンをエージェントとして引き入れてしまおうか、
いやいやそれは無理だろうという会話も可笑しい。

ものすごく可笑しい設定のわりにはところどころ眠かったりもして、
この日ハシゴした前述の1本と後述の2本に比べるとイマイチ。
ただ、これに出演したニコラス・ケイジを見る目は変わります。

世の中にはいろんな人がいるということで。
そして他の人が考えつかないような行動に出れば、
こんなふうに人生そのものが映画化されることもあるんだなぁ。

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