夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ありふれた悪事』

2018年01月13日 | 映画(あ行)
『ありふれた悪事』(英題:Ordinary Person)
監督:キム・ボンハン
出演:ソン・ヒョンジュ,チャン・ヒョク,キム・サンホ,ラ・ミラン,チョン・マンシク,
   チ・スンヒョン,オ・ヨンア,チェ・ユンソ,チョ・ダルファン他

まだ続きます、昨年末に観た映画。

1ヶ月フリーパスポートの期限が残っているのにほかの劇場に行く。
釈然としないけど、もう観るものがないんだから仕方ありません。
どこの劇場へ行こうかな〜と悩み、気になる作品が並ぶシネマート心斎橋へ。
もうええ加減しんどいし、ハシゴ3本にとどめておくつもりで出かけたのに、
チケット売場に行ったらなんとなく勢いで4本告げてしまった。
しかし結果的には4本とも観てよかったと思える極上ハシゴでした。

1980年代後半、軍事政権末期の韓国。

正義感強く、国家への忠誠心も強い刑事ソンジン。
倹しくも穏やかな日々を送っているが、妻は聾唖者、
一人息子も生まれつき片足に障害があり、
それゆえにいじめられている場面を見るともどかしくて仕方がない。
どうしてやり返さないんだと息子を叱咤すると、
「じっとしていれば早く終わるから」と息子は静かに答える。

ソンジンは、16名もが殺された連続殺人事件の犯人を追っている。
ある日、クリーニング店に血のついた服を持ち込んだ客がいると聞き、張り込み。
姿を現したその男をすぐに逮捕するが、連続殺人犯とはとても思えず、
それはそれとして捜査を進める。

すると、大統領直属の情報機関、国家安全企画部の室長ギュナムに呼び出され、
ソンジンが逮捕した男こそが連続殺人犯だと言われ、証拠も渡される。
国家への忠誠心の強いソンジンにこの事件を任せたい、
なんとしてでも逮捕した男を自白させるようにと命じられ、
捜査費用として握らされる札束。
陰謀のにおいは感じるものの、この金があれば家族にも楽をさせられる。
ギュナムの期待に応えて早く自白させなければ。

そう思っていた矢先、親友の記者ジェジンから連絡が入り、
連続殺人犯はすでに死亡していると聞かされる。
犯人死亡では軍事政権を守れないと判断した国家安全企画部が、
犯人をでっちあげようとしているのだとジェジンは言う。
しかしいまさら後に引けないソンジンは……。

金はなくとも、誰に語ろうが恥ずかしくない刑事人生を送っていたはずのソンジン。
それが、目の前にカネをちらつかせられて歯止めがきかなくなります。

命が危険にさらされようとも決して引かない記者ジェジン。
世の中はカネとコネ、逆らったって世界は変わらないというソンジンに、
ジェジンは言います。「常識が通用する世の中にしたいんだ」。

ハッピーエンドなど望めない展開。
軍事政権下ではこんな拷問がまかり通っていたのかと思うと絶句。
良心が通用する世界で生きたい。

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