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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『バトルシップ』

2012年04月22日 | 映画(は行)
『バトルシップ』(原題:Battleship)
監督:ピーター・バーグ
出演:テイラー・キッチュ,アレキサンダー・スカルスガルド,リアーナ,
   ブルックリン・デッカー,浅野忠信,リーアム・ニーソン他

大阪ステーションシティシネマにて。
いまどきこの手の作品なら3Dが当然ちゅう気がしますが、
そうじゃないところに好感が持てます。(^o^)
エンドロールの長いのなんのって。しかも“Digital Arrist”だらけだぁ。

海軍で将来を嘱望される兄ストーンと、
頭は良いのにふらふらしていつまでも落ち着かない弟アレックス。
なんだかんだ言いつつも仲の良いこのホッパー兄弟。
今日はアレックスの誕生日を祝ってふたりで酒場へ。

そこへやってきた女性サムに一目惚れしたアレックスは、
お腹をすかせた彼女が、フードの注文時間が終了してがっかりしているのを見て奮起。
すでに閉店した向かいのスーパーに違法侵入すると、彼女のためにブリトーをゲット。
彼女のハートはしっかり掴んだが、代償に御用となる。

実はサムは海軍提督の娘だと判明し、ストーンはビックリ。
弟のせいで自分の前途が閉ざされてはかなわぬと、
アレックスにも海軍へ入ることを強制する。

さて、ある日、ハワイ沖にアメリカや日本をはじめとする各国の軍艦が集結。
大がかりな合同軍事演習がおこなわれる。
血の気の多い新人将校アレックスは、日本の自衛艦艦長ナガタに敵意むき出し。
やがて演習がはじまり、アレックスが乗る駆逐艦とナガタの自衛艦、
ストーンが艦長を務めるサンプソン号が出発する。

その頃、太陽系外の地球型惑星との交信を試みるために
オアフ島に建設された施設から宇宙へ向けて信号が送られていた。
それに反応したとおぼしき正体不明の物体が地球に落下、大災害に。
同じ物体がハワイ近海にも落下してアレックスらの目の前に。
物体を操るエイリアンの激しい攻撃に応戦するのだが……。

つべこべ言わずに楽しみたい娯楽大作。
最初の酒場のシーンは見ていて恥ずかしくなるほどで、
なんだ、この一昔前の甘ったるさは!と目が点になったのですが、
海上シーンになってからは◎。

軍艦についての知識がまったくないので、
序盤から登場するのがバトルシップかと思っていたら、
最後の最後に活躍するのが今は「ミュージアム」と化した記念艦バトルシップ。
これが出てくるラスト30分間がホントにおもしろかったです。

空中戦だとあまりのスピードに目がついていかなかったりしますが、
海上戦、しかもこんなに大きな軍艦だと、何もかもがゆっくり。
しかも、ガンガン撃ちまくるだけでエイリアンを撃退するわけではなく、
ちゃんと頭を働かせた作戦を完遂するのもいいところ。

浅野忠信が準主役で出番てんこ盛りなのは嬉しい限り。
ストーン役は『ドラゴン・タトゥーの女』のタヌキ親父の息子だそうで。
AC/DCもバッチリ合っていますが、もっと爆音でかかったらなお良かったかも。
「ロックしよう」の台詞にこちらを思い出したのはまったくの余談。

あ、エンドロールの後にもお楽しみあります。
観逃してもなんちゅうことはないようなネタですけど。

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『ルート・アイリッシュ』

2012年04月20日 | 映画(ら行)
『ルート・アイリッシュ』(原題:Route Irish)
監督:ケン・ローチ
出演:マーク・ウォーマック,アンドレア・ロウ,ジョン・ビショップ,トレヴァー・ウィリアムズ,
   ジェフ・ベル,タリブ・ラスール,クレイグ・ランドバーグ,ジャック・フォーチュン他

シネ・リーブル梅田にて。

2010年のイギリス/フランス/ベルギー/イタリア/スペイン作品。
労働者階級を撮りつづける社会派の名匠ケン・ローチ監督の作品ながら、
興行的には厳しいものがあるのかなかなか買い手がつかなかったようで、
時機を逸しての公開になってしまった感があります。
それでも観ておいてよかったと痛切に思える1本。

リバプールに暮らすファーガスは、酒場で喧嘩して留置場に放り込まれたせいで、
兄弟同然に育った親友のフランキーが何度もかけてきた電話を取れなかった。
そしてそのまま、フランキーは戦場で命を落としてしまう。

ファーガスとフランキーが所属していたのは戦争を請け負う軍事会社。
高給だからと、ファーガスがフランキーを誘って民間兵としてイラク戦争に参加。
ファーガスは一足早くイギリスへ帰国したが、
後に残ったフランキーが乗っていた車が“ルート・アイリッシュ”で襲撃されたのだ。

“ルート・アイリッシュ”とは、バグダッド市内の米軍管轄地域(グリーン・ゾーン)から
バグダッド空港まで続く片道約12kmの道路のことで、
ここを走る車はテロの標的になりやすく、世界一危険な道と呼ばれている。
フランキーは何度もこの道を往復させられていたらしく、
葬儀のさいに弔問に訪れた会社が言うには、「悪いときに悪い場所へ」。
フランキーの死は不運以外のなにものでもないと。

しかし、フランキーが亡くなる前に、
ファーガスにこっそり渡してほしいと仲間に託したのが携帯電話。
それがフランキーの助手を務めていたイラク人の携帯であることがわかり、
ファーガスはイラク出身の音楽家ハリムにメール等の翻訳を依頼。
うちひとつの動画に同僚が民間人を射殺するシーンが含まれていたことから、
事実隠蔽のためにフランキーは殺されたのではないかとの疑念が浮かび……。

会社は安価で雇った労働者を民間兵として派遣する。
けれども会社が安価だと感じる給料は、労働者が飛びつくにはじゅうぶんな高給。
戦争は外注されて民営化され、戦うのは自分の給料のため。
顧客を守るためならば民間兵は何をしても罪に問われることなく、好き放題。
自分たちの暮らす場所でよそから来た民間兵に無茶苦茶されたらどうなるか。
もともとは中立の立場だった人たちがアルカイダに協力的になる。衝撃的です。

世界一危険な道だから“ルート・アイリッシュ”、なんだかピンと来ないのですが、
同監督の『麦の穂をゆらす風』(2006)を観ると、そりゃそうだと思えます。
ついでに、石持浅海の推理小説『アイルランドの薔薇』は、
南北アイルランドの統一を謳う人物が宿屋で殺される事件が起きます。
登場人物の国籍がいろいろで、日本人の科学者が活躍しますが、
アイルランドの和平問題もわかりやすく説明されていて唸りました。

しかしこの監督、今まで顔写真を見たことがなく、
勝手にいかついおっちゃんを想像していたら、なんだかとっても優しそう。
なのにこんな作品とは。熱いなぁ。

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『監督失格』

2012年04月17日 | 映画(か行)
『監督失格』
監督:平野勝之
出演:林由美香,平野勝之,小栗冨美代,カンパニー松尾他

昨秋公開されたレンタル最新作。
“ヱヴァンゲリヲン”の庵野秀明監督がプロデュースを務めていますが、
AV監督による、伝説的AV女優との日々をまとめ上げたドキュメンタリーで、
女性としてはちと観に行きづらく、DVD化待ちとなりました。
けれども、『童貞。をプロデュース』を観たときの劇場の雰囲気がめちゃめちゃ良かったので、
こんなことなら本作も観に行くべきだったと後悔しています。

2005年6月に急逝したAV女優、林由美香
酒とともに睡眠薬を服用しての死にはさまざまな憶測が飛びました。

遺体の第一発見者だったのが、AV監督、平野勝之。
かつては由美香と不倫関係にあった人です。
1996年、既婚者の平野は、由美香を連れて東京から北海道へと自転車の旅へ。
その不倫野宿旅の様子は『由美香』(1997)と題してフィルムに収められています。

帰京後、すぐに別れてしまったふたり。
あっけらかんとした由美香に対して、平野は何年ものあいだ悶々。
独りで雪の北海道へ自転車で向かったりして、自暴自棄な姿が見受けられます。

もともと男と長続きしない由美香は、平野と別れたあとも恋の悩みが尽きません。
好きな男ができれば平野に電話。さんざん愚痴もこぼします。
平野の心中はさだかではありませんが、彼はいつでもそんな由美香の相談相手になってきました。

2005年、自分の集大成を撮ろうと考えた平野は、由美香の存在は外せないと、
久しぶりに由美香に撮影取材を申し込みます。
由美香の誕生日に会う約束を取りつけますが、ドアを叩いても彼女は現れません。
彼女が仕事を放り出すわけがないと、翌日、助手とともに彼女の母親に連絡。
合鍵で部屋に入ったところ、彼女が床に倒れていました。すでに息はなく。

北海道旅行のさい、大喧嘩したふたり。
仲直りして、喧嘩中はカメラを止めていたと平野が言うと、
どんなときでもカメラは回さなきゃ。映画監督なんだから。
監督失格だね。そう由美香がニコッと笑って言いました。

監督失格だね、由美香にそう言われたから、
以降、いつどんなときでもカメラを回すことを止めなかった平野。
だから、2005年のあの日も、由美香の部屋のドアの前からカメラを回し続けていました。
そうして、彼女の死を収めることになってしまったのです。

このフィルムは使用しないという契約が交わされていましたが、
彼女の死から5年以上が経ち、男前な彼女の母親が言います。「使っていいよ」。

AV監督とAV女優のドキュメンタリーと言えば興味本位で観てしまうものですが、
後半は涙がぽろぽろこぼれて仕方ありませんでした。
どうやって終わらせたらいいのかわからない。どうしてもこのシーンが最後に来てしまう。
終わらせたくなかった平野の気持ちが痛いほど胸に迫ってきます。

ちょうど本作を観た翌日、貫井徳郎の『乱反射』を読み終わり、
終盤に登場する言葉が、この映画にピタリと当てはまる気がしました。
「時間が経てば気持ちの整理がつくなんて、そんなことはあり得ないんです。
気持ちの整理は自分でつけるものなんです。
待ってたって、いつまで経っても整理なんかつかないんです」。

監督なりの気持ちの整理のつけかた。
矢野顕子の書き下ろしエンディングテーマ曲“しあわせなバカタレ”とともに沁みました。

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『ホームランが聞こえた夏』

2012年04月15日 | 映画(は行)
『ホームランが聞こえた夏』(英題:G-love)
監督:カン・ウソク
出演:チョン・ジェヨン,チャン・ギボム,キム・ヘソン,
   イ・ヒョヌ,ユソン,カン・シニル,チョ・ジンウン他

プロ野球シーズンが開幕して2週間。
これは先月初めにDVD化された、実話を基にした韓国作品です。

MVPに何度も選出された国民的スターであるにもかかわらず、
素行不良が目立つプロ野球チームの投手、サンナム。
またしてもぐでんぐでんに酔っぱらって警察の厄介となり、
さすがにファンからも見放されそう。

高校時代、サンナムのチームメイトだったチョルスは、
いまはマネージャーとしてサンナムを支えている。
サンナムが重い処分を受けずに済むようにと、
尻ぬぐいにかけずり回るチョルスの気を知ってか知らずか、
捨て鉢な態度ばかり取るサンナム。

サンナムのおこないは当面許してもらえそうにもなく、
汚名返上、名誉挽回のためにチョルスが見つけてきた話は、
謹慎処分中に視聴覚障害者がかよう高校の野球部でコーチをすること。
しかし、スター選手の来校を喜ぶ生徒にサンナムは冷ややか。

野球部顧問の女性教師ジュウォンと部員たちの願いは、
高校野球全国大会への出場。
無理に決まっていると鼻で笑うサンナムだったが、
ある夜、野球部には所属していない生徒ミョンジェが
人知れず投球練習する姿に心を動かされる。

ミョンジェは、中学校の野球部でエースとして活躍していた折り、
突然聴覚を失って野球を続けることを断念し、この高校へ進学。
それを知ったサンナムは、ミョンジェを野球部へと誘う。

かなり長めの144分。
ハリウッドの野球映画のように洗練されてはいないし、
削れるシーンが多数ありそうなわりに、
盛り上げ方がイマイチかもなんてところがあります。

けれど、やっぱりイイです。こんなスポ根もの。
上記の勧誘シーンは、授業中の教室にサンナムがいきなり乱入、
紙に書いた文字で「一緒に野球をしよう」と誘うのですが、
ミョンジェがうんとは言わないことも読んでいて、ここでまず泣かされます。

じゃじゃ馬のジュウォン先生とサンナムの掛け合いも痛快で、
間に入る教頭先生が実にいい味。
この教頭先生役は、邦画だったら笹野高史あたりに演じてもらいたいところ。

何よりも悔しいのは、こてんぱんにやられることよりも、同情して手を抜かれること。
ジリ貧の野球選手と部員たちの心の叫びにウルっ。
サンナムとチョルスが抱き合うシーンでは
『ラブ・アクチュアリー』(2003)のロック歌手とマネージャーを思い出してまたウルリ。
って、なんぼほど泣いとるねん、私。(^^;

韓流のわりに貧弱な体型のサンナム役、チョン・ジェヨンは、
『小さな恋のステップ』(2004)でも野球選手役でした。
『彼とわたしの漂流日記』(2009)では憐れすぎて笑える主人公。
確かに、あの無人島でええ体しすぎているのはよくないもんねと納得。

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『アーティスト』

2012年04月12日 | 映画(あ行)
『アーティスト』
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン,ベレニス・ベジョ,ジョン・グッドマン,
   ジェームズ・クロムウェル,ミッシー・パイル,マルコム・マクダウェル他

第84回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞など、
5部門で受賞を果たしたフランス作品。
そのわりに、封切り日の客の入りは寂しい気がしましたが、
映画への愛にあふれた作品です。

1927年のハリウッド。
サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、
主演映画の舞台挨拶後、群がるマスコミやファンの前に姿を現す。
落とし物を拾おうとしてしゃがんだのがファンの一人、ペピー・ミラー。
彼女はジョージの隣に押し出される形になり、
ジョージとのツーショットがフラッシュを浴びる。

女優志望のペピーは、新聞の一面を飾った自分の写真にご機嫌。
ジョージ主演の映画にエキストラとして応募すると、
陽気なダンスがウケて見事採用。

ジョージは現場で怒られたペピーを救い、楽屋では成功の秘訣をアドバイス。
大物になるには目立つ特徴が必要だと、ペピーの口元にほくろを描く。
これがペピーのトレードマークとなり、徐々に役を獲得しだす。

やがて、時代はサイレント映画からトーキー映画へ。
サイレント映画に固執するジョージは取り残され、スターの座から滑り落ちる。
逆に時代の波に乗ったペピーは、スターへの階段を駆けのぼり……。

サイレント映画というと、私が思い出すのは東京キネマ倶楽部
現在はサイレント映画の上映会はごくわずかで、
プロレスなどの格闘技団体もホールを利用しているとのこと。
そうしなければ経営が成り立たないのでしょうね。

さて、本作中、音楽以外の音声が入るのは、30分ちょい経過した頃の、
ガラスのグラスをテーブルに置くときが初めて。
ちょうどトーキー映画がサイレント映画に取って代わりはじめた頃で、
こうして音を出すことによって、強がって見せるジョージの不安を上手く表しています。

上映中に物音を立てる人はそうそういませんが、
本作では音楽以外に音のない映画館がいかに静かであるかを実感できます。
これまでは、役者の台詞のみの、音楽のない映画のほうが静かだと思っていたのに。
そして、音楽の力も知ることができます。
「ここですよ~、泣くところは」と言わんばかりの音楽には
確かに泣かされるものの冷めている自分がいましたが、
本作に限っては、音楽のその偉大な力にひれ伏しました。

台詞は聞こえず、淡々と進み、お決まりの流れ。
退屈に思える数分間も正直なところありました。
けれども、モノクロの映像に懐かしさを感じ、胸を締めつけられます。

いちばんの名演は、なんと言ってもジョージの愛犬。
『人生はビギナーズ』と同じジャックラッセルテリアで、
この種には演技達者な子が多いんでしょうか。

バン!と撃つ真似をされたら死んだふりをするのは万国共通?

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