夜な夜なシネマ

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『否定と肯定』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の12本目@西宮)

2018年01月03日 | 映画(は行)
『否定と肯定』(原題:Denial)
監督:ミック・ジャクソン
出演:レイチェル・ワイズ,トム・ウィルキンソン,ティモシー・スポール,
   アンドリュー・スコット,ジャック・ロウデン,カレン・ピストリアス他

これはお金を払ってでも観たかった作品。
封切りの週に観なかったら、次週には朝9時の1回のみの上映。
慌てて観に行きました。

いまさらホロコーストの存在を否定している人がいるなんて。
その事実すら知らなかったのでビックリしました。実話が基。

アメリカの大学で教鞭を執る歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、
ユダヤ人で、ホロコーストの専門家。
著書でホロコースト否定論者のデイヴィッド・アーヴィングを非難したところ、
デボラと著書の出版社ペンギンブックスが名誉毀損の訴えを起こされる。

ふだんは否定論者の言うことになど取り合わないデボラだが、
出版記念の講演会にまで乗り込んできたデイヴィッドを無視できない。
悩んだ末、裁判で争うと決める。

ところが、裁判がおこなわれるのはイギリスの法廷。
アメリカでは、訴えた側に訴えられた側の罪を証明する責任があるが、
イギリスでは、訴えられた側が自ら無罪を証明しなければならない。

名うての弁護士アンソニー・ジュリアスを雇い、面談したところ、
またしてもデボラは不可解なイギリスの法廷規則を聞かされる。
アンソニーは事務弁護士で、実際に法廷で話すのは法廷弁護士だと。
法廷弁護士のリチャード・ランプトンを紹介される。

勝利を得るためアンソニーのもとに敏腕な弁護団スタッフが集結するが、
リチャードとアンソニーの方針を聞いたデボラは愕然。
デボラには法廷に立たせない、ホロコーストの生存者にも証言させないと言うではないか。
到底納得できないデボラに焦燥と苛立ちが見えはじめるのだが……。

凄い裁判があったものです。
訴えた側の学者は、世間ではもはや過去の人と言われている。
だからこうして裁判を起こしたのもいわば話題で、
メディアに取り上げられるたびに元気になって息を吹き返しそう。
彼の著作におけるアウシュヴィッツの歴史について、
ホロコーストの存在を否定するために意図的に虚偽の記述をしたと証明できなければ、
いくら荒唐無稽な主張であってもデボラは敗訴してしまうのです。

こんな方針で勝てるのかと疑っている間のデボラは、身勝手な部分も多大にあり、
全面的に共感はできません。むしろ腹立たしい。
でも、弁護団と徐々に心をかよわせ、彼らの仕事に信頼を置き、
口をつぐむことも戦術の方法だと覚悟を決めてからが良い。

ホロコーストの問題を考えざるを得ないのは当然ですが、
裁判の進め方が非常に面白く、見応えがあります。

デボラ役のレイチェル・ワイズ、リチャード役のトム・ウィルキンソン
アンソニー役のアンドリュー・スコットの演技に魅了されました。
デイヴィッドを演じたティモシー・スポールは、
かつてあんなに下ぶくれのポチャポチャ顔だったのに、
本作で最初に映ったときは誰だかわからなかったほどの激やせぶり。
身体が心配ですが、完璧な憎まれ役ぶり。長生きしてくださいね。

昨年暮れのお薦め作品でしたが、年明けにはもう終わっているかなぁ。

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