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『地下鉄(メトロ)に乗って』

2007年04月06日 | 映画(ま行)
『地下鉄(メトロ)に乗って』
監督:篠原哲雄
出演:堤真一,岡本綾,常盤貴子,大沢たかお他

レンタル新作。浅田次郎の同名小説の映画化です。

小さな衣料品店の営業社員、長谷部真次は、
弟から父親が倒れたと言う連絡を受ける。

父親の小沼佐吉は大手衣料メーカーの社長。
3人兄弟の次男である真次は、兄が亡くなった事故をきっかけに、
家庭を顧みない父親を嫌って家を飛び出し、籍も抜いていた。
不祥事が明るみに出るたびに都合よく入院する佐吉に、
真次は到底会いに行く気にはなれない。

兄の命日であるその日、地下鉄構内で、
昔の兄にそっくりな後ろ姿を見かける。
思わず後を追った真次が地上へ出ると、
そこは東京オリンピックに湧く昭和39年の自分が育った町。

訳がわからず、途方に暮れるが、
ふと、今なら兄の事故を防げるのではないかと思いつく。
しかし、結局事実を変えることはできず、兄は死んでしまう。

以来、予期せぬ瞬間のタイプスリップが
真次の身に起こるようになるのだが……。

原作が非常に有名ですので、ご存じの方も多いと思います。
タイプスリップした先で、若かりし日の父親と出会い、
嫌悪感しか持てなかった父親のことを知ります。

いろんな掲示板では低い評価も多いですが、
今週私がいちばん泣いた映画はこれ。
もろにネタバレですので、
ネタを知らないまま映画を観たい人は、
ここから先、読まないでください。

何が泣かされたって、原作を未読だった私は
岡本綾演じるみち子の行動をまったく読めず、
それはもう、ウサギみたいに目が赤くなるほど号泣。

彼女は堤真一演じる真次の不倫相手。
彼女もなぜか昭和39年にタイムスリップしてしまい、
実は自分が佐吉の愛人の娘であることを知ります。
つまり、自分と真次は異母兄弟。

昭和39年に自分を身籠っていた母親に会うと、こう尋ねます。
「お母さんの幸せと、私が愛した人の幸せを秤にかけてもいいですか」。

まさか目の前にいるのが成長した自分の娘だと思わない母親は答えます。
「親っていうものはね、自分の幸せを子どもに望んだりしないものだよ」。

それを聞いた瞬間、母親にしっかりと抱きついたみち子は
そのまま石段を落ちてゆきます。

自分の生を無くして、真次の幸せを願った彼女の決断。
この話に愛人なんていらんというコメントも多々見ましたが、
私には彼女こそ、本作の肝。
愛する人を幸せにするには、これほどの覚悟が必要。

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