夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『メビウス』

2014年12月13日 | 映画(ま行)
『メビウス』(原題:Moebius)
監督:キム・ギドク
出演:チョ・ジェヒョン,ソ・ヨンジュ,イ・ウヌ他

前述の『チェイス!』とハシゴする作品を相当悩み、結局これに。
いや、もともといちばん気になっていたのはこれなんですが、
とにかく心身共に元気なときでないと辛くて観るに堪えないキム・ギドク監督ですから。

『嘆きのピエタ』(2012)より軽量級であることを祈りつつ観ました。
んが、台詞ひと言もなし、発せられるのはうめき声や悲鳴だけ。
BGMもなし、音楽は最後の最後に流れるだけ。
R18+指定の過激なシーンてんこ盛りでツラすぎる。
だけど不思議と、この監督の作品は「観なきゃよかった」にはならないのです。

血まみれで残虐といえば、『神さまの言うとおり』もそうでしたが、
こちらはさすがにキム・ギドク監督とわかっていて観にきている人ばかりだからか、
途中退出する人は誰もいませんでした。

さて、書くだけで涙目になるほど過激です。(T_T)
これらが一切台詞なしの映像のみ。ぞわっとします。
名前が呼ばれることもないから、名前のある登場人物もなし。

父と母、思春期まっただなかにいる息子の3人家族。
立派な一軒家に住む上流家庭ながら、その関係は冷え切っている。

父は近所の小さな商店の若い女と浮気中。
車中で喘ぐ女と父を別々に見つめる母と息子。

嫉妬に狂った母は、就寝中の父の性器を切り落とそうとするが、父が目を覚まして失敗。
父の浮気現場を見て自慰にふけっていた息子の姿を思い出し、
母は今度は息子の性器に手を伸ばして、無惨に切り落としてしまう。

息子の絶叫を聞いた父はあわてて駆けつけるが、母は息子の性器を口の中へ。
そのままふらふらと家を出ていき、父は息子を病院へと連れてゆく。

さてさてさて、ここからはネタバレ全開です。
だって、観たくないけど、知りたい人は多いでしょ。……んなことはないか。(^^;
ここまで読んで、是が非でも観にいくという人はこの先を読まないでください。
ちなみに、台詞はないから詳しい説明もなし、どれも私の推測に過ぎません。↓

自分のせいで性器を失った息子。これからというとき(?)なのに。
父は病院へ行くと自分も去勢します。
……と思っていたのですが、単なるパイプカットではなかったみたい。
自分の性器を切除すると、それを息子に移植するために保管しておいてもらったのですねぇ。

自らも性器を失った父は、男というものは性器なしでもイケるか。それを考えはじめます。
ネットでいろいろ調べた結果、石で皮膚の一部をこすりつづけると、
皮膚細胞が壊れて出血までするほどになったときイケると知ります。

息子に石を贈る父。
凄絶な描写の中で唯一笑ってしまったのは、石で腕や足の甲をこすってイッたあとの2人。
こすっているときはそれなりに気持ちいいようなのですが、
イッた直後にたまらない痛みに襲われるようで、その痛がりかたにワロてしまいました。

また、こする以外でも、体に痛みを与えることが快感を呼ぶ。
父の浮気相手の女と親しくなった息子は、
女から肩にナイフを突き立てられ、そのナイフをぐりぐり回されることでイクという。
女と息子が、女をレイプしたチンピラを捕まえて、
チンピラの性器も切り落とすのですが、そのチンピラもこうしてイキます。
あぁ、ホントに書いているだけで涙目。
切り落とされてわめくチンピラの性器がトラックに轢かれる場面が思い起こされ。(;_;)

父の性器を移植するも、勃たなくて使えない息子。
そんなときにふらりと帰ってくる母。
あろうことか息子の(父のと言うべき?)性器は母だけに反応してしまいます。
息子に体を開こうとする母。

結局、母を撃ったのちに父も頭を撃ち抜いて自殺。
あとに残された息子は自らの性器を撃つ。

最初に母がふらふらと家を出ていったときに、
ショーウィンドーに並ぶ仏像を拝んでいた性別も正体も不明な人物が、
ラストでもう一度出てきます。
顔が映し出されると、それは穏やかな顔をした息子。

もちろん冒頭の人物が息子のわけはありませんから、
これも推測に過ぎないけれど、「そして振り出しに戻る」かと。
物事は輪廻する、業は巡る、そういうことだと、私は解釈しました。

ビックリしたのは、母と女、1人2役だったということ。
メイクの違いで別人に見え、脱ぐシーンのおかげで胸の形を見て(笑)同一人物だとわかりました。
イ・ウヌという女優さんなのだそうで。凄いです。

嗚呼、こうしてまた観てしまうキム・ギドク。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『チェイス!』 | トップ | 『収容所(ラーゲリ)から来た... »

映画(ま行)」カテゴリの最新記事