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『ムーンライト・シャドウ』

2021年09月25日 | 映画(ま行)
『ムーンライト・シャドウ』
監督:エドモンド・ヨウ
出演:小松菜奈,宮沢氷魚,佐藤緋美,中原ナナ,吉倉あおい,中野誠也,臼田あさ美他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
平日の終業後に伊丹まで行くのすら遠く感じる今日この頃ですが、がんばって行ってみた。
最近頭の中で高田みづえの曲“パープル・シャドウ”がよく流れるのはなんでかと考えたら、
本作を観ようとしていたせいですね(笑)。
 
原作は吉本ばななの連作短編集『キッチン』の中の1編。
吉本ばななが大学の卒業制作の作品として発表したものなのだそうです。
監督は原作のファンだというマレーシア出身のエドモンド・ヨウ。
 
さつき(小松菜奈)が落とした鈴を拾った等(宮沢氷魚)。
それが縁でつきあいはじめるふたり。
 
等の弟・柊(佐藤緋美)は、初対面の人を自分の料理でもてなすのが流儀。
食べるところを一目見れば、その人のことがほぼわかるのだと言う。
等と柊が暮らす家を訪れたさつきは、柊の恋人・ゆみこ(中原ナナ)とも意気投合。
いついつまでも4人で楽しい時を過ごせると思っていた。
それなのに、ある日突然、等とゆみこが事故に遭って亡くなってしまう。
 
哀しみに暮れるふたりは、やがて不思議な女性・麗(臼田あさ美)と出会う。
ゆみこがよく話していた「月影現象」について、
麗なら知っているのではないかと、ふたりは考えるのだが……。
 
大切な人を喪ったふたりが、それぞれのやり方で気持ちの整理をつけようとします。
柊はゆみこのセーラー服を着続ける。
さつきは走って走って、息の仕方を思い出そうとする。
どちらも人の心配なんてできそうにもない状態なのに、
柊はさつきが何も食べていないことが気がかり。
ちっとも空腹を感じずにいたさつきが、心の裡を言葉にしてみたとき、
「お腹が空いた」といきなり言うシーンが好きでした。
状況はまるで違いますが、『浜の朝日の嘘つきどもと』の茉莉子先生の最後の言葉、
「やっときゃよかった」を聞いたときと同じ気持ち。
 
月影現象とは、満月の夜の終わりに、死者にもう一度会えるという現象。
麗がその案内人のようだけど、この世の人ではない雰囲気も漂っていて、
いでたちと言い、表情と言い、こんなに不気味な臼田あさ美は見たことがない(笑)。
発熱で苦しむさつきの部屋の隅にぬぼっと麗が現れたときは、
これはオカルト映画かいなと思ったほどです。マジで怖かった。
 
そんなふうにオカルトちっくなファンタジーの場面があり、
会話にも哲学的なところが多分にあるため、ちょっと乗りにくい。
人の死と向き合うのが大切だということはじんわり感じられます。
 
ところで、柊役の佐藤緋美って、浅野忠信とCHARAの息子なんですね。
今後どんな作品を選ぶのか、興味が湧いています。
食事するところを見ればその人となりがわかるというわりには、
彼のお箸の持ち方は握り箸でひどい。これも演技なのかしらん。

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