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『聖なる証』

2022年12月10日 | 映画(さ行)
『聖なる証』(原題:The Wonder)
監督:セバスティアン・レリオ
出演:フローレンス・ピュー,トム・バーク,カイラ・ロード・キャシディ,ニアフ・アルガー,
   キアラン・ハインズ,トビー・ジョーンズ,エレイン・キャシディ,ダーモット・クロウリー他
 
先月半ばに配信開始となったNetflixオリジナルのイギリス作品です。
 
映画の撮影スタジオのシーンから始まり、語り手(のちにニアフ・アルガーであると判明)の
「俳優たちは真摯に演じているからどうかこの物語を信じてほしい」みたいなナレーションが。
“ドグマ95”のような何か実験的な作品なのかしらと思いましたが、そうではなく。
場面が切り替わって普通にスタート。
 
1862年。クリミア戦争に従軍した英国人看護師のエリザベスは、アイルランドの田舎の村へ。
4カ月間断食をしているという少女アナを監視する任務を果たすためだ。
 
エリザベスが診たところ、アナは健康そのもの。
親は、アナが自ら食べたいと言うまでは何も与えないことに決めたという。
何も食べずに生きていられるわけがない。
ほぼ見世物のようになっているアナがペテンを働いていないか調べるため、
エリザベスと修道女のシスター・マイケルが昼夜交代で監視に当たるのだが……。
 
以下、ネタバレ全開です。
 
四六時中一緒にいても、アナは何か食べているようには見えません。
しかしエリザベスが「本当に何も食べていないのか」と尋ねると、
アナは“天のマナ”のみ与えられていると答えます。
母親が朝晩の挨拶のキスをするときに口移しで食べ物を与えていることに気づくエリザベス。
 
母親にも誰かを騙すつもりはなくて、
こうすることで亡くなった長男=アナの兄が天に召されると信じている。
そうしないと地獄に墜ちるようなことを長男はしていたらしい。
この辺りははっきり描写されるわけではないけれど、察すれば驚愕。
 
つまり長男はアナに性的虐待をしていて、その後、病死してしまった。
長男が病死したのはアナのせいだと母親は言い、アナもそうだと思い込まされて、
償いのために「口に入れるのは天のマナのみ」という状況を受け入れているのです。
 
何にも悪くないのに、不幸が訪れたのは自分のせいだと言われ、洗脳される。
どこぞの宗教かと思われるような話で恐ろしい。
そして嘘だとわかっていながらその家族の呪われた気持ちを解くことなく、
神の御心だとして崇めるように行動する地元の名士たち。最悪。
 
フローレンス・ピュー演じるエリザベスの選択は如何に。
相変わらず面白い女優です。
 
それにしても最初と最後のスタジオを見せるシーン、要りますかね。
あんなシーンを入れる意味が私にはわからない。

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