夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』

2015年07月13日 | 映画(あ行)
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(原題:Locke)
監督:スティーヴン・ナイト
出演:トム・ハーディ
声の出演:オリヴィア・コールマン,ルース・ウィルソン,アンドリュー・スコット,
     ベン・ダニエルズ,トム・ホランド,ビル・ミルナー他

先週の日曜日、テアトル梅田で2本ハシゴしようと思ったら、
1本目に狙っていた『きみはいい子』が2日前の時点ですでに満席。
呉美保監督の舞台挨拶がある回だったらしく、残念無念。
それで仕方なくというわけではないけれど、
シネ・リーブル梅田とテアトル梅田のハシゴに変更。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ですっかり売れっ子になったトム・ハーディ。
これはその流れに便乗して公開が決まったのか、2013年の作品。
『マッドマックス』とか『ダークナイト ライジング』(2012)とか『欲望のバージニア』(2012)とか、
マッチョなイメージを私は持っていましたが、
これは下唇の分厚さがなければ同一人物だと思えないほどなんだか華奢に見えるし、
喋り方も『イタリアは呼んでいる』でネタにされたようなボソボソ声ではなく。

スクリーンに映る登場人物は、全編を通してトムだけ。
しかもずっと車を運転しています。
優れた脚本家スティーヴン・ナイトが本作でももちろん脚本を書き、メガホンも。
監督作としては『ハミングバード』(2012)に続いて2作目です。

ご覧になる予定の方はお読みにならないでください。
何も知らずに観るほうがおもしろいです。

夜の町を1台のBMWが走り出す。
運転している男はアイヴァン・ロック(=原題)。
ハイウェイに乗り、彼が向かう先は1時間半ほどかかるロンドン。

彼はぬかりのない仕事で定評のある、建設現場の責任者。
明朝はヨーロッパ最大規模のコンクリート打設工事がおこなわれる。
この一大プロジェクトを控え、今日は仕事場からまっすぐ帰り、
愛する妻や息子たちと自宅で楽しくサッカーのTV観戦をするはずだった。
ところが一本の電話が彼の運命を一変させる。

ロンドンに向かうのは、彼の浮気相手が今夜出産するから。
出張先で知り合った40過ぎの独身女性ベッサンとたった一度寝ただけなのに。
出産が怖くて仕方ないベッサンを電話で落ち着かせつつ、
自宅に電話して妻カトリーナに事情を打ち明ける。

上司のガレスと部下のドナルには明朝の現場に立ち合えなくなったことを連絡。
ガレスは怒りまくり、ドナルは不安を隠せない。
最終確認事項を追っていくと、不備がいろいろと発覚し……。

86分の上映中、ただひたすら車を走らせて電話するだけ。
登場人物ひとりだけとかいうシチュエーションスリラーが大好きですが、
これは拉致監禁などのスリラー的な要素はないのに、ほどよい緊迫感。

上司からは早々とクビを宣告されたけど、
責任感の強い主人公は仕事を放棄することができません。
不備が判明してから、警察や役所の担当者に連絡を取り、
酒をあおっていた部下をなだめて現場に走らせます。
浮気相手に「愛している」とは口が裂けても言わず、それでも落ち着かせ、
ショックで自宅のトイレにこもりっきりの妻からはやがて離婚を告げられる。
心配した息子たちが努めて明るい話をしようとして、忍び泣く主人公。
後部座席には憎んでいた亡父の幻影(ホラーじゃないから映りません)が見え、
それに対して悪態をつきます。

2時間前は仕事も家庭もすべてがあり、順風満帆だった人生。
なのに今は何もかもなくした主人公。
最後に赤ん坊の元気な泣き声が聞こえても、なんだか虚しい。

とてもおもしろい試みだとは思いますが、
あくまで「ほどよい」緊迫感のため、1時間半を長く感じます。
車に座ったままのトムよりも、暴れ回る彼のほうがやっぱり○。

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