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『ローマ法王の休日』

2012年07月27日 | 映画(ら行)
『ローマ法王の休日』(原題:Habemus Papam)
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ミシェル・ピッコリ,イエルジー・スチュエル,レナート・スカルパ,
   ナンニ・モレッティ,マルゲリータ・ブイ,フランコ・グラツィオージ他

前述の『おおかみこどもの雨と雪』を観ることをまず決めて、
同劇場でハシゴするものを悩んでなんとなく本作に。

『息子の部屋』(2001)のナンニ・モレッティ監督の作品。
監督・脚本・製作・主演すべて自分でしちゃう人ですが、
本作では主演はほかの人に譲り、ご自分は精神科医役で登場。
なかなか男前のオッサンでありながらワラかしてくれるんですけれど、
ワラかしてくれると言えば、本作の設定自体、禁断のジョーク。

ある日、ローマ法王が逝去。
次期法王を決定する選挙“コンクラーヴェ”がおこなわれることになり、
各国の枢機卿はバチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂へと集結する。

“コンクラーヴェ”は、全枢機卿による匿名投票で進められるが、
誰か一人が規定の投票数を獲得するまで、何度でも投票がくり返される。
そして、投票が続くかぎり、枢機卿たちは礼拝堂から出ることは許されない。
携帯電話も取り上げられて、外界と連絡を取ることは一切禁止。
国民もマスコミも、“コンクラーヴェ”の結果が発表されるのをひたすら待っている。

長らくの時間を経て、ようやく新法王に選出されたのはメルヴィル。
しかし、下馬評には名前すら挙がっていなかったものだから、心の準備が追いつかない。
新法王のスピーチを待つ大群衆を前にして、メルヴィルはすっかり怖じ気づく。

困り果てた報道官たちは、こっそりメルヴィルを外へと連れ出し、
彼が新法王であることを知る由もない精神科医の診療を受けさせるが、
ちょっと目を離したすきに、メルヴィルがどこかへ逃げてしまい……。

下馬評に名前が挙がっていた枢機卿らの顔は新聞などにも出ていますが、
穴馬でもなかったメルヴィルのことは誰も知りません。
町行く人にとってみれば、ちょっと変わっちゃいるけれど普通のじいさん。
特別視されない町を密やかに楽しむメルヴィルと、
その彼が行方不明になったことであたふたする礼拝堂内が可笑しい。

監督本人が演じるのは、最初に礼拝堂に呼ばれる精神科医。
法王には尋ねてはいけないとされる御法度事項があまりに多く、
「こんなのムリだ。法王の素性を知らない医者に診せるべき」と助言します。
で、監督演じる精神科医はお役御免かと思いきや、
その後も枢機卿たちと同じく、礼拝堂から出してもらえません。

神に仕える身である枢機卿たちは、どこか浮き世離れしていますが、
いろいろと心労が大きくて、睡眠薬や精神安定剤を常用。
服用している薬を並べてみれば、その併用はアカンと監督演じる医者から駄目出し。
聖書のことを「どこを読んでも立派な鬱病の症状」と言い放つシーンなど、
不謹慎ながら、ホンマかいなと笑ってしまいました。

誰もが法王になりたいのだと思っていたら、そんなことは無し。
自分には決まりませんようにと願っているくせに、
下馬評は気になって、新聞のオッズは何倍だったのかを精神科医に尋ねたりして、
なんだか可愛らしくもあります。

最初は若干眠気に襲われたものの、後半はクスクス笑えるシーンの連続。
「ムリなもんはムリなのよ」と言わんばかりのオチにも苦笑い。

優勝決定までリーグ戦を開催していたら、
もしかしたら新法王は十分な休みが取れたのかしらん。

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