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『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

2016年12月08日 | 映画(ま行)
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(原題:Florence Foster Jenkins)
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:メリル・ストリープ,ヒュー・グラント,サイモン・ヘルバーグ,
   レベッカ・ファーガソン,ニナ・アリアンダ他

前述の『シークレット・オブ・モンスター』を観たあと、
TOHOシネマズ梅田別館アネックスへ移動。

実在の“音痴の歌姫”フローレンス・フォスター・ジェンキンスの物語としては、
『偉大なるマルグリット』(2015)が今年公開されたばかり。
どちらがより事実に即しているのか知りませんが、
痛々しさの点では『偉大なるマルグリット』のほうが勝っていました。
まぁしかし、自分が音痴だと気づかないどころか上手いと信じきっている歌手は、
程度の差こそあれ痛々しいにはちがいありません。
ときに腹立たしさすら感じてしまいそうですが、そこまでは行かず、
ギリギリに留めているのはメリル・ストリープカトリーヌ・フロも同じ。

1944年のニューヨーク。
社交界の大物フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、音楽をこよなく愛し、
父親から受け継いだ莫大な財産を音楽家たちのために惜しみなく使ってきた。
そんな彼女に寄り添う夫シンクレアは、かつては役者を目指した身。
いつの日かその夢をあきらめ、持病に苦しむフローレンスの世話に心血を注いでいる。

ある日、フローレンスが歌のレッスンを受けたいと言い出す。
彼女は音痴なのだが、その事実に彼女自身は気づいていない。
妻を傷つけたくない一心で、シンクレアはそれを本人に告げずにいる。
彼女の思うようにレッスンを受けさせたいと、声楽の教師を買収。
しかし伴奏者として雇われたゴメスは、フローレンスが音痴だと聞かされていなかったものだから、
彼女の歌を聴いてびっくり仰天。
誰も指摘しない状況に唖然とするが、空気を読んで黙って伴奏を続ける。

シンクレアの奔走の甲斐あって、フローレンスは上機嫌で歌う。
褒められることしかないから、ますます自信を深めるばかり。
自分の歌声を録音したレコードを友人知人に贈ろうとするばかりか、
しまいにはカーネギーホールでコンサートを開くと言い出して……。

スティーヴン・フリアーズ、かなり好きな監督です。
メリル・ストリープとヒュー・グラントの初共演というだけで観る価値あり。

フローレンスの歌を聴かされるのは、彼女の支援を受けている人が大半。
金を出してもらえなくなると困るから、誰も音痴だなんて指摘しません。
中には耐えきれずに笑い出す人もいるけれど、そんなときでもシンクレアがフォロー。
おかげでフローレンスは自分が笑われていることに気づかない。

音痴の歌を聴いて元気になれるものでもなく、物珍しさで一度聴きたいだけ。
金持ちの自己満足につきあわされているだけなのに、
演じる役者が偉大だと、どう転んでも良い話になるもので。

トム・クルーズの54歳もあり得んと思いますが、
ヒュー・グラントの56歳もなかなかあり得ん。
妻側の事情だとはいえ、妻の金で別宅を構えて若い美女と暮らすシンクレア。
ヒュー・グラントがその役を演じると、責める気なんてこれっぽっちも起きない、
ものすごくいい男になるのでした。

期待していたほどではなかったというのが正直なところだけど、
こんな夫婦の形があってもいいかなと思います。

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