夜な夜なシネマ

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『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

2013年06月19日 | 映画(は行)
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(原題:Bill Cunningham, New York)
監督:リチャード・プレス
出演:ビル・カニンガム,アナ・ウィンター,トム・ウルフ他

前述の『くちづけ』を観終わってから、梅田ブルク7で思わず「ビール」。
だって、法要時の会食では誰も飲まなかったんだもん。
酒豪の印象があった伯母は「もう全然飲まへんねん」。
イケメンのお寺さんは車で来られていたのでノンアルコールビールを。
私もノンアルコールビールをいただきましたが、
映画の待ち時間にどうしてもアルコールを補給したくなり。(^^;

オシャレにはとんと疎い私ですが、ファッションのドキュメンタリーは大好きです。
『ファッションが教えてくれること』(2009)や『ヴィダル・サスーン』(2010)など、
いくつになろうとセンスを磨きつづける人たちの話は嬉しくなります。

本作は、84歳の写真家ビル・カニンガムを捉えたドキュメンタリー。
米ニューヨーク・タイムズ紙の人気ファッションコラムを担当し、
50年以上もの間、ニューヨークの町をチャリで疾走、
街ゆく人びとのファッションを撮りつづけています。

ファッション以外にはまったく興味なし。
ヴィダル・サスーンのような洒落たおじいさんを想像していたら、
愛用している服はポケットが多くて機能的だという理由で清掃作業従事者のジャンパー。
雨が降ればほとんどビニール袋のようなチープな黒合羽を。
どうせまた破れるからと、空いた穴はビニールテープで補修します。

食べるものにも無頓着。
もっぱらサンドイッチで済ませ、安ければ安いほどいいと笑います。
撮影当時はカーネギーホールの階上の住人で、
狭い部屋にはキッチンなし、ベッドのほかには写真関係のもののみ。
無駄なものにはお金は使わないし、無駄にお金をもらうことも良しとしません。
お金を受け取れば自由がなくなる、自由ほど素敵なものはないと言うのです。

街角で彼に黙殺されるのはオシャレを自負する人にとっては屈辱的なこと。
けれどもビル自身には黙殺しているなんて意識はありません。
自腹を切って自分だけの着こなしをする人を追っているだけのこと。

彼についてコメントを求められた著名人の話も楽しい。
彼に写真を撮られたからこそ著名になった人もそこにはいます。
ファッションに対するまなざしにはいつも愛情が込められ、
悪意を持った写真など一枚も存在しないと。
ときには彼の写真が明らかにした事実により、騒ぎになってしまうこともあるのだそう。
けれども、それは彼の写真のせいではなく、他者が彼の写真に付けた見出しによって、
悪意を持った写真となってしまうのですね。

センスは誰でも持っている。ただ、多くの人にはそれを使う勇気がないだけ。
そう言われても、いや、その格好はできんやろ!と思うファッションも多数。
でも、人種にも職種にもまったく偏見を持たず、
ひたすらファッションだけを追うビルの目にニッコリさせられることしきり。

好きなことだけをするために、ほかのものはあきらめてきたこともわかります。
だけど、多くのものを手に入れるよりもファッション一筋のビル、実にいい顔をしています。

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