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『この世界の片隅に』

2016年11月20日 | 映画(か行)
『この世界の片隅に』
監督:片渕須直
声の出演:のん,細谷佳正,稲葉菜月,尾身美詞,小野大輔,潘めぐみ,
     岩井七世,牛山茂,新谷真弓,小山剛志,津田真澄,澁谷天外他

ダンナが飲み会で若干遅くなる日、仕事帰りに1本だけ。
ちょうど14日だったので、安いTOHOシネマズデーへ行こうと思ったけれど、
伊丹で17:40上映開始の『ミュージアム』を狙うのはちと無謀。
終業後に無理なく観られるのは、伊丹ならば17:45、西宮ならば18:10ですね。
いずれも本編には間に合うだろうという前提ですが。

広島出身のこうの史代による同名漫画が原作。
当初、2000万円の目標にクラウドファンディングによる資金調達を開始。
最終的には目標の倍に届こうかという4000万円近くが集まり、
クラウドファンディングの支援人数・金額ともに国内最高を記録したそうです。
おかげで制作が正式に決定、ミニシアターほかシネコンでも上映される運びに。

109シネマズ大阪エキスポシティにて、ポイントを使って鑑賞しました。
2011年に北川景子主演でTVドラマ化されているのですね。知らなんだ。
こちらは130分超のアニメですが、長さを感じさせません。
事務所のトラブルで大変らしい能年玲奈改め“のん”の声も本作にぴったりです。

昭和一桁代から第二次世界大戦が終わる年まで。
広島県広島市に生まれ育ち、呉市に嫁いだ少女の物語。

絵を描くことが大好きな浦野すず。妹のすみと仲良く育つ。
兄の要一は“鬼いちゃん”と呼びたくなるぐらい怖いが、
明るい両親と草津に住む優しい祖母に囲まれ、穏やかに暮らしている。

まもなく19歳になろうかという1944(昭和19)年、
海軍で働く北條周作との縁談話が持ち上がる。
周作はいったいどこですずを見初めたのか、
どうしてもすずを嫁にほしくて探し回ったのだという。
いい人かどうかわからん。けれどわるい人にも見えん。
断る理由を見つけられず、周作がいる呉へと嫁ぐすず。

見知らぬ土地にたったひとりでやってきたすずだったが、
北條家に温かく迎えられ、嫁として奮闘する。
戦況が悪化して配給物資がみるみる減っていくのだが……。

森永のキャラメルやチョコレートがハイカラを象徴するとともに、
人々の憧れであり夢であった時代。

冒頭に流れるのはザ・フォーク・クルセダーズの名曲“悲しくてやりきれない”。
サトウハチロー作詞、加藤和彦作曲のこの曲が私は大好きです。
『シコふんじゃった。』(1991)で聴いたおおたか静流バージョンが本当に良かった。
本作のコトリンゴバージョンもなかなか良く、雰囲気に合っています。

すずはおっとりした天然娘。そこが短所だけど長所にもなる。
配給物資がいくら減ろうとも、あるものでとことん工夫します。
また、彼女と暮らす夫の家族たちもとてもとても温かい。
誰しもが笑顔で暮らすことさえできたらと願っています。

なかなか子どもに恵まれないすずを責めるシーンも台詞もなし。
嫁いびりのひとつでもありそうな展開なのに、そんなことにはなりません。
夫の姉も性格は多少きつくとも、優しい心の持ち主。
ぶっきらぼうな言い様で優しくされると、感激せずにはいられません。

この時代に生きた世代の大人たち、この時代を知らない子どもたち、
みんなに観てもらえたら。
「珠玉の」という言葉がふさわしい作品です。
戦争は、絶対にしちゃいけない。

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