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『人魚の眠る家』

2018年11月23日 | 映画(な行)
『人魚の眠る家』
監督:堤幸彦
出演:篠原涼子,西島秀俊,坂口健太郎,川栄李奈,山口紗弥加,
   田中哲司,稲垣来泉,斎藤汰鷹,荒川梨杏,田中泯,松坂慶子他

TOHOシネマズ伊丹にて。

原作を読んだときのレビューはこちら
非常に難しい問題で、470ページ近くあるのに、さくさく読ませるのはさすが東野圭吾
「ただ、一気に読んで感動がないと虚しさも倍増」という、私の友人の評にものすごく同意します。

大きな邸に暮らす播磨薫子(篠原涼子)。
IT機器メーカー社長の夫・和昌(西島秀俊)とは別居中で、まもなく離婚する予定。
すぐに離婚しないのは、長女・瑞穂(稲垣来泉)の小学校受験があるから。

模擬面接の最中に和昌の携帯が鳴り、目くじらを立てる薫子。
ところがそれは信じられない知らせだった。
模擬面接中の瑞穂と長男・生人(斎藤汰鷹)の世話を頼んだ薫子の母親(松坂慶子)が
プールでちょっと目を離した隙に、瑞穂が溺れたというのだ。

病院に駆けつけ、担当医師・進藤(田中哲司)の言葉に愕然。
瑞穂の心臓はまだ動いているが、おそらく脳死状態で回復する見込みはないと。
日本の法律では、臓器提供の意思があるならば脳死判定をおこない、
意思がなければ脳死判定はおこなわず、心肺停止を待つとのこと。
本人の意思は確認できないから、親が判断するしかない。

優しい子だから、きっと自分の臓器を提供したいと言っただろう。
そう考えた薫子と和昌は臓器提供すると決める。
しかし脳死判定の段になり、握っていた瑞穂の手がわずかに動く。
この子はまだ死んでいない、そう感じた薫子は翻意する。

意識不明のまま、状態の安定した瑞穂を家に連れ帰る。
ちょうど身体に障害を持つ人のためのロボットを開発中だった和昌の会社には、
患者にロボットを使わせるのではなく、
患者本人の体を動かすことを研究している星野(坂口健太郎)がいた。
和昌は瑞穂の体を動かせないだろうかと星野に相談。
以降、星野は連日播磨家を訪れて、研究を進める。

眠ったままの瑞穂が、星野のおかげで手足を動かせるようになり、薫子は大喜び。
その行動が和昌の父親(田中泯)には常軌を逸していると感じられる。
なんとか話を合わせる薫子の妹・美晴(山口紗弥加)やその娘・若葉(荒川梨杏)だったが……。

堤幸彦監督なので、音楽も含めていろいろな点でわかりやすい。
ここは泣くところですよとわざわざ教えてくれている感じ。
ただ、私にはそういうシーンの大人たちの演技が大げさに思えて、
泣くどころか冷めてしまいました。
篠原涼子の演技が熱量を帯びれば帯びるほど、こちらは冷める。

大人たちと書きましたが、田中泯と松坂慶子はさすが。重みがある。
そして子どもたちの演技にはしっかり泣かされます。
眠ったまま、まつげ一本動かさない瑞穂役の稲垣来泉ちゃん。
その弟の微妙な気持ちを体現する斎藤汰鷹くん。
目の前でいとこが溺れてしまった若葉役の荒川梨杏ちゃん。
大人が泣き叫ぶのを見ても泣けなかったけれど、
子どもたちが心を痛め、懸命に話すシーンはそりゃもう涙。

ここからはネタバレを含む。

原作で存在感のあった教師が映画には出てきません。
募金活動に関わるのも、原作では薫子でしたが、映画では和昌。
星野にしばしばデートをドタキャンされるようになった恋人・真緒(川栄李奈)が
わざわざ和昌に会いに行くシーンも確か映画オリジナル。
「その先には何があるんですか」という真緒の言葉が心に残っています。

「死んでいる」子どもにかまいすぎて、「生きている」子どもたちの気持ちが放っておかれていると思う反面、
脳は死んでも心臓は動いているわが子を本当に死んでいるとあきらめられるかどうかはわからない。

目を閉じたままの娘を散歩に連れ出す薫子の行動はほとんどホラーですが、
その行動の意図が最後にわかるのも映画オリジナル。
狂った母親のように見えて、実は考えたうえでの行動だったんだなぁ。

原作を読まずに観に行った人の中には、奇跡が起きると信じていた方も多かったかも。
奇跡は起きずとも万人受けしそうですが、大げさな演技が私はちょっと。
子どものために狂うことができるのは母親だけ、きっとその言葉どおりだと思うから、
実際にこういう立場になった母親は、こうして大げさと感じる以上になるのかもしれません。

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