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『セールスマン』

2017年07月16日 | 映画(さ行)
『セールスマン』(原題:Forushande)
監督:アスガー・ファルハディ
出演:シャハブ・ホセイニ,タラネ・アリドゥスティ,ババク・カリミ,ミナ・サダティ他

ダンナの国内出張中2日目にシネ・リーブル梅田でハシゴの2本目。

アスガー・ファルハディ監督は、撮った映画はまださして多くないのに、
そのたいていが世界的な映画賞を受賞しているという、イランの名匠。
本作も第89回アカデミー賞外国語映画賞をみごと受賞しています。
しかし悲しいかな、シネコンでは客が入りそうにもない作品。
確かわが家の近所のシネコンでも上映していたはずなのに、
気づいたときには上映終了していました。たぶん1週間で打ち切り!?

テヘランに暮らす国語教師のエマッドとその妻ラナ。
夫婦で地元の小さな劇団に所属している。
アーサー・ミラー原作“セールスマンの死”の舞台を控え、
稽古で忙しいさなか、自宅アパートが倒壊の危機に見舞われる。
近隣でおこなわれている強引な建設工事のせいだ。

アパートから避難するが、転居先がすぐに見つかるはずもない。
劇場で寝泊まりするしかないかもと話していると、
劇団仲間のババクがお手頃な物件があるという。

ババクに連れられてその物件を見に行ってみると、当面住むにはじゅうぶん。
気がかりなのは、前の住人の荷物が一部残されていること。
エマッドとラナの引っ越しに合わせて荷物を取りに来ると言っていたのに、来ない。

業を煮やしたババクは、前の住人の荷物を外に放り出す。
約束を破ったのはあちらのほう。何も問題はないはずだった。

ところが舞台の初日前夜、稽古を終えたラナが先に帰り、悲劇が起こる。
数時間後にインターホンが鳴り、てっきりエマッドが帰ってきたと思ったラナ。
名前も確認せずに開錠したため、入ってきた何者かに襲われる。

頭部に傷を負わされたラナは、精神的に不安定に。
やがて、隣人から前の住人について知らされる。
前の住人は女性で、いかがわしい商売をしていた。
複数の男性が部屋に出入りしており、そのうちの誰かが犯人なのではないかと。
エマッドは犯人とおぼしき人物の車を特定する。

せっかく手がかりが見つかったのに、ラナは警察に行くことを拒否。
ひとりになることを恐れ、昼間はエマッドにそばにいてほしがるが、
夜はエマッドを近づけようとしない。
仕事を休んでそばにいるように強いるラナに、
次第にエマッドは「どうしろというのか」と腹を立てるのだが……。

イランというお国柄、ラナが襲われるシーンは一切描写されません。
ちらり映る浴室や血の跡、表情や台詞から想像するだけ。凄い。

20年前に織田裕二常盤貴子主演の『真昼の月』というTVドラマがありました。
交際を始めてまもなく、常盤貴子演じる女性がひとりで歩いているときに
停車していた車に引きずり込まれて強姦されるという、
トレンディードラマ枠の中にあってはかなりヘヴィーな作品でした。
それを思い出します。

ネタバレです。

男性と被害者女性との心情を比べることはできませんが、
やはりここにもお国柄があるのかどうか、女性は卑劣な犯人を赦そうとします。
女性であれば女性のほうの気持ちがわかるとなりそうなところ、
日本人ならおそらく女性でも男性のほうに肩入れしてしまいそう。

それでもラスト、ふたりがまだ同じ劇団にいるのを見て、
あぁ、別れなかったんだとホッとしたりもして微妙。

シネコンでしか映画を観ない人だと退屈かもしれないけれど、
たまにはこんなのもどうですか。

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