夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ポテチ』

2012年05月19日 | 映画(は行)
『ポテチ』
監督:中村義洋
出演:濱田岳,木村文乃,大森南朋,石田えり,桜金造他

上映時間68分のため、もともと1,300円という料金設定。
月曜日がレディースデーのワーナーマイカルで鑑賞したので1,000円也。
前述の『幸せの教室』はタダでもどうやねんと思いましたが、
本作ならば、私的にはたとえ1,800円でも喜んで払います。

空き巣を生業とする今村忠司と、その恋人である大西若葉は、
プロ野球選手の尾崎が暮らすマンションの一室へ忍び込む。
この日は試合があり、最近出番のない尾崎もベンチには入っているため、
とうぶんは帰宅しないはず。

なぜだか忠司は尾崎にえらくご執心の様子。
尾崎の留守宅に上がり込むと、尾崎のことを若葉に熱く語って聞かせる。
そんなとき、いきなり電話が鳴り、忠司と若葉はドキッ。

ふたりが息を潜めるなか、留守電に吹き込まれたメッセージは、
かよわく若い女性の声で尾崎に助けを求めるものだった。
尾崎の代わりにこの女性を救うのだと、
忠司と若葉は女性の指定する喫茶店へと向かうのだが……。

原作は伊坂幸太郎の『フィッシュストーリー』に収められている同名短編。
伊坂作品は登場人物があちこちでリンクしているので、
原作を読んでいる人のほうが楽しめる作品ではあります。

たとえば、空き巣に独特の美学を持つ男、黒澤。
忠司がことあるごとに助言を求めるのがこの男です。
今回は大森南朋が黒澤を演じていますが、
黒澤は『ラッシュライフ』の登場人物でもあり、映画版では黒澤役に堺雅人。
そのため、麿赤兒にやたら似てきた大森南朋演じる黒澤に
少し違和感をおぼえたものの、いろんな見た目の黒澤もいいかなと。

また、逆に忠司とその親分も『ラッシュライフ』に登場し、
黒澤に郵便局強盗を持ちかけています。
忠司が「引力の法則」に気づくくだりも『ラッシュライフ』での話。
その黒澤がDNA鑑定を依頼するのは『重力ピエロ』の泉水。
そして『重力ピエロ』では、泉水が黒澤に仕事を依頼します。

若葉は伊坂のデビュー作『オーデュボンの祈り』に登場。
まだ10歳ぐらいの、地べたに寝転がって心臓の音を聴く少女。

塩味のポテチとコンソメ味のポテチを取り違えた忠司が、
若葉から「塩味も美味しいかも」と言われていきなり泣き出すシーンは、
原作も然り、映画版でもあとからその理由がわかったときにジンワリ。

中村義洋監督も空き巣の親分役で出演。
そのぎこちない台詞回しにクスッと笑ってしまいました。
エンドロールではオイシイとこ取り。(^o^)
公開直後に明らかにされた竹内結子のすっぴんエキストラ出演もしっかりチェックしました。

伊坂幸太郎ファンと中村義洋監督ファンにはもちろんのこと、
そして野球ファンの人にお薦めしたい作品です。

そうそう、「夜のバットを振り回しちゃったのよね~」という若葉の真顔の冗談に、
ひと昔前のオヤジの下ネタだと苦笑いして心の中で突っ込んでいたら、
忠司の間合い絶妙な同じツッコミがすかさずなされてサイコーでした。

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