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『重力ピエロ』

2009年11月02日 | 映画(さ行)
『重力ピエロ』
監督:森淳一
出演:加瀬亮,岡田将生,小日向文世,吉高由里子,渡部篤郎,鈴木京香他

言うまでもなく、原作は伊坂幸太郎の同名小説です。
ここ数年、重松清と伊坂幸太郎は映画化されることが多く、
でも、なんとなく重松清のほうに惹かれるなぁと思っていたら、
なるほど、伊坂幸太郎より重松清のほうが私の年齢に近い。
だけど、この映画版は好きだなぁと思ったら、これまた納得。
私と前後2歳以内の監督の作品にはハマること多し。

大学院で遺伝子の研究をする泉水と、
街なかの落書きを消す仕事をしている春は、仲良し兄弟。
モデルだった美しい母を事故で亡くし、
今は郊外の一軒家でひとり暮らしの父のもとを
兄弟でしばしば訪ねては、一緒に楽しく食卓を囲む。

兄弟が暮らす仙台市内では、最近、連続放火事件が起きている。
あるとき、春は、放火現場の近くに必ず落書きがあることに気づく。
落書きは落書きでも「芸術的な落書き」のグラフィティアート。
放火とその落書きに繋がりを感じた春は、泉水に相談。
放火犯を捕まえようと、張り込みを開始するのだが……。

かなりヘヴィー。見た目が全然似ていないこの兄弟。
弟は、兄がまだ乳母車に乗っていた頃、
母親が強姦魔に犯されてできた子だという設定。
のちに犯人は逮捕されますが、事件は近所に知れ渡ります。
母親から妊娠を告げられた父親は、産んで育てることを決意。
以来、この家族はずっと、「最強の家族」です。

心ない中傷によって母親は追い込まれ、
春は学校でレイプ犯の子だといじめられる。
でも、家族の固い絆がそれをはねのける。
父親の小日向文世、母親の鈴木京香、兄の加瀬亮、弟の岡田将生と、
キャストがみんな、静かで強烈な個性を放ちながら、
素晴らしい演技で魅せてくれます。

殺人者の血は遺伝するのか、それとも、育った環境が人を作るのか。
ミステリーの要素は薄く、犯人探しのハラハラ感はありませんが、
春はいったいどちらに向かっているのか、そこにハラハラ。

こんな言い方は語弊がありますが、
殺人シーンで胸を打たれたのは、
『シン・レッド・ライン』(1998)と本作だけかも。

気休めが、ときには人を救うこともある。
本当に大事なことは、陽気に伝えるべきだ。
神様に尋ねたら、「自分で考えろ」と言われた。
そんないくつかの台詞が心から離れません。

怖いことなんて何もないという父親の、
唯一怖かったという想い出話が素敵です。

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