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『ワース 命の値段』

2023年03月07日 | 映画(わ行)
『ワース 命の値段』(原題:Worth)
監督:サラ・コランジェロ
出演:マイケル・キートン,スタンリー・トゥッチ,エイミー・ライアン,テイト・ドノヴァン,
   シュノリ・ラマナタン,ローラ・ベナンティ,タリア・バルサム,マーク・マロン他
 
109シネマズ箕面にて、公開初日にレイトショーに行きました。
 
9.11アメリカ同時多発テロ事件で被害に遭った約7,000人に対して補償金を公平に分配するため、
犠牲者それぞれの命に値段を付けるという難題に挑んだ弁護士の実話に基づく。
 
同時多発テロが発生して間もないとき、弁護士のケン・ファインバーグのもとへ政府から依頼が入る。
政府は訴訟を回避するために補償基金を設立しようとしているのだが、
遺族が政府の提示する補償金をすんなり受け入れるとは思えない。
補償金を受け入れることを拒否して集団訴訟を起こしたりしないように、
犠牲者の遺族たちに補償金の申請を促すのがケンの役目。
 
ケンは犠牲者たちそれぞれの収入を基にした計算式を打ち出し、補償金の額について説明するが、
その算定方法に納得できない遺族たちの猛反発を食らう。
7,000人全員の申請を取り付けるのは無理だろうが、8割には到達させたい。
弁護士事務所の部下たちが遺族らと面談し、なんとか納得してもらおうとするのだが……。
 
犠牲者たちは年齢も違えば、事件に遭った状況も異なります。
ワールドトレードセンターに勤務していた人、消防士として現場に向かい、死んでしまった人。
個々なにもかも違うのに、収入のみで補償金を決めると言われてもそりゃ納得できない。
 
当初、ケン自身は面談しない。部下にまかせっきり。
遺族の話に耳を傾ける部下たちは、どうしても事務的には考えられなくなります。
たとえば、ゲイのカップルのうちひとりが命を落とし、彼が最期に電話をかけたのはパートナーだった。
しかしゲイを憎みすらしている被害者の両親は、それを認めようとしません。
自分の息子はストレートで、パートナーは金の亡者だ、補償金を受け取るのは私たち親だと言って譲らない。
録音された最期の電話を聴けば、誰だってパートナーの権利を認めるべきだと思うのに。
 
良き夫であり良きパパだと思われていた男性には隠し子がいたことがわかります。
隠し子の家庭にも補償金を受け取る権利があるわけで、
だけどそれをどのように妻に伝えるかがまた悩ましいところ。
 
私の大好きなハゲ俳優、スタンリー・トゥッチがここでも素晴らしい役者ぶり。
この事件で妻を亡くした身でありながら、最初の説明会でケンの話を怒号で遮る遺族らを一喝。
いま責めるべきはこの弁護士ではないから話を聴こうと。
だけど説明会後には「基金には全然納得していないから今からあなたを叩きますよ」とケンに言う。
 
ある程度事務的でなければこの問題は片付けられない。
けど、遺族の話に耳も傾けずにいては駄目。
それを気づかせてくれるのがトゥッチ演じるチャールズであり、部下たちでした。
 
集団訴訟を起こさせて儲けようという金持ちもいたりして、愕然とします。
何が正解かなんてわかることではないですけどね。こういう話がありましたということで。

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