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『エゴイスト』

2023年02月27日 | 映画(あ行)
『エゴイスト』
監督:松永大司
出演:鈴木亮平,宮沢氷魚,中村優子,和田庵,ドリアン・ロロブリジーダ,柄本明,阿川佐和子他
 
TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『#マンホール』の次に。
 
原作はエッセイスト・高山真の自伝的小説。
すでにお亡くなりになっている方だとは知らなんだ。1970年生まれなのに。若いやんか。
2018年に肝臓がんの手術を受けられたそうですが、2020年にお亡くなりに。
まだまだ死ぬような歳じゃないのにがんで亡くなった人の話を聞くとどうもとかぶります。
本作の原作を含めて高山さんの著作は未読なので、ぜひぜひ読みたいです。
 
松永大司監督は、もともとは俳優。
矢口史靖監督の『ウォーターボーイズ』(2001)や橋口亮輔監督の『ハッシュ!』(2001)などにも出演歴あり。
現代美術作家のピュ〜ぴるに8年間にわたって取材したという『ピュ〜ぴる』(2010)とか観てみたいです。
 
さて、本作について。
 
斉藤浩輔(鈴木亮平)は少年時代から「オカマ」といじめられた過去を持つ。
生まれ育った田舎町から東京へと出て、今はゲイであることも隠さずに、
ファッション雑誌の編集者として自由気ままなひとり暮らし。
 
あるときパーソナルトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)と巡り逢う。
あまりに美形の龍太に思わず「すごいイケメン」と声に出して言う浩輔。
龍太のほうも浩輔に惹かれた様子で、すぐに恋仲になる。
 
訳あって高校を中退した龍太は、学歴もなければ手に職もなく、
女手ひとつで育ててくれた母親・妙子(阿川佐和子)を養うため、昼に夜にと仕事をしていた。
少しでも彼の力になりたいと考えた浩輔は……。
 
原作者がモデルとおぼしき浩輔役の鈴木亮平の演技が素晴らしい。
この人、決して美形とはいえないじゃないですか。
だけど身のこなしだったり指先の動きだったりが本当に美しい。
洒落た服が彼の鎧となり、身を守るのに役立ったという台詞に、
 
浩輔と龍太の表情を見ていると、恋に男も女もないと思わされます。
出会った瞬間からキラキラしていて、あんたらいったいいくつやねん、
十代でもあるまいしと笑ってしまうぐらい。
 
浩輔が心を許しているゲイ仲間たちとのやりとりも面白い。
同性同士は結婚できないからと、記入した婚姻届を飾っているという友人の話など、
今まさに世の中の話題となっていることだからタイムリー。
3人でケーキを食べるシーンも可笑しかったなぁ。
 
ただやっぱり、稼ぎの少ない龍太に「お母さんへのお土産」と言ってあれこれ渡したり、
生活費10万円を毎月渡したりするところなど、エゴに思えてなりません。
誰のためか。相手のためなのか。それとも自分のためなのか。
自己満足であったとしても、それで相手が助かるならそうしたほうがいいのか。
 
龍太亡き後も生活費を差し出そうとする浩輔。
こちらとしては母親に断ってほしかったから、「結局受け取るんかい!」とも思いました。
しかしそれも、受け取れば生活が楽になることは事実だし、
施しは受けないとか言っていられないのかなぁと思ったりも。
 
いろいろ釈然としない思いがあって、登場人物のことを全面的に好きかと言われると違う。
でも自分にもエゴイストな部分はあると思うから。どうすべきかわかりません。

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