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『ノア 約束の舟』

2014年06月22日 | 映画(な行)
『ノア 約束の舟』(原題:Noah)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ラッセル・クロウ,ジェニファー・コネリー,レイ・ウィンストン,エマ・ワトソン,
   アンソニー・ホプキンス,ローガン・ラーマン,ダグラス・ブース他

前述の『私の男』とハシゴ、劇場を移動してTOHOシネマズ梅田にて。

ダーレン・アロノフスキー監督といえば、確かシネ・ヌーヴォで観た『π』(1997)の思い出が強烈。
なんて変な監督なんだと思い、パンフレットも購入。
次作の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)を観てやっぱり変な人だと思い、
『レスラー』(2008)や『ブラック・スワン』(2010)を観て、
どんどんメジャーになっていくけれど、はたして一般受けするのかと訝っていました。
大々的な宣伝が打たれた本作、どないでしょ。

最初の人間、アダムとイヴ。
禁断の実を食べた彼らがエデンの園を追われた後、ふたりの間にカインとアベルが生まれる。
カインはアベルを殺し、人類最初の殺人の加害者と被害者になる。
そのカインの子孫トバルカインに父親レメクを殺されたノア。
ノアは生き延びて妻ナーマと、セム、ハム、ヤペテという3人の息子に恵まれる。

ある夜、恐ろしい夢を見たノア。
それは、堕落した人類を一掃するために、大洪水が起きるというもの。
これを神の啓示だと悟ったノアは、箱舟の建設を決意する。

建設地へ向かう途中、蛮族に襲われて負傷した少女イラを助け、彼女を養子に。
堕天使たちに行方を妨害されるが、堕天使のうちのひとり、シェムハザが手を貸してくれる。
ほかの堕天使たちからシェムハザが裏切り者呼ばわりされかけたとき、
神がノアに味方しているとしか思えない出来事が起こり、堕天使たちもノアに協力することに。

それから幾年月を経て、箱舟の建設は進む。
舟の完成が近づくにつれ、どこからともなく集まってくる、つがいの生き物たち。
ところが、大洪水の噂を聞いたトバルカインが、舟を奪うべく群衆を引き連れて現れ……。

以下、ネタバレです。
一般受けするかと思われたのは気のせい、やはり一筋縄では行きません。

アダムとイヴ、カインとアベル、堕天使たち。
複数回にわたって挟み込まれるこの話によって、
天地創造や創世記のことがなんとなくわかります。
しかしその後の解釈がさすがアロノフスキー監督。

ノアは人類を守るために箱舟を建設したわけではなく、
人類を一掃したいという神の意志を守るために箱舟を建設しました。

果たして神の意志がそのとおりだったのかどうか。
創世記では、ノアは神から直接声を聞いて箱舟の建設を始めますが、
本作では直接の声ではなく、夢を見たとしたことで、嗚呼、ノアの勘違い。

ノアの「勘違い」によれば、自分たちが人類の生き残りになるが、
自分たちとていずれ果てなければならない運命。
ノアとナーマを長男が、長男を次男が、次男を三男が看取る。
イラは蛮族から受けた傷ゆえに子どもは産めない。
子孫は残さないから、ひとり残った三男が死ねば人類は終わると。

ところがイラが予想外の妊娠。
人類を一掃するには、生まれてくるイラの子どもを殺さねばなりません。

神の意志を守るのか、家族を守るのか。
結局子どもを殺せなかったノアが、最後はぐでんぐでんに酔っぱらい。
ここも、創世記の葡萄畑をつくる男と同じにして異なる解釈。
選ばれし者でありながら神の意志に背いてしまったと苦悶し、
息子たちの前で醜態をさらすシーンが痛々しいです。

バッタバッタと人を殺すノアはかなり嫌な奴だし、
俺には相手になるオンナがいないと焦る次男もちょいキショい。
トバルカインの言うことがいちばんもっともらしくも聞こえ、
消化するにはなかなかむずかしい作品なのでした。

スケールの大きい作品を撮ってもすごい監督だということはわかりましたが、
なんだかんだで私、この監督の小品のほうが好きかも。

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